三十八話 番犬。致命的なミスをする
ケルベロス「やあ、四ヶ月ぶりだな。作者がどうも続きを書いてくれなくて、キャラクターの俺達も大変だぜ・・・・・・。おっと、めたいな。じゃ、本編だ」
「ふあぁぁ・・・・・・よく寝た」
『ああ。俺もこんなに長く布団にされるとは思ってなかった』
「へっ?!」
シクルが焦って俺の上から体を起こす。冷たい冷気も無くなって、俺はようやく楽になった。
まあ、別に嫌だったわけではない。だって、自分から乗せてやったし。
「け、ケルベロス殿、申し訳ない!」
『いや、まあ別にいいんだけどな』
本当の熟睡だったから、もう深夜なんだよな。俺も眠りそうになったよ・・・・・・。
それに、外気がテントの中に入ってきてめちゃ寒いんだよ。
『つーか、俺はなんでここに来たんだっけか・・・・・・』
「そ、そう言えば任務で来たんだったな。・・・・・・も、もう迷惑かけないようにしないと・・・・・・」
『そんな気を張らなくていいんだがな・・・・・・』
という俺のフォローも、何かぶつぶつと言っているシクルには聞こえていないようだ。どれだけネガティブなんだこいつ。
『ま、今日は遅いしな。とっかで寝ようじゃないか』
「そ、そうでだな! じゃあ、ペンも連れて行く・・・・・・。あれ? ペン?」
『あのスキンヘッドなら、お前を起こすと悪いからってそそくさと夜の見回りに行ってたぞ』
「・・・・・・わ、私は隊長でいいのか・・・・・・?」
すまんなシクル。その質問に俺は答えることができない。だって、お前一人で報告もできないし・・・・・・。
『ま、細かいことは考えずに行こうぜ』
「こ、細か、細かい・・・・・・?」
『おら、乗れ』
「はい!」
乗れと言ったらなぜそんな反応が早いしいいのか。ま、細かいことは気にしない。
とりあえずシクルを背中に乗せて、俺たちはテントを出た。
『で? 俺の寝床はどこだ?』
「ええとですね・・・・・・あ、あっちだ!」
そうして、シクルに案内されながら月光に照らされた青い雪の上を行く。
すると、一際大きな木造の家が見えてきた。いや、家と言うよりは・・・・・・。
『・・・・・・旅館みたいだな』
「一応集合就寝施設っていう、なんか固い名前の建物なんだがな」
『ほう。で、俺はここに寝ると』
そう言うと、シクルが俺の耳元でこう言った。
「よければ、私と一緒に寝ても・・・・・・」
『お前が俺をもふりたいだけだろ。断る』
あと、シクルは寝ると冷気の調節ができくなって、もふられなから寝られる身としてはこの上なく辛い。シクルには悪いがな。
『というか、お前はどうせ個室だろ?』
「な、なぜ分かるのですか?!」
『そりゃ、お前は魔王軍の幹部だしなあ。これで部下と一緒に寝てるとか言ったらびっくりする』
というか、部下と一緒に寝ると部下が寒いぐらいだろう。こいつから漏れる冷気は本当に半端じゃないからな。
「そ、それが、私も本当は部下達と寝たいのだが、物凄い勢いで個室を進められるので・・・・・・」
・・・・・・なんと不憫なことか。ちょっと悲しくなってしまうじゃないか。
『・・・・・・心を強くもてよ』
「へ? なんだ? 何か言ったか?」
『いや、なんでもない』
シクルへの哀れみを隠して、俺はその木造の旅館の付近で足を止めた。
『なあ、男子部屋・・・・・・いや、誰も使っていない部屋はあるか?』
「誰も使っていない部屋・・・・・・?」
さあ、俺が眠る上で最も重要なのはここである。
恐らく、というか普通は就寝場所は別れるものだ。だから、男子部屋はむさくるしいし男三昧とか無理だから嫌だし、女子部屋は別にもふられるのはいいが、作風とか、俺的には気まずい。
と、いうわけで誰もいない部屋がいいのだが・・・・・・。
「ああ、確かあったはずだ」
『なら、そこに案内してくれ』
「わかった。・・・・・・というか、入れるか? 移動も不便そうだが・・・・・・」
『それなら問題ない』
俺は、ちょっと前まで忘れていた“あれ”を取り出す。
緑色の禍々しいあめ玉状の薬。
そう、人化の薬だ。
じゃあ、早速のんで・・・・・・。
『あ』
飲んだ後で気づく。
・・・・・・副作用を中和する薬を持ってくんの忘れた。
それを理解した瞬間に、とてつもない目眩が俺を襲う。
「ケルベロス殿!」
俺としたことが、とんでもない凡ミスをしちまったよ・・・・・・。
俺の意識は真っ暗な夜の闇に吸い込まれていった。
ケルベロス「最後まで読んでくれてありがとうよ。よければ評価とかも頼むな」




