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十八話 デイジー一家

マトイ「ん? あ、今日は俺か? おー。そうかそうか・・・・・・。具体的に、他の人たちは何を話すんだ? ・・・・・・え? 特に何も? それじゃ飽きられちゃうよ! ま、本編見てね!」

 さて、俺はとても後悔している。

 いや、前もこんなこと書いたような気がするとか言うコメントはいい。・・・・・・ん? コメントってなんだ?

 それはさておき、俺が後悔していることというのがこれ、荷物である。

 重い。とにかく重い。

 三百年生きてきたが、ここまで疲れるのは初めてなんじゃないかというほど重い。

 そして、デイジーの家への道のり。とんでもない山道なんだが。

 前に小僧どもと探検に行ったところよりもさらに奥を進んでいる。地面がぬかるんでいて、かなり急な坂だからさらにきついのだこれが。

 と、急に前を歩いていたデイジーが止まる。


「ほれ。お疲れ様。着いたぞい」


 ああ・・・・・・やっとか・・・・・・。

 その時のデイジーの笑顔は、まるで仏のように思えた。

 俺はあたりを見渡す。

 先ほどまでのぬかるんだ山道とはうって変わって広大な草原が広がっている。なぜ山にこんな広い草原があるのかというほどだ。

 そして、その草原の中にぽつりと一軒の家が岩壁を背にして建っていた。

 遠目からだが、木造建築だろうか。旅館のようにとても大きな一軒家の隣には、これまた大きな家が二軒ある。


『や、やっと着いたのか・・・・・・』

「ほっほっほ。よく弱音を吐かずについてこれたもんよ。ほれ、持ってあげるから貸しな」

『いや、自分でやると言ったんだ、ちゃんと家まで運ぶよ』


 そう言って、俺は疲れ切った体を奮い立たせる。


「そうかいそうかい」


 にこりと微笑み、デイジーがまた歩きだす。

 それにしても、本当に不自然なほど広い平原だな。なぜこんなものがあるのだろうか。


『なあ、デイジー』

「どうしたのじゃ?」

『この平原はなんなんだ? 山の上にこんなものがあるなんて驚いてな』

「ほっほ・・・・・・聞きたいかい?」


 知っているかのようにそんなことを言ってくる。


『なんだ、知っているのなら聞きたい』

「そうか・・・・・・。恥ずかしい話なのじゃが、あれは四百年前じゃの。わしは修行をしていたのじゃ。その頃は魔王の幹部になることが夢でのお。毎晩毎晩修行をして・・・・・・。で、その修行をしたのがここじゃ」


 ・・・・・・いや、こことか言われても。


「つまり、この平原を造ったのはわしじゃということじゃの」

『そ、そうか』


 え、つまりはもともと山だったところをただの修行でこんな草原に?

 この婆さん。思ったよりやるかもしれない。

 あと、恥ずかしがって俯かないでくれ。もう怖くなってくるから。 


「さて、着いたの。じゃあ、その袋を貸しておくれ、仕舞ってくるからの」

『ああ、わかった』


 俺は尻尾の先をデイジーの方へやり、袋を渡す。渡した瞬間、浮遊感すら感じるほどの解放感に包まれる。そして、俺は尻尾の強化を解く。


「ちなみにじゃが、おぬしはご飯でも食べて行かないかい?」


 飯・・・・・・か。

 まあ、朝食べてきちゃったしなあ・・・・・・。

 もう気づいているかもしれないが、俺は小食なのだ。


『すまんな。朝飯を食ってきたばかりなんだ。遠慮しておくよ』

「そうかい。じゃあ、代わりと言っちゃあなんだけど、うちの子たちと遊んでやってくれないか?」


 まあ、そのぐらいなら別にいいかな。


『ああ、いいぞ』

「ふふ。ありがとう。おーい! みんなー! 番犬様だよー!」


 デイジーが叫ぶやいなや、家の窓という窓がすべて開く。


「ほんとだー!」

「わんちゃんだー!」

「お、俺、初めて見る・・・・・・」

「こら! 危ないから身を乗り出さない!」

「でっかーい!」


 開いた窓から小さな角の生えた子供たちが顔をのぞかせ、ところどころには大人の姿も見える・・・・・・のはいいんだが。


『お、多くないか?』

「うちは長命種だからねえ。いっぱい増えるのさ」


 いっぱい増えるってなんだよ。この前俺の顔についた人面魚の数より多いぞ。


「よいしょー!」

「あっ! ちょっと!」


 一人の男の子が窓から飛び降り。

 ドスゥン・・・・・・。

 大きな砂煙を上げて着地した。


「こぉれえ! 地面が崩れるから窓から飛び降りるなと言うとるやろー!」

「へーい! ばあちゃん!」


 今の音と砂煙的に、あれなのか? 魔王みたいに重さが見た目よりも重いとかそういう感じのやつなのか? 俺、そんな奴乗っけられないぞ?


「もふもふー!」

『うおっ! びっくりした!』


 いつの間にか男の子が、着地した位置から俺のところまで来ていた。


「あー! ずるーい!」

「俺もー!」

「わたしもー!」

「僕もー!」

「ああもう! 階段使いなさいってば!」


 元気な声とともに次々と子供たちが下りてくる。


『待て! そんないっぺんに来られると・・・・・・!』

「「「ていやー!」」」


 ドスン! ドスドス!

 大勢の子供たちが俺に飛び掛かる。

 いや、重すぎるだろこれ・・・・・・。

 俺が予想した通り、子供たちはとんでもなく重たかった。

 身動きが取れないというのはこういうことを言うんだな・・・・・・。いや、そろそろ苦しいわ。


『おい。お前ら。さすがに重いからどいてくれ』

「「「「はーい!」」」」


 そう答えてすぐにどいてくれるのはありがたい。


「ねーねー!」

『なんだ?』

「お相撲しよー!」


 相撲・・・・・・ねえ。まあ、子供相手だし大丈夫だろう。


『わかった。いいぞ』

「わーい! じゃあ、そっちねー!」


 そう言って、男の子が俺の反対側につく。


「はっきよーい! のこった!」


 まあ、軽く遊んでやれば大丈夫だろ・・・・・・。


『へ?』


 ガシッと首に腕が巻き付けられる感覚。直後、不意に訪れる浮遊感。


「わーい! 持ち上がったー!」


 いやいやいや! 持ち上がったじゃないんだが?!

 俺の目からは見えないが、おそらくはこの男の子が俺の首を抱きかかえて持ち上げているのだろう。

 いや、冷静に分析している場合じゃない。

 こんな屈辱を子供にうけてたまるか!

 俺は地面に足を戻しながら負けじと体の巨大化をする。


『ふっ・・・・・・。さっきのは甘く見ていたが、次はそうもいかな』

「おっしゃー! 皆行くぞー!」


 いや、ちょっと待って。それはさすがに。


「「「「おりゃー!」」」」


 俺の踏ん張りも効かず、子供たちが俺の足を持ち上げる。

 何この怪力。遺伝子なの? 血のつながりって怖いな。

 いや、だから冷静に分析してる場合じゃないんだって。この屈辱から気を離したら負けだ。


『おい。お前ら。一回やめ』

「あっち行くぞー!」

「「「「おおー!」」」」

『や、やめ、やめろー! 持っていくんじゃねー!』


 その姿、まさに蟻に運ばれる蝶。俺は子供の無邪気さと恐ろしさを身に染みて感じた。 

マトイ「最後まで読んでくれてありがとよ! どうだったよ。おもしろかったか? 俺も、あっちの世界ではこういうのに投稿したことあったなあ。まさか、自分が後書きを喋ることになるとわな。笑っちゃうぜ。じゃ、また次回! よろしく!」

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