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四十四話 魔女の好奇心

今野「時間が無いので前あとがきは無しで!」

『・・・・・・やべえな』


 この巨大で凶悪な氷の亀を見た俺の第一感想がこれだ。完全に終わっている。

 いや、この表現はあながち間違っている訳では無い。だってどう見てもやばいし。

 そこで、男が言っていたことを思い出す。


『もしも五大凶王が寝返ったら?』


 その答えが見つかった。

 すなわちーー終焉だ。

 一体だけでも絶望だと言うのに、なんだこれは。生物が太刀打ちできるようなものではない。


「・・・・・・想像以上だよ」


 それは、そうこぼす隣の幹部も同様なようだ。

 さあ、一度頭を冷やそう。こいつは五大凶王が一人アイス。《零雪原》を統べるもの。

 そして、今はーー


『面白いことを聞いたのじゃ』


 敵かも味方かも判明できない、最も恐ろしい存在。

 そんなアイスが口を開く。


『未来から来た者達の話によれば・・・・・・五大凶王はみな、顔も知らぬような輩に洗脳されるようじゃな』


 そう語るアイスはどこか嬉しそうだ。

 いや、それも当然なのかもしれない。五大凶王は、凶悪さ故に生物が近寄ろうとしない。

 永遠と続く“退屈”。そこに現れた“刺激”。

 それを逃す手はないと、楽しんでいるのだ。


『ケルベロスよ。そこの黒い毛玉よ』


 いや毛玉じゃねえよ。とか言いたかったが、話が進まなそうなのでやめておいた。


『なんだ』

『その危機を救うには、貴様の力が必要ならしいのぅ』


 確かに、そんなことをダイアたちから聞いた覚えがある。方法は全く知らないが。


『余に働いた無礼を許そう。だが、その代わりーー』


 五大凶王の『その代わり』は、何かとても不吉なものを感じさせるのは俺だけだろうか?

 だが、その予感は当たる。


『余にその犯人を殺させよ』


 洗脳という、自分を侮辱するような輩に向けての単純な怒り。


『ああ。心強いよ』


 俺はただそう答えるしかなかった。

 そこで一度降りてくる沈黙。

 ・・・・・・なんだか、一方的に強者感出されるのも癪だな。

 何を間違ったのか、俺の頭の中にそんな思考が現れる。だから、言ってやった。


『アイス』

『なんじゃ?』

『お前の舌打ち、聞こえてたぞ?』

『知っとるに決まっておるだろう』


 くっ。やはりわかってやっていたのか・・・・・・。


『・・・・・・聞こえとったのか・・・・・・』

『ん?』

『いいや、なんでも』


 何か重要なことを聴き逃したような気がする。が、まあ逆鱗に触れふのもあれだから聞くのはやめておこう。


『じゃあ、余は帰るぞ』

「あー! ちょっと待った!」


 そう叫ぶのは俺の隣のボクっ娘魔女。

 一体何をするつもりなんだ・・・・・・。と、そう思ってパリスを見ると。


 ーー手の中にあの人化の薬が。


「これを食べてみてよ!」


 パリス。俺は五大凶王を前に好奇心を優先できるお前を尊敬するぞ。

 と、アイスの本体からふよふよとクリスタルが飛んできた。


『・・・・・・なんじゃ? これは』

「いいから! ちょっと飲んでみて」


 そう若干無理矢理気味に渡すパリス。そのクリスタルが、薬を持って主の元へ帰っていく。


『飲めばいいのじゃな?』

「うん!」


 ごくり。と大きく動く亀の喉仏。それと同時にーー


 アイスの、亀の姿が消えた。


「成功?!」


 アイスは少し遠目のところにいたため、視認はできない。

 ということをわかっていてか、パリスがどこから取り出したのか箒を握る。


「先行くよ!」


 これまでに見たことのないような笑顔で飛んでいくパリス。

 そして、取り残される唖然とした俺とシクル。


「・・・・・・す、すごい方だな」

『俺も思った』


 お前に恐怖心はないのか・・・・・・。

 とりあえず、俺はシクルを背に乗せて走り出した。


 結局、情報交換と言えるほどの情報交換はできなかったな。まあ、いいとしよう。

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