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百九話 番犬、永炎の魔法陣へ

魔王「む、今日は我か。……この喋り方も疲れるな。普通に戻るとしよう。本編だ。最後までよろしくな」

「いやー! ほんま助かったわ! 感謝やで! いやー、ほんま恥ずかしいわ!」


 ファイアが紅い顔をさらに赤くしながら頭をかく。その隣では服をきちんと着たグレンが座っている。


『まあ、みんな無事で何よりだ』

「あんたは優しすぎよ、謝罪のひとつぐらいは欲しいんだけど」

「まあいいじゃないか。ケルベロスの言う通りだ」


 不満を隠さないダイアを、ルーケルが優しくなだめると、ダイアはこれ見よがしにため息を吐いた。どうやら許してやるということらしい。


 ファイアも安堵したのか、一層体の炎を煌々と照らしながら口を開いた。


「しかしまー、なんや。不思議な気分だったわ。生物の本能に訴えかけるっていうかな? あらがえないんや。こら他の凶王も大変やろうな……」

『アイスも大分苦しんでいたぞ』

「ほんまか! はー、何がおこっとるんかなぁ」

「それについては俺が説明しよう。グレンも聴いていてくれ」

「わかったっす」


 零雪原での実体験を含め、ルーケルが丁寧にここまでの状況を説明してくれる。それを聴いてグレンは驚きをかくせずに、ファイアは笑っていた。


 ダイアがファイアを睨む。お前ファイアに個人的な恨みでもあるのか?


 説明を終えたルーケルが、グレンに尋ねた。


「グレン。この辺りで変わったことや異変はなかったか? ないならここを直下堀するしかないのだが……」

「その心配はないっす。心当たりならあるっすよ」


 グレンがそう言い切ってくれるので、俺は思わず昂ぶった。


『本当か!』

「案内するっすよ!」


 そうしてグレンに案内されて俺たちは永炎のど真ん中を突き進む。途中途中で魔物とおぼしき生命体も多数いたが、そのどれもが遠巻きにこちらを見ているだけで危害は加えてこなかった。


 いや、それよりも……。


『なあファイア。お前魔物に慕われてるのか?』

「知らんよ? まあ巣作りを手伝ったり、抗争を止めたったりはしたかもしれんなぁ」


 なるほど、それで……。俺は改めてファイアを見た。こいつもこいつできちんと王というものをやっているらしい。まあこいつがイレギュラーなのかは知らない。アイスは働かなさそうだ。


 そんな魔物の心情がわかるのは、俺が魔物に近いからなのか。細かいことはあとにしよう。


 グレンに連れられるがまま俺たちは小さな山を登る。足場が悪くとても楽ではない。


「こ、こんな先にあるの?」

「そうっすよ。ここの頂上っす」


 みんなが一様に頂上を見上げる。そしてダイアはあからさまに嫌な顔をして、ため息を吐いた。


「はぁ、やってらんないわ。あたし先に行くわよ」


 そう言って魔法を展開して空中に足場を作り、たったと駆け上がって行くダイア。それを見てため息を吐くルーケル。


「悪いな。自分に正直なやつなんだ」

『大丈夫だ。そういうやつは別に嫌いじゃない』

「俺も大丈夫っすよ!」

「なんや身勝手な女子やなぁ」

「ちょちょっ、ファイア?!」

「冗談やでグレン」


 一瞬俺も肝が冷えたが……ほんとうに冗談のようなので俺たちは普通に脚を進める。いや、ほんとにちょっと怖かったんだよ。王の威厳の取り扱いには注意してほしい。


 そうしてしばらく歩いて、俺たちは頂上で目にした。


『……安定の、魔方陣だな』


 そこにあったのは、赤く輝く魔方陣。その先がどこにつながっているのかは誰も知らない。


「先に調べておいたわ。この魔方陣の先は別に危なくないから、入ってみましょう」


 ……ダイアは知っていたようだ。


 この一瞬で魔方陣の行く先を特定したダイアは、別に誇らしげでもなく、すんなりと魔方陣の中に入っていってしまった。


 俺たちは顔を見合わせる。


「……ああいう性格なんだ、許してやってくれ」

「大丈夫っすよ!」


 なんだかルーケルが保護者のようであった。 

魔王「最後まで読んでくれてありがとう。どうだ。はぁ、俺もそろそろケルをもふもふしたいなぁ。最近ちょっと忙しいんだよ。次回もよろしくな」

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