三十七話 番犬。極寒の地へと下り立つ。
ペン「ん? あ、はじめましてだな。新キャラだよ! ・・・・・・まあ、本編見ていってくれな!」
さて、半ば無理矢理送り出された俺である。あの後、魔法陣に乗り込み・・・・・・。
同日。
『さっっっっっむい!』
番犬は、初の任務地。《零雪原》へと下り立った。辺りを見渡せば吹雪。下を見れば雪。上を見上げれば真っ白い雲。
白、白、白。いかにもマトイが好きそうである。
いやぁ〜。来ちゃったよ。来たくなかったのに。つーか、この毛並みがあっても超寒いんだけども。最南端の暖かい方でこれとか、最奥地どうなってんだ。生物はたどり着けないだろ。
「え、えっと・・・・・・。よ、ようこそ! し、シクル隊の拠点・・・・・・へ・・・・・・」
最後の方はモジモジして、あまり聞き取れなかったが、シクルなりの歓迎なのだろう。
『おう。よろし・・・・・・。はっくしょん!』
「うええ?! け、ケルベロス様?! ・・・・・・さ、寒いのですか?」
『逆にお前は寒くないのか?』
「み、皆さん口々にそう言いますが、全然全く寒くないのです・・・・・・」
まじかよ。氷結の二つ名そのまんまかよ。すげえな。俺でもこれは無理だわ。・・・・・・そうだ。
一ついいことを思いついたので、試すことにした。
手順は簡単。全ての毛に魔力を送って・・・・・・。
『ふんっ!』
毛、一本一本を巨大化させるだけ。
『よし。寒くない』
が、視界と、口の中に毛が入り込む。これは中々重大な欠点が・・・・・・。
「うわあ?! け、ケルベロス様・・・・・・。な、なんか、すごいことに・・・・・・」
視界の端で、シクルがなんかちょびっと引いてるのが見える。
『すごいこと? なんかあるか?』
「いや、その・・・・・・。た、例えるなら、も、モップ・・・・・・みたいな・・・・・・」
・・・・・・結構ハッキリ聞こえたが、まじか、ケルベロスモップバージョンかよ。形態が増えたな。
まあ、ここではこの姿でやっていくことになるだろうな。寒いし。
『俺はここではモップバージョンだ。気にしないでくれ。別にもふってもいいから』
「そ、そうか・・・・・・。ふ、不思議な見た目だな」
そんな不思議な見た目してるかね。そんなまじまじと見るぐらいの見た目してるのか。そうか・・・・・・。
『まあいい。案内よろしく』
「い、いいのだな。じゃあ、軽く案内するぞ」
そうして、俺たちはそのシクル隊の拠点を巡る。
まずは装備屋。中に入ると、ストーブのおかげでなかなかに温かい。
「やあ、ペン。修復は終わったか?」
「ん? おう。隊長と・・・・・・。えっと・・・・・・モップ?」
『ケルベロスだ』
「おう、まじか! 癒しのケルベロス様かい! どーも。仮で装備屋やってまーす。ペンでーす。よろしく!」
サラッと流したが、普通にモップ扱いされたな。それにしても、中々人の良さそうなやつである。なかなか男前な顔立ちをしているスキンヘッドだ。ペン・・・・・・か・・・・・・。
『というか、何気に癒しのケルベロスと呼ばれるのは久しぶりだな』
「ん? そうなのか? いや、俺の同期に魔王城で隊長やってるやつがいてな。そいつから話を聞くんだよ」
ほー。魔王城の隊長。癒しのケルベロス・・・・・・。ああ、あいつか。日課みたいになってたやつだな。最近はやらせられてないが。
『そいつのことなら知ってるぞ。あの熱心な隊長さんだな。いつももふらせてやってたんだ』
「まじかよ! たまにとか言ってたのに・・・・・・」
『日課レベルだったからな』
「な、なんだと・・・・・・?! ・・・・・・今度じっくりと話を聞かないとな・・・・・・」
おっと、これは嫉妬の目をしてるな。まあ、男同士の嫉妬には興味ないし、そもそもの中心が俺だし。無視・・・・・・というか、話だけ聞くかな。
『まあいい。なんだ、ペン。俺の毛並みに興味があるか・・・・・・?』
「あったり前だ! ・・・・・・それに、その状態になったときの毛は触らせてないんだろ?」
『まあな。あっちじゃ暑苦しいし・・・・・・』
「よしっ! あいつと一個張り合える!」
小さくガッツポーズをするペン。仲いいんだなぁ。と、思ってしまう。
「な、なんだか楽しそうだな・・・・・・」
「なんですか? 隊長も混ざりたいんですか?」
「え? いや! 別に・・・・・・」
「固いなぁ。別に気楽に話せばいいのに。な、ケルベロス様」
『俺に振るか・・・・・・』
何気ないシクルの呟きに反応するペン。しかも、俺に振ってくるか。そういうのは隊中で・・・・・・。
『ま、そうだな。ペンの言う通りだ。・・・・・・混ざれ混ざれ。これ、上司命令』
「え? ケルベロス様、隊長の上司なんですか?」
『そうだ』
「け、ケルベロス様・・・・・・。それは絡みにくいやつだ・・・・・・」
おっと、チョイスミスをしたか。シクルを困らせてしまった。
『じゃあ、なんだ・・・・・・。俺の体。もふるか?』
「「もふらせてください」」
ここだけは満場一致なのな。すごい。
『そうか・・・・・・。二人とも来やがれ!』
「「やったー!」」
と、二人が俺の毛並みにダイブしてくる。
「ふふふ・・・・・・。久々のもふもふ・・・・・・」
「隊長前もしてたんですか?」
「この前報告に行ったときにな・・・・・・」
「まじか・・・・・・。俺が代わりに行けばよかった・・・・・・」
怪しげに笑うシクルと論点ずれまくりのペン。いや、平和かよ。俺一人でこの世界治められるんじゃね?
「それにしても、いつにもまして・・・・・・。気持ちいい・・・・・・」
『ん? そうかそうか。ならよかった』
「この場所ならではの得だな・・・・・・」
最近は誰かにもふらせることも無かったからな・・・・・・。もふらせてやっている俺も気分が良い。いや、ちょっとおかしいけども。
それにしても、だんだんとこいつらの体から力が抜けてくのがわかるな。そんなに気持ちいいか・・・・・・。自分で自分をもふってみたいな。
それに、シクルに限っては気持ちよさのあまりか、自分の冷気がダダ漏れに・・・・・・。
『・・・・・・おい。シクル。お前冷気が漏れてきてんぞ』
そう言うが、シクルからの返事がない。・・・・・・まさか、寝てるわけじゃないだろうな。
『おい。しく・・・・・・』
そう言って体を動かした瞬間。二人の体がどさりと地面に落ちた。
・・・・・・おいおい。
『俺の体には睡眠効果なんてねえぞ・・・・・・』
ペン「最後まで読んでくれてありがとう! どうだったかい? はあ、隊長もなかなかに良い位置にいるなぁ。ケルベロスもふり放題じゃねえか! うらやましい・・・・・・。今度は俺が報告に行こうかな。じゃ! 次回もよろしく!」




