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第三十一話 むかつく非薬剤師経営の調剤薬局

 実は薬局の経営は薬剤師の資格がなくてもできます。しかし業界に明るければ明るいほどよいのは確か。なので、親の代から続けているところを除けば薬剤師でないけれど新規で開局されるのは、元MRさん、元薬の卸をしていた人が多い。しかし無資格で営業される場合は、当然ながら薬剤師を雇わないといけません。

 私は過去調剤薬局にそういうところに勤務しましたが、短期間ですぐやめました。数が少ないので比較するわけにはいきませんが、友人たちの間では薬剤師ではない経営者は、薬剤師とわかりあえないのは定説になっています。

 それはなぜか。

 それは資格があるからと無理難題をいう経営者が多いから。

 それと薬剤師と患者をバカにしている人もいるから。


 私が過去いたところは、経営者さんは調剤補助もしてくれる気さくな人だったのですが薬剤師の仕事を甘くみているところがありました。シップだけならいいだろうと薬剤師に断りなく渡してしまったり、常連さんならばすでにできている薬だけど、調剤と監査者である薬剤師に断りなく渡してしまったりしました。

 患者さんには薬局では皆が白衣を着ているので誰が有資格者か無資格者か区別はつきません。皆ありがとうございます、といって薬を持って帰られます。私は患者に交付もしていない処方箋を押し付けられた時には、がんとして自分の名前でログインして管理簿に記録せず印鑑も押しませんでした。(若い管理薬剤師がこの状態になれていて疑いもせずに経営者さんのいうとおりのことをしていました)

 最悪なことに処方箋を出した医師に疑義照会をしようとしたらストップをかけられました。理由を聞いたら疑義照会は医師が気を悪くする。だから、うち(薬局)の印象がわるくなるからやめてくれというのです。それを言ったのは社長の奥さんですが、私は彼女も薬剤師の資格がないのを知っているので唖然としました。

 私たちは言い合いになり、これは私の業務ですから、ときっぱり言いました。そして疑義照会をかけました。若い事務員さんはおろおろするだけです。社長の奥さんは不機嫌になっていました。

 疑義照会の処方内容は心臓薬の過量投与で、患者の薬歴と年齢、添付文書を確認したうえでのことです。処方医が忙しいのはわかっている。しかし薬剤師は必要があるときは、疑義照会を書けたうえで調剤にとりかかるのです。何一つ無駄なことはしていないし、もし患者に事故がおこれば医師の機嫌どころの話ではないでしょう。

 結果は過量投与了承の上での調剤要請があり、私は納得し、疑義照会したことを処方箋下部の所定の場所に書いて記録に残します。しかし、社長の奥さんは処方変更でなくそのままの調剤でいくとわかると、聞くだけ無駄だった、先生はお忙しいのにとまた怒る。バカじゃないか……私は決して謝りませんでした。


 同席していた管理薬剤師さんはまだ若く、そこ以外の勤務経験がない人なのでコトの重要さがわかってない。性格的にものんびり屋さんでした。おせっかいな薬剤師と化した私は社長たちのいない時を見計らって彼に言います。

「あのさあ、社長さんが渡した人の処方箋だけど、どうやって服薬指導記録簿に書いているの? 湿布ぐらいなら適当に書いてもごまかしがきくけど、もし何かあったらあなたの責任になるのよ、それとちょっとでも疑問があれば、疑義照会しないといけないわよ。誰がどういおうとね。そのために薬剤師という仕事があるのよ。わかる? ねえ、どうして社長とはいえ無資格者が渡した患者の処方箋に平気で調剤印をつけるの? いやじゃないの?」

 まだ若い管理薬剤師は社長と私の間にたって困惑していました。他の薬剤師はいません。本当に小さなところなので、社長夫妻の力が強いのです。

 まだ子供が小さかった時でそこには午前中だけのパートでした。結構アバウトなところがあるので危惧していたのですが、案の定決定的なことがおきました。


 ある時、私の調剤印がある薬袋を持った患者が粉薬が間違っていないかと聞くのです。いつもと味が違うというクレームです。処方箋と散薬調剤の時に出した印刷された記録メモは確かに私の名前になっているが、私はそれを調剤した記憶が全くない。記録メモには日付と時刻も印刷されていてそれが夜診の時間……つまり私がいない時間帯です。なのに、私が調剤をしたことになって、調剤印が使われているのです。

 どういうことかと血相を変えた私に、事務員さんが社長の奥さんが散薬調剤したといいます。私がいない時間に私の印鑑をつかって私のログイン番号を使って分包機を操作して調剤ミスをしたのです。通勤と保育園に便利な場所だったので、危ない所だなと思いつつ、ずるずる勤務していたツケが来たのです。私はとても後悔しました。管理薬剤師はぼくの責任だからと患者に低調に謝罪しにいきました。

 代々パートの薬剤師が不在時でも印鑑があればいたことになるので、社長の奥さんが本人に黙って使って調剤していたようです。

 私は不在時に勝手に調剤印をつかったり私の名前でログインして散薬調剤をしないように社長夫妻に申し入れしました。社長は私の怒りがわからず、ぎくしゃくしてきました。奥さんも社長に逆らったということで朝のあいさつもなさらぬようになりました。こうなってくると私がやめるしかありません。でもすぐやめてよかったと思います。(管理薬剤師の彼もあのあとすぐにやめています。)


 名の通った病院に長年勤務し、薬剤師に誇りを持つ先輩をみて仕事をしてきた私だもの、そんなところにしがみついている必要はないでしょう。

 そんなこんなで患者にはけっしてわからぬ事情があちこち転がっています。もちろん危険性も。

 薬剤師という国家資格は非薬剤師の経営者にとってはなくてはならぬ人材です。でもその国家資格はなんのための「国家資格」かとわきまえもせず漫然と開業医さんの前や横にしがみついている非薬剤師の経営者を私は軽蔑します。


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 今回の話は皆が皆そうじゃないだろう、わが社の社長も非薬剤師だが営業妨害する気か? と怒られる可能性があります。だから念のため申し添えますが、現在私は全く別の「非薬剤師が経営している調剤薬局」 にいます。そこに居座っています。皆もそうです。皆が続く薬局、薬剤師の入れ替わりがしょっちゅうでない薬局は、間違いなく薬剤師の業務を薬剤師にまかせてくれるのです。

 今いるところは前のように社長夫妻がやっていた調剤補助すらしません。するとすれば使用済みの段ボール箱をたたんでくれるぐらい。私たちが忙しくて湿布が入っていた箱を通路に放り出すせいで、危ないだろうと見かねてやってくれる。それとお菓子をもってきてくれたりします。そのくらいです。

 管理薬剤師がほぼ私と同じ年なのでよく話しますが、売り上げというか調剤による報酬などのお金の管理は経営者にまかせる。医薬品自体の在庫管理は薬剤師にまかせる。期限切れの損失などはどうしてもある程度の金額は出るものの責められることはまずないといいます。つまり有資格者と無資格者の棲み分けができているのです。居心地がよいはずです。




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