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第四十四話 ずるい患者さん

 手書き処方箋時代の話。昔は保険請求も結構ザルだったようで、娘の分の湿布も欲しいからという理由で湿布の増加を求める患者がいて、医師も「ほんとはだめだけど、まっ、ちょっとだけならいいか」と付け加えたりしていました。今は厳しくなっていて、湿布もこの病名だと◎袋まで、飲み薬はこれは三十日分まで出せるが長期投与不可などと決まりができています。

 昔からいるのが、どうにかしてズルでもいいから、売買目的で薬を欲しがる人。保険請求が厳しくなってますといっても、関係ないようです。なんで売買するとわかる? と怒る人がいるし証拠もないので、私たちも直接には決して言いませんよ……でもわかりますよ。

 睡眠薬、本人以外が使う湿布、水虫用の高価な塗り薬、特に医療向けの塗り薬だけどアンチエイジングに使えるものは大人気のようです……いろいろありますよ。

 眠剤薬をやたらと欲しがる患者さん、依存状態かそれとも売買目的か……接しているうちにこれ自分が使うのじゃないなあとわかってくるものです、そういう睡眠パターンだと別の薬の方がいいですね、というと必死な目で「これでないと眠れない、量だけ増やして」 とか。

「これ以上増やしたら体こわしますよ、それに保険効かないですよ」と言ったら「もっともらってこいっていわれた」 とか「私はいくらもらっても無料なのよ」 と語るに落ちることを言う……意味わかる人だけ、どうか共感してください。どうしても欲しいから薬局から処方医に電話しろと言う。これはあちらも薬剤師が根負けして医師に電話して処方箋の追加を頼むことを見越している。

 絶対に電話してやらないと私も言葉と態度と笑顔を丁寧にして(出ないと本論を翻して今度は言葉遣いや態度を責める人がいる) 心を込めて説明する。そうするとあきらめて、処方箋をひったくって「別の薬局に行くわ、バカヤロウ」 といって去ってくださる。(次に狙われた調剤薬局の人、がんばってください) 数は極小ながらもこういう人と話すのは徒労感が出ます。

 でもわかっても、と証拠もないのに言えるわけがない。でもほんと人をだましたり、なめた真似するのは、自分のためにもならないですよ……。

(著者注記:無料の人でも調剤券が発行される前の話です。今はもっと厳しくなっています。その分知能犯が出てきている。詳細は書きません)


 交通事故で後からむちうちが出たと言ってくる患者さんもいます。事実なのですが、これも数が少ないながらお金を取れると思っておおげさに訴える人もいるのが問題。そういう人が入院したら医師も看護師も薬剤師も……日数がたつにつれてわかります。自覚症状で判断するしかない症例でも、やはり入院となると普段の言動からわかってくるものです。だからニセモノのむちうちもわかりますよ。

 歩きづらいと訴えても、人目につかない監視カメラで見ていたらさっさと歩く人も見たし、白衣の人には頭痛がいつでもあるといっても、患者用の談話室ではさわやかな顔で競馬の中継に夢中になっていたり。特別な女の人を呼んだり(女性に関しては個室だったのですが、他の患者さんから病院の有りようが指摘されて問題になりました)……そして病棟の主になって◎◎会や親睦会を勝手に作って院内生活を謳歌する人もいました……。

 ◎年前の事故にあって骨折など外傷があったのも事実だが、医師がもうよくなってますよ、リハビリもいいでしょう、といっても退院しない。詳細は書けないのですが、被害者と加害者がひっくり返ることってあるのだなと感じ入りました。診断書を有利なように書けと医師を脅した人もいます。つまり事故で食べていく人もいるのです。これは多額の賠償金もらっても後遺症で苦しむ人の方が多いし、交渉がこじれてひどい目にあった人もいる。マジで実際見ていますのでほんとナメたことをして、私が神なら雷攻撃を院内で落としてやるのにと思ったりしました。

 看護師や薬剤師は人畜無害だと思われていていつも笑顔で上機嫌でありがとうというので、そういう人でも怖くはなかったですが主治医が退院を言ったらこんなにつらいのにとすごまれたと聞いています。

 まだ若いのに事故の後遺症で歩きづらい、頭痛がするといって療養型の病院を転々とされる患者もいますし……多分一定の数でそういう患者さんがいるのでしょう。


 闘病に文字通り命をかけている人を見る反面、闘病をするフリで命をかけている人もいて、世の中いろいろな人がいるなあと思います。

 ひどい事故を乗り越えようとして、また賠償がうまくいかなくとも、多くの事故被害者側は必死で生きています。命ある限り、働けるなら働きますし子供がいれば育てます。動ける部分を上手に使って時には装具も使ってリハビリします。そしてできるだけ病院を早く退院して自分の家でくつろぎたい、家族やペットと一緒に過ごしたい、趣味も新しく作って楽しみたい……人間の生き方は基本はそういうものだと思っています。また私はそういう大部分の患者さんのために働いているつもりです。



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