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第十四話 薬剤師不要論があること自体が哀しいこと

 それでもなお計数調剤だけして何千円も取られてわりにあわない、等という不満をつのらせた患者が薬剤師不要論の問題提起するわけです。そう書かれても仕方がない薬剤師さんもいるにはいるのかもしれない。

 だけど私は自分の存在意義云々はさておき、「薬剤師は世の中にも必要な職業」 ですという話をします。


 まず処方薬がある限り、薬剤師がいる。それは処方監査は薬剤師しかできないということ。

 病院勤務である薬剤師は日常的にその病院で採用されている全科にわたって薬の形状が把握できます。病棟に上がれば患者本人と対面できますので、その薬剤が錠剤か散薬か注射かどうか。患者によってはそれが適切かどうか。水薬から錠剤の読み替え、逆も然りで体内動態を踏まえたうえでの提案ができます。

 病棟や薬局窓口で患者さん本人や家族とあって、こちらの方が形態的によさそうと思えばその提案も処方医にします。また医師に話せなかったことでも薬剤師にはいえて、それが処方の見直しにつながる出来事も多々経験しています。これも長い目で見て患者さんのためになると思うのです。結論です……薬剤師は医療界の中でいないよりは、いた方がよい。


 ……それでもなお不要論を唱える人もいるでしょう。調剤薬局の待合室で見える薬剤師の動きをみて、たくさん薬が並べられてその中の一枚だけ引き抜くだけでお金を取ってずるいとも考えられるのかもそれません。お金に関しては、薬局にある薬にはそれぞれ薬価というものがあってこれは中央社会保険医療協議会(略して中医協会) の審議を通し厚生労働大臣が決定します。

 この中に製薬会社が巨額の研究費で作り上げた創薬の値段などがこめられていて、それにプラスして調剤費や薬剤管理費などがあわさって各種保険にあわせて三割なり一割なり負担をしていただくわけです。全額が薬剤師の儲けになるわけではないのです……。

 薬剤師が楽してずるいというのは実際に私も看護師から言われたことがある。褥瘡(じょくそう・床ずれのこと)の製剤だったのですが、「材料を混ぜて私たちに渡すだけで、キレイなしごとですね」 って。

 ……確かに患部に自分の手を使ってケアする仕事ではないのですが、そんなことを言われてもと思いました。その人は気分にむらがあり、時として仕事がめんどくさいと言いたいことを言う人でしたが、その分これは浸出液がすぐ少なくなった、効果はイマイチ、ダメとかはっきり言ってくれる。私としてはつきあいやすい看護師でもありました。


 こういう時にはどうしてこの薬なの? と質問してくださる医療者や患者さんは薬剤師の仕事の質の向上にもなります。下っ端だった私もこういう人々に鍛えられて? ちょっとはましになっていったのではないかと思います。

 薬剤師もまた縁の下の力持ち的な地味な職種ではありますが、適材適所でいないよりはいた方が便利な職種と思っていただけたら幸いです。もちろんこの世に薬剤師がいなくては困るよーと言ってくださる人が増えますよう私も頑張らないといけないと愚考する次第です。






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