四十一話 未来から来たものたち
アイーダ「今日はあたしよ。・・・・・・ていうか、いつの間にか急展開じゃない! あたしの出番はいつかしら・・・・・・。あ、本編もよかったら見ていきなさいよね」
「誰だ」
「誰だと思う?」
俺の問いに、どこか面白そうに答える男。だが、問題は男の方ではない。
「・・・・・・お前、シクルではないな?」
「ようやく気づいたか」
シクルの姿を真似た何かがうっすらと口元に笑みを浮かべる。
こいつらが一体何なのか、俺には検討がつかない。だが、わかることがある。
「戦う気がないなら、冷やかすのはやめたらどうだ?」
そう、こいつらに敵意がまったくないことだ。
正面から見合っているというのに、感じるのは・・・・・・敵意ではない、不思議な暖かい感覚。
それが何なのかもまた検討がつかなかった。
「流石だ。そこまでわかっているとはな。じゃあ、少し話しやすくしよう。ダイア」
「はい」
ダイアが凍った地面に手を触れる。すると、そこから魔力が広がっていき・・・・・・。
「なっ・・・・・・」
冷たい寒色だった世界が、一転して暖かい野原へと姿を変える。驚いて来た道を振り返ると、洞窟の中はまだ岩肌であった。
「さあ、これで少しは暖かくなったか」
そういえば、確かに気温も上がっている。
そこまで感じて、ようやく俺はシクルの姿の何かーー偽シクルと呼ぼうかーーの力に驚く。
「・・・・・・能力のことには触れない。話とはなんだ?」
「賢いじゃないか。流石だ。じゃあ話を始めよう」
どっかりと男が地面に座り込む。それを真似て、俺も腰を落ち着かせようと座る。
「お前は、この魔界の異変に気づいているか?」
唐突な質問。そしてその内容に、俺は首を傾げる。
「いいや、気づいてもいないし、その異変が何かもわからない」
「当たり前ね。気づいてる者なんているはずがないわ。・・・・・・ただ一人を覗いて」
魔界の異変? ただ一人気づいてる者?
俺の疑問は尽きない。だが、それを問う前にまた話が進んでしまう。
「率直に言おう」
そして、その次の言葉に俺は目を丸くする。
「俺たちは百年後の未来から来た」
・・・・・・こいつらは何を言っている?
驚愕とともに芽を出したこの疑問は、だがさらに次の言葉が疑問をかき消す。
「魔界はあと三年で混沌へと形を変える。そして、その後に人間の手によって滅ぼされる」
俺は耳を疑った。
魔界があと三年で終わる? ここまでたどり着いたことのないような人間どもに滅ぼされる?
「馬鹿馬鹿しい。冷やかしならば帰ろう」
「冷やかしだと思うか?」
踵を返して帰ろうとした俺を、冷ややかな声音が逃げ道を塞ぐ。
いや、そもそも偽シクル改めダイアが道を塞いでいたが。
俺は男に向き直って叫ぶ。
「そんなわけがあるか!」
一瞬で張り詰める空気。張り詰めすぎた空気の中を俺の怒号が伝う。
「そんな唐突に世界が終わるだと? 信じられるか! ・・・・・・第一、魔界の異変ならば魔王が。それを止められなくても凶王がいるだろう」
だから、そんなことはありえないのだ。
魔界の中ならば魔王がその力を持って抑えてくれる。外からの敵ならば凶王が立ち入るのを拒む。
完璧ではないか。これのどこに魔界が滅ぶ隙がある?
「その凶王が寝返ったらどうなる?」
俺はその時言葉を失った。
凶王が寝返る?
「・・・・・・そんな事態がありえるのか?」
「あったから俺たちはやって来た」
なるほど、確かにそれは信憑性もあって、目を背けることはできない話だ。
きっと、魔王は五体の凶王を相手にすることは不可能だろう。今は昔よりも衰えてしまったと嘆いていたこともあった。
「信じよう。お前達のことを」
「信じると知っているから来たんだ」
一度区切られる会話。
それを逃す手はないと俺は話を切り出す。
「いくつか聞いてもいいか?」
「ああ、構わない」
「異変とはなんだ?」
その問いに、男は丁寧に説明を述べてくれる。
「異変とは、凶王に関することだ。凶王が寝返るーーいや、洗脳され、異常現象が起こるようになっていく今後のことを異変と名付けている」
洗脳・・・・・・そして異常現象。確かにそれは異変と言える。
「それが起こるとどうなる?」
「五つの領土。《零雪原》《無の砂漠》《永炎》《大森林》《絶死海》が乱れる」
「随分と大雑把な言い方だな」
「仕方がないだろ。こうとしか言えない」
しかし、乱れる、か。想像もつかないが、五大凶王が暴れるということは被害は甚大なものになるだろう。
それは、止めるしかない。
「それともう一つ。これを救えるのはーーケルベロス。お前だけだ」
・・・・・・俺だけ?
「いや、というか、なぜ俺の名を」
「さあ、今日はここまでにしておこうか」
俺の言葉を遮って男が立ち上がり、ダイアの元に向かう。
「待て! まだ話が」
「あともう一つ」
もう一つ、もう一つとこいつは一体なんなんーー
「シクルが《アイス》と出会うぞ」
それだけ言って、彼らは行ってしまった。
・・・・・・最初から最後まで、疑問しか残さないやつらだった。
だが、わかることが一つ。
「行くしかねえか・・・・・・!」
俺は人化を解いて、犬の姿で全力で洞窟を駆け抜けた。
サンドのときのような胸騒ぎがしたのだ。
アイーダ「最後まで読んでくれてありがと。どうだったかしら? あたしだけおいてけぼり感あるわね・・・・・・。シリアスなんて珍しいわ。じゃ、よかったら評価とかもよろしくね」




