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異世界美術館『アムール』  作者: りしゅん
5/10

5話 考える人 後編

あぁ…ムキムキのペリカンが…。

つい、うとうとしていた先にミーナさんがいた時の衝動により、俺は最悪なことをしてしまった。

価値観はどれだけなのかは知らないが、現実世界とリンクしているなら、億単位の代物であっても、おかしくない。

ワシタカさんになんて言われるんだ…。


「タツヤ…君…。」

やべぇ、ミーナさんも青ざめてる。これは…

本当に本当に本当に本当に本当にまずい!!!!!


「ミーナさん…こういう時は…どうしたら…」


「あ……あぁ……」


「ペンちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


ん?


「私のペンちゃんが!骨折しちゃった!どうしよう!応急処置を施さないと!死んじゃう!」


ペンちゃん?


「なんで!なんでタツヤ君がこれ持ってんの!?」


「いや、これを運んでくれってワシタカさんから…。」


「どうした!何の騒ぎだ!」

すると、俺の目の前に見たこともない男がやってきた。その姿は恐らくモデルは犬か…

なんとも清楚で、高身長で、はつらつな声と、おおらかな瞳と黒色の髪が輝いている。これは、この世界でのイケメンではないだろうかと思うほどだった。


「ん…君は…俺と同じ配属先の新人くんじゃないか。それに、ミーナ…。」


「あっ…アル君…。」


「これは…ミーナが自慢していた作品じゃないか。新人くん、これを運んでくれとワシタカさんから?」


「いや、俺は、…自分で…」

すると、アルは連絡用の携帯を取り出し、

「こちら、アル準備班、他にまだ運ばれていない作品は……―――。あぁ、了解。」


そして、アルはにっこり笑い、

「新人くん、恐らく運ぶ作品を間違えたんだね。さぁ、一緒に行こう。」


俺はそうやって、アルに着いていった。

進んでいくと、本来左に進むところを、右に進んでしまっているところがあった。俺がうとうとしていた時だ…。だから行き止まりのところもあったのか…。うとうとしていて、全然気にしていなかったが。


「ほら、これだ。」

俺がそう、言われたのはやはり『考える人』が原型の作品だった。しかし、案の定何かが違う。


これは……ゴリラ…?


「これが、後日行うロダーン展の看板作品、『考えるゴリラ』だよ!」

いや、知らねーよ…。この人達にはこれが本物なのか知らねーが、俺にとっては全部偽物なんだが…


「さぁ、これを運んで、とりあえず仕事を終わらせよう!」


俺はそして、アルと一緒にゴリラを運んだ…。


「終わった…。」

思わず声に出てしまった。それほどこの仕事は荷が重かった。

学芸員全員が使える休憩スペースの机に俺は、ばたんと張り付いた。


「タツヤ君かい?最後はハプニングがあったけど、よくこんな力仕事をやってのけたね!素晴らしい!」


アルはとても優しく接してくれるが、それでも、俺が当分復活することはないだろう。

ワシタカさんはこの後打ち合わせがあるといって、出て行ってしまい不在だという。当分は怒られないだろう。

問題はミーナさんの方だ。結局のところはミーナさんに悪いことをしてしまった。非常に申し訳ない…。

いや、でもなんでミーナさんが悲しんでたんだ…。あれって、ミーナさんが作ったのか…?


「アルさん、俺が間違えたあの作品って、ミーナさんが作ったんですか?」


「うん、そうだね。でも、大丈夫だと思うよ。あれはネタ半分で作ったもんだから。」


軽い…軽すぎるぞ…。でも、それのレベルなら許してくれるだろう。多分。


「でも…あの作品じゃなかったら…きっと君は終わってたかな…。」


え……どういうことだ…。


「彼女にはとても大事な作品がある。とともに、彼女がここに居ることにはとても強い意味があるんだ。」


「どういうことですか!」


「ごめん!もったいぶっちゃって…。でも、このことはミーナ自身から聞いたほうがいいんじゃないかな…。俺がしゃべったところで他人事になるし…。」


あんな明るいミーナさんに何があるんだ…。いや、今までは他人の過去を知ったところでだとは思ったが、もし仮に、仮に、仮にだ!ここに居続けるのならば、同僚の気持ちは知っておかなければならないと思った。


何か俺にはよくわからない使命感があった。


謝るついでに聞くか…。少し心もとないが…。


そして、俺はミーナさんが居るであろう、個室に向かった。

明かりがついている。やはりここに居る。


俺は恐る恐るドアをノックした。


「ミーナさん、タツヤです…。入っていいかな?」


「うん…。」


入れてくれた。しかし元気はない。まぁ、無視されないだけ良しとしよう。

俺はそうやって、椅子に座っていたミーナさんに向かって、


「ミーナさん!ごめん!俺が無知なばかりに、君の作品を壊しちゃって…。」

すると、ミーナさんは笑いながら、

「うん、全然いいよぉ!あれ、失敗作だったし。むしろ、私こそあんなところに置いてて、ごめんね!ややこしかったよね…。」


可愛い……いや、そんなことより余計俺が悪いみたいになってしまった。こんな状況、過去の話なんて切り出せないわ…。


「私の専門分野は、木を使った作品!だから、あれは試しに作ってみた銅像作品なの!銅像ならアル君とかがうまいよ!」


うん、やばい…話の内容変わっちまった。もう、いいや…。聞くのはまた、今度にしよう。


すると…


どたどたどたどたどたどたどたどたどたどた…

集団がこちらにやってくる音がする。なんだ…。


来る…来る…ここに来る!!!!


バタンッ!!!!!!

「おい!!!ミーナはいるか、おらぁぁぁぁ!」


え…ヤンキー…。しかも…牛…。牛のヤンキー集団だ…。


「あ…あなたたち…。仕事場にもくるなんて…。」


「さっさとブツ返してもらえねぇか?今日でもう、三年も待たせてんだけど。」


「どうなってるんゲスかねぇぇ。」


なんだよ…。唐突すぎるぞ…。入り口はヤンキーで遮られてるし、個室もただの六畳。


なんかよくわからんが…俺はとんでもねぇことに首を突っ込んじまったか?それに…


なんでミーナさんがヤンキーに追っかけられてんだ!?

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