第十七話 病院薬剤師と調剤薬局薬剤師
職業に貴賤はない、薬剤師の職種もいろいろあるが貴賤はない。だけど調剤薬局に勤務すようになってわかったのですが、病院薬剤師の中に調剤薬局をバカにする人がいます。
病院の薬局の方が調剤薬局より身分が上ってわけです。それは違うのに。
多分処方箋の疑義照会で調剤薬局と医師との間を取次していくうちに優越感が芽生えたのかどうか知りませんが、何を勘違いしてくるのでしょう……とんでもないバカだと思っています。
仕事の内容が違うのは事実で、病院薬剤師の方が仕事の守備範囲が広いです。でも、どちらが上か下かではないです。
以下は両方に勤務経験のある薬剤師の私見です。(違う意見の薬剤師さんも多いかと思うので参考程度にしてください)
病院の薬局に勤務すると注射業務、病棟業務があります。これが一番の違いでしょう。調剤薬局にいると点滴処方は来ません。いや、来るところはあるが、まだ極少です。在宅で点滴ボトルの運搬並びに混注することはある。また調剤薬局にいると、入院中の患者さんと話すことはまずありません。その代りといってはなんですが、調剤薬局では在宅指導があります。在宅をしていない調剤薬局でも、病院薬局にいるよりは、患者さんとの話をする距離や本音の聞き取りがしやすいかと思います。
基本調剤薬局の方が外来が終われば患者さんは来ない。ので、薬歴管理簿の記入をクリアすれば定時に帰れます。管理薬剤師だと時期によってはそうはいきませんが、少なくともパートは帰れます。内服や外用などメインなので病院のように注射箋の個人定期をため込んでいてせっせと仕事している中、TDM分析依頼と抗がん剤の体表面積から容量割り出し依頼と緊急注射箋と混注作業と新患の持ち込み薬の分析依頼と救急緊急処方箋と緊急新規採用依頼がきて今からいう注射薬を一時間以内に用意しろ、と言われることはないでしょう。
またまた思い出話。
病院勤務のころ、先輩と二人で日曜日に仕事していたら、その状態の時に緊急採用して用意しろと言われたことがあります。受けた先輩がまた融通が利かない人でバカ正直に「ええっと新規採用なら薬事委員会にかけますけど、今月分は先週で締め切りました。それと今忙しいのでそういうややこしいのは明日にしてもらえますか?」 といって医師を激怒させたことがあります。
温厚な先生なのに薬局長の連絡先を調べて「緊急だっていってるのに、あいつはぼくの患者を殺す気かっ」 と怒ったそうで真っ青になった薬局長が職場に来ました。
(もちろん即日新規採用になりました。卸さんも年中無休なのですぐに納品されました)
調剤薬局は他部署の看護師や医師と話す機会は病院薬剤師よりは機会が少ないですが、それはそれで調剤薬局ならではの話も多々あります。
病院薬剤師さんの中には調剤薬局薬剤師は注射のことなど何も知らんだろうが、という態度の人もいます。勉強する人はどの立場でもしているので、そういう職業差別的な態度を取る人は人間的な底が浅いとみて差し支えないと思います。
私が病棟業務していた時に、外来通院中になじみになった調剤薬局の薬剤師さんを頼りにして褒めている人が多かったです。なのに薬学部四年制時代で私よりも年長の調剤薬局一筋の薬剤師さんの中には、病院のことを知らないからとコンプレックスを持っていた人もいました。
逆にその裏返しで私とは初対面なのに「管理薬剤師を交えた調剤薬局のパート就職面接中」 なのに総合病院出身だと思っていばらないでちょうだいと私に牽制球? をよこしてきた狭量な薬剤師さんもいました。これは唖然とする実話です。その時、私はその管理薬剤師とうまくやっていける自信がなく別の調剤薬局でパート就職を決めました。
なによりも私たち薬剤師は患者さんに安心して薬物療法を受けていただくために働いているのです。患者さんから見たら、どちらも同じ免許取得者です。だからバカなことは考えないで患者さんのために誠意を尽くした仕事をやってほしいし、自分もそうでありたいと思います。
勝手にあなたは病院出身者だからどうこう、という決めつけをした某さんには驚きましたが、自ら自分の可能性の狭さ、自分の限界を決めつけていてそれを吐露していたわけでとても気の毒に思っています。
私は病院と調剤薬局を両方経験していますが、どちらの仕事も大好きです。どちらも調剤がメインになり、患者さんと薬の話ができます。薬オタクな私は幸せな毎日を過ごしています。




