10話 パブロ・ピカソ
おっと、この視線は…。
周囲にどよめきが走った。俺は、そんなに重大事を起こしたのだろうか。
「嘘…あの新人君が…?」
「センスあんの…?」
「勇者って言われたから、調子乗ってるんじゃね?」
しまったぁぁぁ!!タイミングが悪すぎた!
もう少しここで働いてからの方が良かったか…。いや、でも…このチャンスはもう、回ってくるかどうかわからない……!俺がここで名乗りを上げたのは正解だ!!多分…!!
「タツヤさん、本当かい?」
「えぇ、これでも、美術家志望でしたから…。」
流れでここで働いていたが、元は俺は美術家志望なんだよ!
「いや、どうせ、端的に筆動かして終わりだよ。」
「あぁいうのは、ほっとけばいいんだよ。一度現実を突きつけないとわからないタイプだな。」
全然、期待されてねぇ…。さっきの『勇者』という言葉は何だったのかと思うほどだ。
「タツヤさん、それは本心であり、忠実な意志で述べていることですかい?」
「えっ…えぇ…まぁ…。」
急に重い言葉を言われ、俺は動揺した。その矢先、シャプナーさんが言葉を発した。
「タツヤ…といったか。この班に来ても構わないぞ。」
!!!!!!マジっすか!!!!!
やっと、『俺らしい』ことができるのか…!!
俺は非常に気持ちが高鳴り、優越感に浸っていた。が…
「それなら、半端な覚悟で挑まないようにすることだな。」
「は…はい…。」
「では、また1週間後に会議室Cに来るように。」
「はい…。」
え…これは…交渉成立なのか…?俺は、入ることになったのか…?
すると、
「という事じゃな。ミーナ、タツヤさん、精進するように!」
ワシタカさんがこの話を締めるように言った。
そしてミーナさんは
「はいっ!!頑張ります!!」
と大きな声で叫んだ。じゃあ、俺も…
「俺も!頑張ります!!」
「おぉ!よい返事じゃ!」
やっとだ…俺は…この日初めて、『美術家』としての道を一歩踏み出したのではないだろうか。
このアムールに来てから…いや、異世界に転移した時から、俺は道を歩み始めていた。
俺の人生の物語~異世界編~がの第一章が今、始まるんだ!!
二度と現実世界のような、平凡で、滞り続ける生活はしない!!
一変して、俺はこの経歴がリセットされた状況で、がむしゃらに生きていく!!
現実世界で学んだ!!失敗は恐れるな!!――――――と。
かの有名なパブロ・ピカソはこのような言葉を残したという。
『できると思えばできる。
できないと思えばできない。
これは、ゆるぎない
絶対的な法則である―――――――。』
俺はここで初めて、意志が固まった。
『異世界で、最高の美術家になろう!』――――――。