第四話 薬剤師の進路と就職先について
我が国では、卒業予定の薬学部生は国家資格を取る前に就職先を決めないといけません。資格をとってからゆっくり就職先を探すわけにはいかないのです。
薬学生の進路はいろいろ。
製薬会社、大学院、研究機関、食品メーカー、病院、薬局……。就職せずに結婚した人もいます。多分、お嫁入り道具(←これも死語)に薬剤師免許証を持っていたのでしょう。
私の卒業時と大きく進路状況が変わったのはジェネリック薬が国推しになってからです。その当時の話を少ししてみます。
卒業当時(昭和時代)はジェネリック医薬品は現在のように国策の一環として推進されるものではありませんでした。あるジェネリック専門会社に就職を決めた友人に対しても、他人事ながらそんな会社に決めて大丈夫なのかな、とまで思いました。今から思えば失礼でしたね。その友人にとっては、念願の研究職でとても張り切っていました。現在同期の中では出世頭です。その会社は当時は上場もしていないし、知名度もなかったのに、今や東京一部上場の大企業です。その友人は上場前から給料で株を買っていたので、お金持ちになっていると思います。当時はジェネリックという感じのよい? ネーミングは存在しませんでした。「ゾロ」とちょっと蔑称は入った呼び名でしたのに、大出世です。これも世相ですね。
武田、山之内、住友、三共などの大きな製薬会社の研究職にはまだバブルの名残があり、会社のお金で大学に留学をさせてもらえたり海外駐在員になった人がいて、十分な手当てがもらえていいなあということもありました。特に武田が気前がよかったのを覚えています。今は大会社といえども吸収合併が相次ぎこのあたりの事情はずいぶん変わっていると思います。
私は病院に就職を決めました。小学生時代から病院に通院していたので医療職になろうと決めていました。就職バブルでもあったので、民間の病院は選ぶのにこまるぐらい求人票がありました。有り難いことです。私は総合的な勉強もしたくて某大学病院の研修員になろうと思いました。が、三次面接で落ちまして、民間に一年いて、再度別の公立病院にチャレンジしました。以来、二十代、三十代までずっと病院勤務です。独身でこのまま一生病院勤務だろうなと思っていました。でも縁ってどこで転がっているかわからないものです。
仕事メインで働き、休日は舞踊と創作する以外何もしない私。それなりに充実していましたが、恋愛というものが生活に欠落していた私にゴウを煮やして母親や親戚たちが縁談をもってきました。結構見合いをした方ですが、どれも決まりませんでした。我ながらまさか、と思う知人と結婚を決めてしまいました。しかも嫁ぎ先は地方です。通勤は不可能で退職するしかありませんでした。出産後、落ち着いてから今度は調剤薬局に非常勤として勤務しました。
そこで驚いたのは病院薬局と在野の調剤薬局の違いです。同じ調剤という仕事でもいろいろな面で大違いでびっくりしました。特に最初に勤務した調剤薬局がとても非常識なところで……他県にまたがって数店舗ある小規模チェーンだったのですが、薬務指導で業務停止処分を受けたり……点数の取り方でどうもおかしいと思っていた職場でしたが、病院しかしらなかった私は保険点数に無知だったのです。
調剤にまつわる点数のことをもっと勉強すべきでした。数百万円もの保険金返却の指導があっても、その社長は雇用者には何も言わないんだよね。
おまけに私の無知をこれ幸いとしてすごく安い値段を提示して名義を貸してくれ、と言われて一時貸したりしました。
私はバカです……見かねた事務員さんのメールの知らせであわてて退職しました。その後もびっくりの展開がありました。姑息な手段で保険点数をとってお金を稼ごうとするような薬局はつぶれるべきだと思っていますが、医院の門前なので今も営業しています。
また業務停止処分の勧告を受けても一番困るのは患者さんなので、恭順の意志を示せば処分はあっさりと解除するらしいですね。
このあたりは、ずっと病院勤務でしたら知りえない貴重な経験もさせてもらったと考えるようにしています。
いろいろな話をこの調子でゆっくりペースで綴っていこうと思います。
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著者追記::薬剤師免許の名義貸しは禁じられています。私は知らずに一カ月たったの三万円で貸してしまっていました。相場から見ても、大激安な値段で私は貸したことを今でも後悔しています……私の無知をよいことに、同じ有資格者でありながら使い捨てにしようとしたその調剤薬局の社長を恨んでいます。
そこはいつでも薬剤師を募集していますが集まらなくて苦労されているようです。ですがそれが社長のご人徳なのでしょう。高卒の事務員さんの学歴の低さを本人の面前でバカにしたり、私にお礼にきた患者さんの心づくしのお品物を私に知らせず、家に持って帰ったりするような人でした。事務員さんが私に名指しで贈り物をくださっているので、社長が持って帰って受け取ってないけど、どうかお礼をいってあげてほしいと言われて初めて気付いた次第です。今でもその社長は人間的にどうよ? と思う話です。
なるべく安く人件費をあげようとする社長さんの態度と性格を軽蔑しています。地方に嫁いだ私は周辺の医療機関に何のツテも知識もなく、求人募集チラシの隅っこに掲載されていた一番小さな広告にひっかかってパート勤務をしてしまったのです。私の薬剤師職歴の黒歴史になっています。皆さんも気をつけてください。