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九十九話 番犬、この世界を分かってくる

アクア「おー、今日はわたしね! 五大凶王のアクアちゃんよっ♪ 最近は前あとがきが適当でごめんなさい! ちょっと忙しかったけど、今日から復活よ! それじゃ、最後までよろしくねっ♪」

「はー、楽しかったー」


そう言いながらもやはり疲れているのか、アイーダは帰って早々に居間のソファに沈み込んだ。


「俺も楽しかったが、僅差で疲れの勝ちだ」

「あたしの荷物の加算ポイントね。つまりあたしの勝ち」

「不名誉な勝利だな……。この辺りに置いておくぞ」

「ありがと」


やれやれ。困ったお嬢様だ。まあ別にこういう風に頼ってくれるのは悪い気がしないからかまわないのだが。むしろもっと使ってくれていい。……マゾではないぞ?


俺は重たい腰を曲げて荷物を床に置き、カーペットの上にあぐらをかいて座った。


「ねぇ、ケルベロス」

「なんだ?」

「もふもふさせてよ」

「この髪でか? いい趣味だな」

「そんなわけないでしょ。っていうか、どんな趣味よ」


からかって言ったが、アイーダはそれが面白くなかったのかむっとする。お疲れのお嬢様のご機嫌取りは苦手なんだ……。


ちらりと様子をうかがうと顔が赤い気がする。すぐに視線を外された。


「薬の効果が切れたら、犬になれるでしょ? その時にって話」

「ああ、なるほどな」


だが、やはり俺は犬の状態に戻るのは不可能である。


「悪いが、それは無理だぞ。パリスの薬は万能でな。余分に摂取するとその分効果が持続するんだ」


これはなかなかにすごいことである。大抵の薬は、どれだけ飲んでも即効性のため意味が無く、むしろ逆効果で悪い効果になってしまうはずだ。


だが、パリスの作ったスモール粉やら、俺の飲んでいる人化の薬は、使えば使うほど効果が続く。あいつの脳みそはどうなってんだ。天才か? 天才だ。


俺の返答を聞いたアイーダは、うげっと嫌そうな顔をして俺に恐る恐る尋ねた。


「……何日分飲んできたのよ」

「とりあえず二週間分」

「こっちの世界どころか、あっちに戻ってもしばらくもふれないのね……」


とても残念そうにしながら、アイーダはスマホを取り出していじり始めた。


仕方が無いだろう。街中でいきなり犬に変化したらいけない。最悪透明化をすることで回避はできるが、街は大騒ぎになるだろうし、それに……。


俺はチラリとテレビを見た。


こんな技術があるのだ。俺が思うよりももっと悪い結果になることも予想できる。なので、アイーダには今度もふらせてやろう。


そこまで考えてふと思い出す。


「そういえば、この世界では魔力が使えないんだな」


荷物を運んでいるときに、負荷を減らそうとして強化を肉体に施そうとしたのだが、あっけなく失敗して結局疲れるはめになったのだ。


というか、その線で行くと透明化も使えないから余分に飲んできて正解か。


その疑問はアイーダによって解消される。


「聞いて驚きなさい。……この世界、魔力がないのよ」

「なん……だと?」


補足。これは素の反応である。


「わざとらしいわね」

「素の反応だ」


二度も説明させないでくれ。これは素の反応である。三度目じゃないか……。そしてそんな白々しい目で俺を見るなアイーダよ……。


ごほんと咳を大きくして誤魔化して、俺は改めて訊いた。


「そんなことがあるのか?」

「そうなの。あたしも驚いたけど、そもそも魔力というものが信じられてないみたい。科学が発展しすぎたのよ。だから、この世界には魔法もないし魔力もないわ。だから、占いとかも適当に当てはめただけのおままごとなのよね。本物もいるにはいるけど」


そこまで説明を聴いて、俺は納得してうなずく。そして何度も体験する、この異世界の常識の非日常さにも慣れないと感じた。


一人でうんうんとうなずいていると、おもむろにアイーダが立ち上がり、何かのボタンを操作した。


「じゃ、あたし先にお風呂に入るわね」

「ああ。俺もその後にいただくよ」


俺は買い物袋の元へ行き、袋をごそごそと漁って今日買ったパジャマを取り出す。茶色の犬柄の服だ。


部屋を出るとき、アイーダが突然こちらを振り向いた。


「……覗かないでよ」

「のっ、ぞく、とかするわけないだろ……」


唐突な発言に思わず声がつまり裏返る。くっ、やめろアイーダ。そんな冷ややかな目で俺をじとりと見るんじゃ無い。今のは別に俺は悪くないだろ。だって、アイーダ可愛いんだし……。


「ほ、ほら、先に行けよ。俺はパソコン借りてるから」

「……はいはい。使い方は?」

「この前教えてもらっただろ」


俺は逃げるように別室へ向かい、初日に使い方を教えてもらってなんとなく使えるようになったパソコンを持ってくる。最初はこのハイテクさに驚いた。きっと、今これを使っても新鮮味にあふれて俺は興奮しっぱなしだろう。……知識欲的な意味合いで。


パソコンを持って居間のソファに腰を下ろしたところで、アイーダがようやく扉の近くから動いた。


「……いくらあんたでも容赦しないからね」

「だからなんでそんなに疑っているんだよ……。姉弟同然だろ?」

「なんかそれだと姉弟だから見てもいいって意味にとれるわよ」

「考えすぎだ!」


勘弁してくれよ……。思わずツッコミの声も本気になってしまって、声が自然と大きくなる。それがやはり疑わしいようで、そんなやりとりを何回も行ってようやくアイーダは居間を去ってくれた。


……ふぅ。これでようやく俺の調べ物ができる。


今日俺が調べるのは他でもない。


《景色 綺麗 名古屋市》

アクア「最期まで読んでくれてありがと〜! どうだった? ねえ、どうだった? 甘酸っぱい展開になってきたわ! わたしも楽しみ……。次回は記念すべき 100話! 本日投稿! 楽しんでいってね♪」

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