三十話 ドキドキ。ランチタイム
今野「どうも! 今野です! また僕です! 今回は、番犬祭の報告に来ました! とりあえず、本編をどうぞ!」
やあ、ケルベロスだ。突然だが、今俺は商店街にいる。
「ねえ。あのパン美味しそうじゃない?」
「そうだな。確かに美味しそうだ」
アイーダと二人で。
・・・・・・。
会話が続かない。何気にすごい深刻な問題がここで訪れるとは。とりあえず、何か・・・・・・。
と、一つの店が目に入る。
「アイーダ。お前、飯は食ったのか?」
「ううん。まだよ」
「じゃあさ・・・・・・」
俺は、少し洒落た店を指さして言う。
「昼飯。食わないか?」
「いらっしゃいませ~。お客様はお二人ですね~。空いてるところにどうぞ~」
言い慣れた店員の声を受け、俺たちは窓側の席に向かい合って座る。
店内は、落ち着きのある暗い色の木々で造られていて、非常にいい雰囲気だ。周りを見れば、お洒落な格好の亜人たちが、昼のひとときを過ごしている。
「いいお店ね。こういうのもいいわ」
「そうだな」
まあ、俺は店に入ったことなど《巨人定食屋》しかないが。
と、ウェイトレスがコーヒーを持ってきた。
「・・・・・・それにしても、あんたがケルベロスとはね・・・・・・」
「なんだ、まだ信じられないのか?」
そう言って、コーヒーを口にはこ・・・・・・。
「にがっ」
・・・・・・・・・・・・。
「ケルベロスって、今何歳だっけ?」
「・・・・・・三百とちょっとだ」
「味覚はお子ちゃまなのね」
くっ。悔しいが、反論はできない。
そして、アイーダが優雅にコーヒーを口に・・・・・・。
「・・・・・・案外苦いわね」
「だろ?」
よかった、俺の味覚は多少正常だった。
「じゃ、何か頼もうかしらね。あんたは何にするの?」
「俺か? 俺は実はもう食べてきてんだ・・・・・・」
先ほど、マトイの家で食べた”サシミ”を思い出す。
「何よ、もう食べてきたの? あたしが恥ずかしいからなんか頼みなさい」
「・・・・・・ま、俺もなんか頼むとするか」
確かにそれは俺もなんとなく気まずい。
俺たちは、互いに置いてあるメニュー表を一個ずつ取る。
そして、それを開くと様々な食べ物が目に入る。あまり興味のなかった俺だが、これだけあると悩んでしまう。
「決めた?」
「ああ。大丈夫だ」
店員を呼び、俺はトマトパスタ。アイーダはクリームパスタを頼む。
「あたしたち二人ともパスタじゃない」
「食べれそうなものがそれしかなかったからな」
さすがに肉や魚はきついからな。かといって、サラダじゃあれだし・・・・・・。
「そうだ。あの葉っぱの研究はどうなったんだ?」
俺は、ふと思いだしたあの散歩と言って魔界の端。《大森林》の近くの山まで行って収穫した毒性の落ち葉のこと。
「ああ、あれね。もうちょっと時間がかかりそうだけど、面白い発見ができそうよ。また人間界から機械をもらってこなきゃ」
「ちなみに、どのぐらいかかりそうなんだ?」
「少なく見積もっても、あと一ヶ月はかかるかしらね・・・・・・」
一ヶ月か。ずいぶんと研究熱心なことだ。
「まあ、今はそれ以外にもやることがあるから、なかなか手をつけられないんだけどね」
「そうか。今度見に行ってもいいか?」
「いいわよ。その姿なら」
まあ、さすがに犬の姿ではそこまで入れないだろうからな。・・・・・・今度、パリスに薬をもらわなければならないが・・・・・・。
・・・・・・なんとなく気が重いな。
そんな会話をしていると、ウェイトレスがパスタを二つ持ってきた。
俺たちはそれを食べ始める。
「何気に美味しいわね」
「そうだな」
まあ、俺にとってはすべてが新鮮だし。どっちかっていうとジミーのイカ墨パスタの方が好きだが・・・・・・。
そんなことを考えながら、結局は美味しいので食べ続ける。
「そうだ。お前また人間界に行くのか?」
アイーダが魔王の間に入って来たときのことを思い出し、そう尋ねる。
「え? そうよ。また薬を売りに行かなきゃ」
薬を売りに・・・・・・か。
「人間はどうだ?」
「そうね・・・・・・」
そう言って、遠くを見つめるアイーダ。
「人間ってね。面白いのよ? 前まで魔術とか占いに頼ってたと思ったら、今は科学とか、機械とか、そんな訳のわからないものに変化してたり、あたしたちはずっと変わらないって言うのにね。ま、その魔術が発達していた時代にいつもは行ってるんだけどね」
「時間を設定できるのか?」
「ええ。空間魔法を使える人を呼んで、その人が書いた魔方陣にちょっと変化の魔法を加えるだけよ」
さらっとそう言っているが、どれだけ高度な術なのだろうか・・・・・・。
「そういえば、俺はお前の魔法をほとんど知らないんだが」
「え? そう? 子供の時見せなかったかしら」
子供の時・・・・・・。
「いや。あのときは確か俺お前に魔法を掛けられて、一瞬天に昇りかけたから、トラウマになってお前が使うところを見てなかったな」
「そ、そんなことあったかしら・・・・・・。ご、ごめんね?」
「いや、まあもう昔のことだしな」
ちなみに、天に昇りかけたというのは、首に魔法を掛けられて首がねじれて・・・・・・。誰が見てもトラウマ級の見た目になっていたとか。そして、掛けられた俺も息ができなくて・・・・・・。
「カミラに助けられたんだっけな」
「そうなの?」
「ああ、カミラの能力でなんとか助かったんだよ」
カミラの能力は《強制終了》と言って、エンチャント系や状態変化系を完全に無効かする力だ。アイーダの能力もこれに当てはまるため、なんとか俺は助かったらしい。
「へえ・・・・・・。お母様の能力なんて、全然知らなかったわ」
「あれでも昔は、魔法部隊の隊長をやっていたらしいぞ?」
ちなみに、これは実際に本人が指揮をとっていたことを見たことがあるのだ。
「それは信じられないわね。あのお母様が・・・・・・」
「そこで魔王と出会ったらしいがな」
それはそれは楽しそうに語っていた時のことを思い出す。
・・・・・・懐かしいな。百五十年くらい前か。
「そういえば、あの首飾りはどうしたの?」
首飾り・・・・・・。
「・・・・・・ちょっと待ってくれ」
首飾り。確か、ずっと首に掛けていたはずだ。ちょっと存在を忘れていたのは謝らねばならんが。そして、それは・・・・・・。
「・・・・・・パリスに薬を掛けられて・・・・・・」
「無くしたの?」
「わからん。パリスに聞いてみる」
あの高さだ。もしかしたら、パリスが取り逃しているということも・・・・・・。
これに関しては怒ろう。それに、あのときあいつ”副作用がない”とかいいつつ、普通に俺はぶっ倒れたしな。
アイーダが、残念そうにパスタを口に運ぶ。
・・・・・・こんなこと今は思うべきじゃないかもしれないが、やはりこう見ると可愛いな。
それを意識した途端。急にまた心臓が高鳴る。
それは、リンの時とは違う。不思議な感情。
「・・・・・・どうしたの?」
「・・・・・・いや、なんでもない」
いけないいけない。見とれてしまっていた。意識をしてはいけない。
だが、そう考えるほど気になって仕方が無い。
そんな感情を押し込むように、俺はパスタを頬張った。
「ごちそうさま。美味しかったわね」
「・・・・・・そうだな」
ぼーっとして、反応が遅れる。
「そうだ、お金ある?」
「金か? いや、俺は金は・・・・・・」
と、服のポケットが少し膨れているのに気づく。それを見てみると・・・・・・。
「・・・・・・マトイが入れっぱなしだった金が入ってた」
数枚の紙幣が折りたたんで入っていた。
「折角だし使うか」
「使っていいのかしら?」
「大丈夫だ。あいつ金持ちだし」
そう言って、紙幣を机の上に出す。
「・・・・・・どれが何メリン?」
「えーっと・・・・・・全部で三万四千メリンね」
案外入っていた。こんなにポケットに入れるか? ・・・・・・マトイが意図的に入れたっていうのは・・・・・・。考えすぎか、俺が出かけることもあいつは知らなかっただろうし。
俺たちは、その金で代金を払う。そして、店を出た。
「じゃ、飯を食ったが、どこか行くか?」
「そうね・・・・・・」
アイーダが周りをキョロキョロと見渡す。
「折角だし! もうちょっと見て回りましょ!」
無邪気な笑顔で、そう言ったのだった。
今野「最後までお読みいただきありがとうございます! いかがでしたか? さて、いいところですが、こちらは告知を・・・・・・。四月三十日! 番犬祭を開催します! 本編共々よろしくお願いします! では!」




