二十一話 番犬。子犬になる。
アレッタ「えっ・・・・・・? 私なんですか? ちょ、ちょっとそれは困るって言うか・・・・・・。キャア!(水ばしゃあ)・・・・・・おい。いくら何でもこれは強引じゃねえか? まあいい。本編だ。見てこい。その間にあたしは作者に話をつけてくる」
うう・・・・・・。頭が痛い・・・・・・。いったい何がどうなっ。
「お、起きたのかい。番犬君」
『・・・・・・最悪の目覚めだよ』
俺の顔を上から覗くパリスと目が合う。
そうだ、たしかこいつに変な粉かけられて・・・・・・。
「じゃあ、ちょっと感想を聞かせてもらえないかな?」
『断る』
「即答なの?!」
あたりまえだろうに。またこいつのおもちゃになってたまるか。
俺は体を起こす・・・・・・ん? なんか違和感が・・・・・・。
俺は自分の体を確認する。
毛、モフモフ。いやそこじゃない。体・・・・・・小さくなってる? しかも、パリスの膝の上じゃないか。
「あっ。おいしい状況にやっと気づいたのかな?」
『おい。パリス。お前さっき俺に何をかけた?』
「無視なのかい? ・・・・・・何? 感想くれるって?」
『一言も言ってないから』
会話が噛み合わないんだが。
というか、なんで俺小さくなってるんだか? 小さい俺とか誰得?
「仕方がないなー。じゃ、説明してあげるよ」
『まずその前にお前の膝の上から降りさせろ』
「やだよー。気持ちいいんだもん」
逃げようとする俺の体を両手で捕まえられる。
はあ、おとなしくするしかないか。
『はあ・・・・・・。もうこのまんまでいいから説明してくれ』
「やった! じゃ、説明するとだね。さっきかけた粉は・・・・・・名前は付けてないんだけど、仮にスモール粉と名付けるとだね」
『ネーミングセンスねえな』
「うっ・・・・・・し、仕方ないじゃん! 昔からネーミングセンスなんて・・・・・・。も、もういいや! で、説明すると、この粉をかけられると、体が小さくなるんだ。まあ、それ以外の効果が分かんないからこうやってこっちまで来たんだけどね」
なるほど。それで俺の体が小さくなっているわけか。まあ、ただ小さくなるだけなら怒ることもないかな。
「じゃ! 感想とか、なんか変わったこととかある?」
『そうだな・・・・・・』
変わったところか・・・・・・。
『お前への敵意』
「目が本気で怖いからそんな僕を睨まないで?」
仕方がない。まじめに答えてやるか。
『じゃあ、ちゃんと言うぞ。筋力と体力が下がってる気がする』
「ふむふむ。ちょっと待ってねー。メモメモ・・・・・・」
白衣(?)の胸ポケットからメモ帳とペンを取り出してメモを取る。
「・・・・・・他には?」
『他には・・・・・・能力が使えないな』
先ほどから巨大化が使えないのだ。子犬状態はなんだかいやだから試しているのだが。・・・・・・ん?テレパシーは能力じゃないのかって? そこはご都合主義様に任せてるんだろうと思う。
「ふーん。他には? もうない?」
『俺の感じる限りはもうないかな。一日観察すればわかるか・・・・・・も・・・・・・』
まずい。墓穴を掘ってしまった。
「一日観察したら?」
ああ、ほら・・・・・・。絶対そう来ると思ったよ。何やってんだ俺。
『なんでもないから! なんでもないから終わりにしよう!』
「えー? 僕聞いちゃったよー? 一日観察すればわかるって」
くっ・・・・・・。自ら実験の犬になろうとしただなんて、自分が信じられない。
『・・・・・・パリス。もう一個だけ効果があったぞ』
「何?」
『頭が悪くなる』
「それ自分が墓穴掘っただけだと思うよ?」
違う。これは薬のせいだ・・・・・・きっと。うん。そうしようそうしよう。
『じゃあ、俺は小屋に帰るから・・・・・・』
「諦めが悪いなあ、君は今から僕の家に来るんだよ? 逃げようとしても無駄さ」
その笑み、まさに悪魔。魔女そのものである。
とりあえず逃げよう。今こいつの手はメモに必死だからな。
タイミングを見計らて・・・・・・。パリスがメモをしまうために胸ポケットに手をかける。
今だ!
『じゃあな!』
「へ? あ! あーー!」
ふっ。残念だったな。メモに気を取られすぎだ。
子犬になったとはいえ、まだそれなりに筋力も体力も残っている。このまま逃げ・・・・・・。
・・・・・・どこに逃げよう。
どこに行ってもモフモフされる気しかしない。いや、されるのはいいんだけどな。あいつから逃げないといけないから・・・・・・。
「待てー!」
何?! もう追いつかれただと?
「魔女をなめるなー!」
『お前! 箒はずるいだろ!』
箒に乗ったパリスが狂気的な笑みを浮かべてこっちに来る。
『やめろー! 来るんじゃねえ!』
「はっはっはー! 番犬様が取り乱すなんておもしろ」
『あ、前』
「へ?」
俺の隣から魔女の姿が消える。
前方注意ってやつだ。木よ。よくやった。
魔女よ。どんまい!
さてと、あとはこのまますぐ目の前の自分の小屋まで突っ切るだけ・・・・・・。
ヒョイッ。
?!
突然訪れる浮遊感。
まさか・・・・・・パリスが何かをしたのか?!
「・・・・・・ケル? なんで小っちゃくなってんの?」
『なんだ。マトイかよ』
「そうだけど?」
よかった・・・・・・。もしもこれがパリスだったら今頃とんでもない目に遭っていたことだろう。
というか、もしかしてこいつ俺が上から見た時からずっとここをうろついていたのか? 寂しがり屋かよ。
『よし。じゃあマトイ。俺はとある魔女から逃げなきゃならない。てことで下ろしてくれ』
「? やだよ?」
・・・・・・。
『ん? なんて?』
「いやー。なんか知らないけど、子犬モードのケルベロスさんすごい気持ちいんですもーん」
わざとらしくそう言いながら俺はマトイの腕の中に抱きかかえられる。
この野郎・・・・・・。調子に乗りやがって・・・・・・!
『おい! 早く下ろせ! じゃないと、もう一緒に飯行ってやらねえぞ!』
「またまたー。そんなこと言って、本当は一緒に行ってくれるんでしょう?」
『じゃあ、毛はやらん』
「まだまだストックあるんでだーいじょーぶです!」
こいつ・・・・・・! 元の大きさに戻ったら俺と一緒に空の旅を送ってもらおう。とんでもない動きしてやる!
「や、やっと追いつい・・・・・・」
「ん? 誰・・・・・・」
パリスとマトイの視線が合う。
そう言えば、パリスも六十年前のあの事件を経験した一人なんだった。このままでは何が起こるか・・・・・・。
「やあ。元勇者様。こんなところで会うなんて奇遇だね」
「・・・・・・生憎。俺はお前の名前は憶えてねえぞ。魔王幹部」
「安心しな。僕も君の名前なんて憶えてないんだ」
険悪な雰囲気が流れる。
どうしよう。俺はただ小屋に戻りたかっただけなのになんでこうなった。
「俺の名前はマトイだ。なあ、幹部。今は争うよりも大事なことがあると思わないか?」
「僕の名前はパリスだよ。争う気なんてないんだけど、大事なことって何だい?」
「大事なことっつうのはなあ・・・・・・」
マトイが不敵な笑みを浮かべてこう言う。
「このかわいらしい物体をモフモフすることだよ!」
「それには僕も賛成だね!」
『覚えてろーーーー!』
トラウマがまた一つ増えた。
アレッタ「最後まで読んでくれてありがとな! どうだったか? いいな! 子犬ケルベロス! あたしもモフモフしたいわー。じゃ、また次回! 次回は番犬祭だから、そっちもよろしくな!」