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第十五話 薬の充填、リフィル処方箋、自動調剤機の話

 新人の頃は薬の充填で薬の置き場所を覚えました。充填 (じゅうてん) というのは、調剤室の所定の薬の在庫が少なくなると、倉庫から取り出していっぱいにしておくことです。ある科のある医師が診察する時には、同じような疾患の患者さんを特定の曜日にかためて一気に診る先生が多い。そのため患者数の予測が医事予約係から把握しておき、薬の卸さんからも多めに取り寄せておくのです。


 業務用のパソコン管理が存在しなかった時代は、いつもあるはずの薬がないということは許されないので、日々の在庫チェックもまわりもちで薬剤師と事務がペアを組んでやりました。

 卸の出入りが許されていたころは卸さんが自分の扱う製薬会社の在庫は見てくれるので、「あと◎箱しかないので、入れておきましょうか」 などと聞いてきます。卸の出入り不可な所は局員だけで伝票とにらんでチェックをかけます。

 現在はなんでもパソコンでデータ入力できますので、一瞬であといくつ在庫があるかわかります。最近もらった薬のヒートの裏にバーコードがあるでしょう。これもぴっとバーコード入力しただけで在庫管理ができるのです。もちろん調剤ミス管理も。体力的には楽になったなーと思います。その分患者さんとの対話に力を入れたりできるようになったかと思います。


 私は数年前にヨーロッパの薬局を見学させてもらう機会がありました。あちらにはリフィル処方箋というのがあって、慢性疾患で長期投与の方は医師にかからなくとも何度でも使える処方箋があるのです。たとえばある種の臓器を手術でとったためその臓器が出すホルモンを一生涯服薬しないといけないなどが対象になります。そういうのは箱単位で出せるようになっています。その箱調剤も機械がしています。

 実物は自動販売機みたいな機械でガラス張りになっています。医療事務員が処方箋のコードを読み取らせるだけで機械の腕がガラスの部屋の中で動いて箱を取り出します。そうなれば人件費もある程度は浮くでしょうし、薬剤師法などで議論になっている無資格調剤者の存在も機械にとって代わられるかもしれませんね。

 自動注射調整期や水薬調剤機はもうすでに入れているところもあります。私が新人の時はまだ試作の段階でとんでもなく大きいし価格が数千万以上しました。大型トラック持参でデモをしにきた会社の人に薬局長が値段を聞いて怒りました。こんなバカでかいもの、スペースの問題もあるし、第一この病院の予算知ってるか、買えるかこんなもん、と言い放ちました。

 でも現在では大量に定例処方をさばかないといけないところは購入しています。価格も下がりちゃんとペイできています。そのうちもっとリーズナブルになっていくでしょう。


 日本ではまだ珍しいですが、簡単な疾患なら看護師や薬剤師が患者さんと面談して処方を決める動きもあるし、いずれリフィル処方箋も機械がやる箱調剤も実現するのではないかと思っています。

 そうなれば、きっと錠剤やカプセルの充填の仕事も昔話になってしまうでしょう。だから今のうちに昔話をしておきますね……と今日も倉庫から薬の箱を取り出して先入、先出で、ちまちまと充填する私です。



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