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三十三話 番犬は人になるのにはまる。

シクル「あの、えっと・・・・・・。ひ、久しぶり・・・・・・だ。お、覚えているか? お、覚えてない? み、見返してくれ・・・・・・。本編だ」

 パリスに薬を貰ってから一週間。


「マトイ。今日こそ布団の製造工程を見せてもらおうか」

「まてケルベロス。まだだ。まだだからもう来ないでくれ」


 俺はあの薬を使って、毎日マトイの家を訪ねていた。


「おい。もうそう言って一週間だぞ? そろそろ見せてくれたって・・・・・・」

「いやいやいや、いーや! 無理だから! 極秘だから! お願いだから帰って!」

「断る」

「り、リンー! へ、変な人がいるー!」

「ご主人様。お言葉ですが、私がご主人様に味方する理由がありませんので」

「う、嘘だろー!?」


 相変わらず辛辣な言葉に、マトイがうろたえる。

 リンの態度も変わってないなぁ。まあ、その方が助かるけど。


「なあ、リン」

「ケルベロス様。どうかなさいましたか?」

「こいつって、いつも布団作ってる?」

「それはご主人様本人からお聞きください。私が言うことではありません」


 くっ。やはりそこは教えてくれないか。というか、さっきから静かにこっち見てるけど、楽しんでるわけじゃ・・・・・・。ないよな?


「わ、わかった! ケルベロス! 毛!」

「俺は毛じゃねえぞ」

「違うっ! そ、そうじゃなくて・・・・・・」


 ・・・・・・?


「・・・・・・頭大丈夫か?」

「大丈夫だよ! ・・・・・・ふぅ。深呼吸深呼吸・・・・・・」


 そう自分に言い聞かせ、大きく息を吸うマトイ。

 あ、面白かったのに。もうちょっとからかえばよかったかな。


「よし。落ち着いた。ケルベロス。毛をくれ」

「断る」

「なんで!?」


 いやぁ。なんかなぁ・・・・・・。


「ほら、俺今人の状態だからさ。俺の毛って・・・・・・。な?」

「いや、な? じゃないんだけど? とりあえず。毛が必要だからよ。明日貰いに行くな」


 明日。ねぇ・・・・・・。


「・・・・・・毛をそのまま売って残ってないとかないよな?」

「ないから! そ、そんな怪しむなよ!」


 うーん。なんか怪しいよなぁ・・・・・・。まあいいか。


「じゃ、俺は帰るぞ。じゃあな。マトイ。リン」

「はぁ・・・・・・。おう。じゃあな」

「さようなら」


 そして、俺は自分の小屋に向かって歩き出す。

 うーん・・・・・・。やっぱり、あいつをからかうのは面白いな。それと、この薬はやっぱり便利である。

 そうして、俺は小屋の前に着く。が。


「・・・・・・変な気配がする」


 そう、小屋の中から妙な気配がするのだ。それも、禍々しい、まるて魔王のような・・・・・・。


「まあいいか」


 アイーダの実験でも見に行くかな。人の姿で小屋に戻っても暇だし。じゃあ、城に・・・・・・。


「ちょっと待てえええぇぇぇい!」


 と、渾身の叫びが街に響く。無論。俺のではない。


「おい! 息子よ! そ、それはないんじゃないかな?」


 それは、ポケットに右手を突っ込んだ魔王こと我が親父の姿。


「いや、おかしいと感じたら避けるのが犬の本能だからな」

「聞いたことないが・・・・・・。なあ、それでも気づいてただろ?」

「・・・・・・さあ?」


 気づいてない気づいてない。そんな禍々しい気配なんて感じてないから。


「それにしても、親父も暇人だな」

「おいおい。自分の親をニート扱いするんじゃない。これでも忙しいんだぞ?」

「忙しかったら息子にちょっかいかけに来ないだろうが」


 正直。こいつが魔王をしているところを見たことがない。多分。


「はぁ・・・・・・。親父悲しい」

「悲しめ」

「辛いなぁ。デレでもいいんだぞ?」

「・・・・・・デレポイントなんてないだろ」

「なっ・・・・・・。・・・・・・はぁ」


 おっと、言いすぎたかな。まあ・・・・・・。そんなダメージ受けてなさそうだしいいか。


「じゃあな。俺はアイーダの研究を見学してくるから」

「おう。そうか・・・・・・。ってちょっと待て。お前、まさか俺がなんでここに来たのかを聞かないわけじゃないだろうな」

「聞かなくていいと思うな」


 そうして、スタスタと橋を・・・・・・。


「待って! 親父の扱い酷くない?! 話ぐらいはさぁ! ねえ?」


 だが、そこは腐っても魔王。一瞬で俺の前に立ちふさがる。・・・・・・面倒くさい。


「はぁ。じゃあ聞いてやるよ。なんだ? 話ってのは」

「よくぞ聞いてくれたな! それが・・・・・・」


 と、そこで間を余分に開ける。いや、本当になんの話だよ。パパっと終わらせてくれよ。

 そう思っていると、魔王が一瞬表情を変える。


「お前に、任務だ」


 そう告げた。

 ・・・・・・に、任務?


「どういうことだ?」

「そうだな・・・・・・。どこから話そうか。まず、本題から行くとだな・・・・・・」


 そして、魔王が耳に口を近づけ・・・・・・。


「ふぅ〜」

「のぁっ?! てめぇこんのクソ親父ぃ!」


 幼稚な嫌がらせをしてきたので強化してぶっ飛ばした。



「うぅ・・・・・・。ひどい」

「酷くない。いいか、俺が嫌なことは、理不尽と幼稚な嫌がらせだ。・・・・・・覚えとけよ」


 ・・・・・・ったく。今のでどれほどストレスがたまったことか。・・・・・・本当にこの魔王(親父)は・・・・・・。


「さっさと話を済ませろ。次幼稚なことをしたら、本当に大陸の端まで飛ばすからな。あと痛がるふりをしない」

「ち、ちょっと痛かったんだけどな・・・・・・。まあ、話なんだが、今、シクルが来てるんだ」


 ・・・・・・シクルが?

 あ、忘れている人のために軽く説明を入れようか。あの最初の方に出てきた、氷を操る幹部だ。読み返して来てもいいぞ。


「で、シクルが来たって? この橋は通んなかったが・・・・・・」

「お前がいない時に来たんだろう。お前の姿が無かったっておどおどしてたぞ」


 もしかしたら、マトイのところに行っている時間だったのかもしれない。まあ、知らなかったしなぁ。


「で、それと任務がなにか関係してるのか?」


 俺は魔王にそう尋ねる。


「ああ。関係あるとも」


 そこで、魔王が不敵な笑みを浮かべ・・・・・・。


「シクルと、《零雪原》に突如現れた雪山の調査をしてほしい」

シクル「さ、最後まで読んでくれてありがとう・・・・・・。ど、どうだった? 私の出番はまだか・・・・・・(ホッ)。い、いや、別にほっとしてないぞ?! じゃ、じゃあ、次もよろしく・・・・・・」

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