百二十七話 番犬ケルベロス
ケルベロス『最終回だ。最後まで見ていってくれ』
ーー魔王街の朝は早い。
太陽が顔を出したその時、橋の前の築三年の小屋から馬よりも一回り体の大きな黒犬が出てくる。
その黒犬は、顔を上にあげて、大きく息を吸う。そしてーー
「ワオオオオォォォン!」
大きな遠吠えが街中に響き渡る。それを合図にして、この街は活動を始める。
魔王の城の方では、兵隊たちの挨拶の声がしている。家の窓には明かりが灯る。商店街では、朝一番の良質な品物を並べる。
俺は、その変わらない日常が好きだ。
だが、変わった点がある。
まず、目の前の商店街に品物を並べている魔物や妖怪、妖精に混じって、人間がいるのだ。
さらに、並ぶ品物も少し変わり、ここには無かったチョコレートだったり、珍しいものでは扇風機とかいうものまで並んでいる。
人間の知識による産物は、間違いなくこの街を豊かにしていた。
俺は定位置に寝そべる。
さて、この立役者は誰か言うまでもあるまい。俺だ。嘘だ。正しくは俺とマトイだ。
俺たちは魔王に言われ、人間の国へと赴いた。
そしてマトイは武力に頼るのではなく、演説により和解を求めた。……もちろん叶わなかったので、最終的には武力行使になってしまったのだが。無血で革命を起こすのは難しい。
マトイは王になった。今では、異界人を中心として大規模な政治改革や、技術革新を行っている。
あとは、人間界に戻ることのできる魔方陣の開発を進めている、らしい。
何はともあれ、そうしてこの世界は平和になり、また豊かになった。
俺は陽の光に当てられて大きなあくびをする。
アイーダとはもちろん良い関係をきずけている。ただプロポーズは考えていない。種族:犬にはまだ敷居が高い。
だが、きっと成功させることができると、そう信じている。勇ましいあいつらのように。
あとは……そうだな。幹部連中や凶王は、自分たちの力を活かして領地を住みやすいように改造している。近々、大規模な人間の移住もあるらしい。
とりあえず、何もかもが良くなったのだ。良い、とても良い日常だ。
ふと顔を上げると、一人の人間の少女がこちらを見ていた。
『どうした』
「……おっきいわんちゃん」
『ああ、そうだな』
俺が相槌をうつ間に、少女は俺に手を伸ばす。だが、俺が少し身を動かすと、驚いて手を引っ込めてしまった。
その少女に、俺は犬なりの笑顔で言ってやる。
『もふもふ、するか?』
「うんっ!」
少女が俺の背中の毛に埋もれる。
目が覚めたら、マミーのところに飯でも食いに行って、それからアイーダに会いに行って、人間の国のマトイを冷やかしに行くとしよう。
この平和な世界で、人々を癒やしてやれることを――幸せに思う。
少女の重みを感じながら、俺は眠りについた。
今野「最後までお読みいただきありがとうございました! いかがだったでしょうか? これにて、とある魔界の番犬、毛並みの美しくさわり心地の良い黒犬ケルベロスのお話はおしまいとなります。僕は書き終わったその時、涙を堪えていました。僕は、自分の感動できる話を書きたくて、小説を書き始めました。この作品は、眠れない夜にたまたま思いついて、書いてみたら楽しいことなんの! そうして、この作品の連載を始めました。結末を何も考えていなくて……かなり、無理矢理な展開が多かったと思います。そんな反省は良いとして、僕はこの作品の登場人物たちから、それはもうたくさんのことを学びました。僕ができる恩返しなんて、こうして物語の中に登場させてあげることしかできません。そして、完結したということは、彼らにはもう恩返しができないのです。それは悲しいことでもありますが、反対に、僕の新たなる出発を見届けてくれる、親のような気持ちも感じます。何が言いたいかというと、この最終回と同時に、新たな作品の投稿を始めました。「回復魔法の無い世界で不死の転生者は最強になれるはず」という、この作品とは打って変わって、シリアスな作品となってはいます。宣伝にはなりますが、どうか僕の新たな歩みを、応援していただけたらと思います。最後になりますが、本当に、ここまでのお付き合い、ありがとうございました! 休んだ時期もありましたが、完結までできたのは皆様のおかげです! それでは、次回作でもよろしくお願いします!」




