二十三話 魔女の屋敷
今野「どうも! またも今野です! さて、なんだか、題名がどこぞのホラーゲームみたいですけども。本編をどうぞ!」
「いやー。まさか、番犬様を誘拐するのがこうも楽になるとはねー」
こいつ堂々と「誘拐」って言いやがった。
俺は今。箒に乗ったパリスとともに空を飛んでいる。真下を見れば、俺でも怖くなるぐらいの勢いで景色が流れていく。
「うちに来るのは何時ぶりかな?」
『・・・・・・思い出したくはないな』
いつ頃かは大体覚えているが・・・・・・おまけでいやな思い出まで思い出しそうだ。
「ま、家変えたから新鮮で面白いと思うよー。楽しんでいってね」
『実験するって堂々と言われてんのにお前の新居なんて楽しめるか』
こうして誘拐されている間でさえ、その言葉が頭をちらつく・・・・・・。
『なあ、記憶を消す薬ならほしいかな』
「現実逃避はだめだよー」
現実逃避したくなるってそんなもん・・・・・・。
そんなことを思っていると、だんだんと一軒の家が見えてくる。
見るからに新築というような、真っ白い壁に、正反対の黒い屋根。それは、山の中に佇む一つの屋敷だった。
「ほら、見えてきたよ」
『・・・・・・相変わらず、とんでもない山奥だな』
「そっちの方が魔草とかが採りやすくて、都合がいいからね」
まあ、確かに・・・・・・。
『おい。今お前”魔草”って言ったか? まさか、それで作った薬じゃ』
「ささ! 入ろうか!」
俺の言葉を遮ってパリスがそそくさと家の中に入っていく。
あいつ・・・・・・絶対に魔草を使う気だな!
魔草とは。
普通の数十倍の魔力を吸収して成長した薬草のことを言う。
もちろん。魔草はとても貴重で、普通の地域ではそもそも生えないのだ。だが、魔草が生える地域が一つだけある。それは・・・・・・。
「いや~。大変だったよ! 《大森林》の中の安全な場所を探すのは!」
そう。五大凶王。《東のリーフ》の領地のみである。《大森林》には、《無の砂漠》とは違い、魔力を生み出す魔物が多く生息しているのが最近わかっている。そのため、大量の魔力が漂い魔草ができるということだ。
「じゃ、早速実験の方だけど・・・・・・」
屋敷の中の一つの小部屋で、パリスが薬の準備を始める。
やだな~・・・・・・。
『おい。パリス』
「ん~? なんだい?」
『それ、死にはしないだろうな』
「・・・・・・・・・・・・うんっ!」
めちゃくちゃ間が空いたんだが。絶対やばいやつじゃないか。
「よしっ! じゃ、まずはこれだね」
パリスが薬を手に取ってこちらを向く。
それは、いかにも禍々しい色をしていた。
まずい。これは死んだ。
『おい。俺はこんなところで死にたくないぞ。だから、その手に持った凶器をしまえ』
「ん~? ダイジョブダイジョブ。シニハシナイトオモウカラ」
そう言って、パリスが狂気的な笑みを浮かべてこっちに来る。
そこは「死なない」って、言い切ってもらわないと困るんだよな。
いや、そんな冷静に考えている場合じゃない。死ぬ。確実に死ぬ。
俺は何かないものかとあたりを見渡す・・・・・・・と、通気口らしきものが目に入る。
よし。俺の今のこの大きさなら通れるはずだ!
「さあ。これを飲ん」
『じゃあな! パリス!』
「ああっ!」
そう言って俺は通気口へと走る。
よし、このまま逃げれば大丈夫なはず・・・・・・!
しかし、こいつ俺が逃げてるっていうのに何もしてこないな・・・・・・。
そんなことが頭をよぎるが、大丈夫だろうと振り切って通気口へ飛び込む。
そして、振り返ると。
「残念だけど、その先は行き止まりなんだ」
というパリスの声が聞こえてくる。が。
『嘘つけ。お前こっちに逃げられて焦ってんじゃないか』
「う、嘘じゃない! だ、だから、ほら、こっちに・・・・・・」
行き止まりと言っているが、奥からはずっと風がこちらに流れてくる。ふつうに通気口だ。
『なあ、パリス。お前、新居を楽しんでいってねって言ったよな?』
俺のその言葉に、俺が何を言いたいのかを察したパリスがあたふたとし始める。
「ま、待って! そうだ! お菓子! お菓子あげるから、その楽しみ方はちょっとま」
『楽しんでくるな!』
「待ってーーーーーー!」
魔女の屋敷の探検が始まった。
蜘蛛の巣一つないきれいな通気口を歩いて行くと、少し開けた場所に出た。
『ふむ。俺が最初に入ってきた玄関か』
やけに広いその玄関には、どこかの貴族の屋敷のように赤いカーペットが敷かれている。
パリスが来ないかどうかを確認する。
あいつ。通気口の存在忘れてたのかよ。こんなでかいのに。
そして、俺は通気口から飛び降り・・・・・・。
グニュッ。
ん? 何かを踏んだな。こんな場所に何が・・・・・・。
『・・・・・・おい。まさか』
足下に、ねばねばでくっついてくるなにかが・・・・・・。
「そう! そのまさかさ!」
俺の呟きに反応してパリスが通れないはずの通気口から顔を出す。
『・・・・・・お前どうやってそこ通ったんだよ』
「ふふっ。魔女をなめないでもらえるかな? 魔法って万能なんだよ」
腹の立つどや顔で自分の持つ杖をふりふりと振るパリス。
「じゃ、これで実験し放題なわけだよ。スライムカーペット。何気に高かったんだよ?」
『そんなもん買うんじゃねえよ。そしてやめろ。その禍々しい物体を取り出すんじゃない』
「え? あ、そっか。上からじゃ飲ませられないもんね」
違う。そういうことじゃない。
そして、パリスが通気口から飛び降り・・・・・・。
「あっ」
見事にスライムカーペットの上に着地した。
今野「最後までお読みいただきありがとうございます! いかがでしたか? みなさん。お気づきかもしれませんが、なんと! 魔女のいたずら編はこの番犬祭で終わりません! 誰だ終わるって言ったやつ! では、次はいつも通りの二十一時投稿です! 時間が空きますが! そちらもどうぞ!」