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十二話 魔王街郊外 洞窟

 番犬祭ラストです! お楽しみください!


「わーれらちーびっこばーんけんたーい」


 弱弱しく背の上で子供たちが歌う。

 テンション下がってんじゃねえか。

 カイは先ほど俺に叱られてテンションダウン。アランも激マズ毒消し草食べて若干グロッキー状態。

 あれ毒入ってたわけじゃないだろうな。心配になってくるんだが。

 あとの二人は特に何もない・・・・・・が、単純に疲れているんだろう。


「たいちょ~」

『なんだ、どうした? カイ』

「おなか減った~」


 俺の背の上でぐったりしているカイが、そう言う。

 そうか、もう直昼か。

 空を見れば、太陽がだいぶ高いところにあり、もう昼だということを告げていた。


『じゃあ、この辺の水辺で昼飯にするか』


 着いたのは、昔魔王と来たことがある、街からほど近い小さな湖。


「やったー!」

「ごっはん! ごっはん!」

「お腹空いたぜ・・・・・・」


 ”飯”と聞いてはしゃぎだし、俺の背中から次々と飛び降りていく男子共。

 ま、それも男の習性かな。


「ねーねー! 隊長見て見て!」


 大きな荷物を抱えてやって来たサリーとアレッタ。


『なんだ?』

「この荷物。ご飯とかが入ってるって言ったでしょ?」


 そういや、出発前にそんな会話をしたな。


「でね! これぜ〜んぶ! あたしとアレッタが作ったのよ!」


 自慢げにそう語り、満面の笑みで荷物の中身を見せてくれる。

 その中には、ぎっしりと籠いっぱいに詰まったご飯の数々が入っていた。


『これを全部? すごいじゃないか』

「えへへー。まっ、ほとんどアレッタだけどね!」

「い、いや。サリーもいっぱい手伝ってくれたから・・・・・・」

「そうかしら? ま、別にいいわ! 早く食べましょ!あたしもお腹ペコペコ!」


 そう言って、年相応の笑みを浮かべる。

 この子。ほんとにかわいいな。いや、あれだからな。子供と見てだからな。ロリコンじゃないぞ。


「隊長ー!」


 と、次に話しかけてきたのはさきほどまでぐったりしていたカイ。


『今度はなんだ?』

「この水辺ってなにがいるのー? 釣れるのー?」


 興味津々のカイが、目を輝かせながら尋ねてくる。


『そうだな・・・・・・。たしか、ここにいるのは“人面魚”ぐらいだったっけかな』

「“人面魚”?」

『そうだ。さっき会った赤猪(レッドボア)と同じぐらい危ないし、食べても美味しくないから、関わるな』

「おもしろそー!」

『待ちなさい』


 すかさず俺はカイの服の襟を咥える。

 唐突すぎてついお母さんみたいな言い方になってしまったではないか。


「離してよー!」

『カイ。お前さっき俺が叱ってたのちゃんと聞いてた?』

「え? あれって赤猪(レッドボア)のことでしょ?」

『いや、全体のことだから』


 本当にわかっていないのか、きょとんとした目でこっちを見てくる。


『いいか? 軽く説明するとだな。人面魚ってのはその名の通り、人の顔を持った魚なんだが、肉食なんだ。で、一匹一匹は小さいんだが、数がとにかく多い。それで、毎年死者が多数出ているんだ。だから、ほんとうにやめてく』

「わー。ほんとに集まってきたー」


 俺はそれを聞いて一瞬フリーズする。

 いつの間に服から脱出したのか、上半身裸で左腕を湖に突っ込んでいるカイ。


「あはは。くすぐった・・・・・・。い、いた、いたいいたい!」


 急いで腕を水から出すも、もう何十匹かの小さな米粒ほどの人面魚が腕にくっついている。


「た、隊長ー! 助けてー!」


 まったく言わんこっちゃない。


『謝るか?』

「謝るから! お願いします!」

『驚くなよ』


 腕をこちらに向けて涙目で走ってくるカイ。

 俺はその人面魚が付いた腕をじっと見つめ・・・・・・。

 パクッと腕ごと口の中へ。


「ギャーーー!」

『騒ぐな騒ぐな、耳が痛い』


 いきなり腕を食べられたカイは、もうパニック状態。

 ちなみに、なぜ食べたかというと、口の中の魔力を一時的に上げ、腕についた人面魚共を圧殺しているのだ。

 ま、そりゃあパニックになるだろうけど。これ以外方法ないから仕方がないだろ。


『ほら、もう倒したから』


 俺はカイの腕を放す。

 そこには人面魚の姿はなく、微かな血の跡と・・・・・・俺の唾液がびっちょり付いていた。


「な、なんか付いてる・・・・・・。ベトベトするし洗お」

『おい待て、湖で洗うなよ』


 しかし、腕を食べられたショックで人面魚のことをすっかり忘れてしまっているのか、カイはまた手を湖の中へ・・・・・・。

 ビシャビシャビシャ!

 さきほどにはなかった水しぶきが上がる。

 あ、そういえば、人面魚って血の匂いを嗅ぐと興奮するんだっけか・・・・・・。


「ギャーーーーーー!」


 おっと、そんなことを悠長に考えている暇などなかったな。

 カイの腕を見ると、さきほどの倍近くの人面魚が。

 もうこれ軽くホラーだな。

 パクリ。


「ギャーーーーーーーーーーー!」

『耳痛い耳痛い。おい。動転してるのはわかるが俺の顔に右ストレートをかますな』


 子供とはいえ、ときどきとんで来るパンチは普通に痛い。


『ほら、もう倒したから。俺の唾液付いてるけど、絶対に湖に突っ込んだらダメだからな』

「もうしない・・・・・・もうしない・・・・・・」


 俺の唾液と血が混ざってベチョベチョの腕を大事そうに抱える。


「ちょっとー! もうご飯の準備できたわよー! 集まりなさーい!」


 離れた場所から、お母さんのようなサリーの声が飛んでくる。


『ご飯だとよ。大丈夫か?』

「大丈夫・・・・・・大丈夫・・・・・・」


 そうとうトラウマになっているな。さっきから湖をちらちら見ては青い顔をしている。


「やっと来たわね!」

「おそーい!」

「お腹空いたぜ・・・・・・」


 みんなの元へ行くと、もう食べる気満々といった明るい雰囲気が俺たちを出迎える。


『悪いな。遅くなった』

「カイ、手血だらけー」

「う、うん。包帯ない?」

「あ、あります! えっと・・・・・・う、腕をこっちに向けて?」

「うん」


 アレッタが荷物の中から包帯を取り出し、器用にカイの腕に巻き付けていく。


「うん! これで、大丈夫かな・・・・・・」

「ありがとう! アレッタ!」


 処置を済ませ、ホッとした様子のアレッタと嬉しそうな顔をするカイ。


「じゃ、もういいわね! いただきまーす!」

「「「「いただきまーす!」」」」


 ここに着く前とは大違いの元気な声。

 と、みんなが俺を見ている。

 おっと、俺だけ言っていなかったな。


『いただきます』


 言い終わると同時に、そこは食べ物を取り合う戦場と化したのだった。


「「ジャーンケーンポーン!!!!」」


 えらい気合いの入ったジャンケンだこと。


「あああぁぁぁ!」

「よっしゃぁぁぁー!」


 最後の唐揚げをめぐるカイとレンの決着がつき、レンがほくほくした顔で唐揚げを口に運ぶ。


「うぅ・・・・・・。全敗した・・・・・・」

『惜しかったじゃないか。じゃあ、俺の唐揚げを一つ分けてやろう』

「ほんと! ありがとう!」


 さすがに十戦やって全敗は可哀想だからな。それに、あんまお腹空いてないし。

 ほんとうに嬉しそうにカイが俺の唐揚げを持っていく。


「隊長ー。そう言えばよー」

『なんだ? レン』


 思い出したと言うように、唐揚げを口に含みながら話しかけてくる。


「ゴクン。おいしかった・・・・・・。で、なんかさっきこの辺探検してたら、洞窟見つけたんだぜ」


 洞窟? そんなもの、つい最近まではなかったし、新たに出現したという情報もなかったはずだが・・・・・・。


『そうか、後で行ってみるか?』

「行きたいんだぜ」


 いずれにしろ、調査に行くことになるんだからな。今行っておいた方が楽だ。


「ねえ、隊長」


 次に話しかけてきたのはサリー。


『どうした?』

「あのね、アレッタが見つからないの。一緒にお花摘みたかったのに・・・・・・」


 アレッタが・・・・・・?

 彼女がふらふらと、一人でどこかへ行ってしまうなんて考えられないし・・・・・・。


『おい、カイ。アレッタを見なかったか?』


 ダメ元でカイにそう尋ねる。


「アレッタ? アレッタならさっきご飯を食べたあとにレンと洞窟の近くまで付いてきてもらったよ?」


 洞窟の近くまで・・・・・・。


『お前ら、ここで待っていてくれ』

「? どうしたの?」


 急な俺の言葉に、カイが首を捻る。


「なんで?」

『お願いだ。絶対に。俺が戻ってくるまでここを動くんじゃないぞ。洞窟はどっちだ?』

「あ、あっちだよ・・・・・・」

『ありがとう。頼んだぞ』


 そう言って俺はカイが指を指した方へ向かって駆け出す。

 犬の勘だが・・・・・・どうも嫌な予感がする。

 そして、その洞窟は俺らが昼食をとっていた場所からほど近いところにあった。

 入口の前に立ち、匂いを確認する。

 たしかに————アレッタの匂いが微かに嗅ぎ取れる。

 俺は、意を決して中へと踏み入る。

 入口からほどなくして、鍾乳石と石筍が姿を現す。滴る水はまるで雨のようで、もう道に残ったアレッタの匂いなど消えてしまっていた。

 俺は、入り組んだ洞窟の中を、魔力の流れと勘だけを頼りにして進む。

 と、ここで魔力の流れが変わる。


『・・・・・・光?』


 思わず独り言を呟く。

 微かな光が二本に分かれた右側の通路の奥で光っているのだ。

 風の流れはない。つまり、これは人工的なもの。


『・・・・・・行くか』


 俺は、さらに足を進める。

 そして、その光源の元へとたどり着く。

 それは、一つの白く眩く光る魔法陣。

 そして、アレッタがかぶっていたニット帽を見つけた。


『・・・・・・頼むから、無事でいてくれよ』


 『死に注意』『明後日は気を付けろ』

 デイジーの婆さんの言葉が不意に頭をよぎった。

それを無理矢理に頭の隅へ押しやり、俺は魔法陣へと飛び込んだ。

 最後までお読みいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか? え? なんでこんな中途半端なところで終わってるかって? ・・・・・・・・・・・・せ、戦略?(殴)

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