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百四話 番犬、目を見開く

アイス「今日は妾じゃ! ケルベロスの近くは心地が良かったのぅ。最後まで見ていっての!」

「治ったのじゃ〜!」


 そう俺の背中でアイスが飛び跳ねる。大層俺のことが気に入ったらしい。


 結局丸一日アイスとともに布団の中にいた。その結果、俺の何が作用したのかはわからないがこの様にアイスが快復した。本当になんの効果なのだ。


 シクルが安心に満ちた表情で言う。


「そうか、よかった……。ありがとうな、ケルベロス」

『俺も最後の方はうとうとしていたからな、別に礼を言われるようなことじゃない』


 体調が良くなってきたのか、最後の方は布団の中も暖かく心地よかった。いい布団だな。でも多分俺の毛で作った布団の方がいい。


 安堵に胸を撫で下ろすシクルに、アイスが俺の背から降りて向かう。


「悪いの。心配を掛けさせてしもうた。もう妾は大丈夫じゃぞ」

「そうだな。ならば安心だ」


 笑い返すシクルなんて、ここ以外じゃあどこで見られるか。


 思わずほほ笑みがこぼれる。


 だが、一転してシクルの表情は固くなる。そして俺に言った。


「ケルベロス。原因が掴めそうだ。よかったら一緒に見に来てくれないか?」


 そうして、俺たちはシクルに連れられて洞窟を出る。


 しばらく行くと、ふと見覚えのある洞窟が見えた。その中にシクルは入っていく。


 俺は声をかける。


『なあ、ここなのか?』

「そうだぞ。……来たことかあるのか?」

『ああ、ある』


 なんと言ったって、ここは……。


 ここは、ルーケル達と初めてあった洞窟であり、あの魔法陣がある洞窟なのだから。


 そういえば、あの魔法陣はいったいなんだったのかはわからなかったな。洞窟の中の開けた場所。その中央で淡く水色に光る魔方陣を見ながらそんなことを思う。


 ふと視線を外すと、以前にはなかった穴が空いている。それもはしごがかかっており、下に降りていけるようだ。


『あれは?』

「あの先に目的地があるんだ。行こう」


 そうは言ってもな。


『俺にどう降りろと』

「……が、頑張って着地してもらいたいな……」


 俺は穴をそっと覗き見る。


 ううむ。灯りとの距離を測るに結構深いんですが……。まあ、降りられないほどではなさそうだ。壁をキックして勢いを殺しながら安全に降りるとしよう。


『アイス。激しく揺れるから降りた方がいいぞ』

「む。なんじゃ、凶王である我に対してその扱いは。全然大丈夫に決まっているじゃろうが!」


 そう言って小さな体で胸を張るアイス。お前見た目幼女だから全然説得力ないな。こんなキャラだっただろうか……。


 過去とのギャップに困惑しながらも、まあアイスがいいと言うならと俺は穴に飛び込む。


 氷の壁を蹴って底に到達する。すると、灯りの正体がわかった。その正体に俺は絶句する。


『……なんだ、この魔力の流れは』


 アイスの部屋と同じぐらいの大きな空洞。そこにあるのは膨大な量の魔力の流れ。それも、一方へ規則的に流れている。それが異質過ぎて、俺は目を疑った。


 元来、魔力とは自然そのものだ。その力を制御するのは生命には難しく、扱えてもわずか一握り。魔王やカミラが使う魔力も、自身の近くの魔力を操ってのもの。


 だというのに、魔力がこうも規則的に、それも無限に近いほどの量が存在していることは異常だ。明るいのも密度が高すぎて発光しているからだ。


 驚いているのはアイスも同じらしく、自らの領地の下に隠された異質なものへの衝撃が大きいらしい。


「これが、アイスを狂わせていた原因のひとつだ。……まったく、恐ろしい」


 自らの腕を抱きながら、アイスが嫌気を隠さずにこぼす。


 そりゃあ恐ろしい。こんなもの、一体誰がなんの目的で作ったのかもわからないのだ。未知のものを恐れるなと言われてはいわかりましたなんて言えない。


 俺も深く息を吐いた。


 その時、背後で氷を踏む音が二つした。俺は勢いよく振り返り身構える。アイスも同様に冷気をまとった。


 しかし、俺たちの視線の先にいたのはそんな危険な人物ではなかった。


「あー……邪魔したわね」

「やあ、久しぶりだ」


 いつも通りローブを纏って顔を隠した状態のルーケルとダイアが、困惑しながらもとりあえずはと両手を挙げていた。 

アイス「最後までありがとうなのじゃ! どうだったかの? 妾も驚いたわ、まさかこんなものがのう……。次回もよろしくの!」

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