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第四話「ネズミ捕り」

 カイ達αチーム5人は地上の通行人が通らなくなった隙を逃さず、梯子を上って地上へと出た。

 そして素早く国土交通省町田ビルの正面入り口へ集結する。


「α、北入り口で待機中」

「今扉を開ける」


 防弾ガラス製の自動ドアが開き、カイ達は中へと駆け込んだ。

 今度はワン達βチームから通信が入る。


「β、南入り口で待機中」

「オーケー、開けた」


 ワン達はビルの反対側の入り口から音を殺しつつ中へと駆け込んだ。

 キットが水口に尋ねる。


「何故2チームに分かれて別々の入り口から入るんですか?」

「官公庁の重要機密のある建物はテロ対策で特殊な構造をしてるんだ。

 複数の入り口から中へ入ることが出来るが、1階部分は北入り口と南入り口から入る空間が繋がっていない。

 それぞれの一番奥側に警備室があり、両側から同時に操作をしないと建物の重要な機能が動かない。

 一般業務の行われる2階より上へのエレベーターの始動、重要エリアの扉のロック解除、物流パイプラインから流れて来るパケットや、トラック、コンテナの搬入許可とかな。

 ここはまだセキュリティの緩い方だ。

 大規模なビルやアルコロジーになると5か所同時とかもある。」


「同じ仕事を5人がするんですか!? 無駄な人件費が掛かりそうですね」

「役人にとってはこの上ない仕組みだろうよ」


 VR空間を漂いながら無駄話をする水口とキットに新たな通信が入る。


「α、警備室へ潜入した。いつでもエレベーターを起動出来る」

「β、もうすぐだ……。よし、着いた。……大丈夫だ」


「いいか? まずはエレベーターシャフトE01からだ」

「大丈夫だ」


「3、2、1、Go」

「押した。…………よし、エレベーターシャフトがアクティブ、ケージ10台全て正常に循環し始めた」


「次、W01。3、2、1、Go」

「押した。…………こちらも正常」


「両チームとも警備室に1名を残し、30階までエレベーターで直行する。ビッグアイ、警戒を怠るな。

 50階までのエスカレーターは各チームが乗った際に起動してくれ」

「任せろ」


 カイ達とワン達はそれぞれエレベーターに乗り込み、一気に30階まで移動する。

 どちらのチームも緊張を維持しながらエレベーターの階層表示を見守る。

 そして30階に到着するとほぼ同時にエレベーターを降りた。

 西エレベーターと東エレベーター、ビルの正反対である。


「ビッグアイ、誘導を頼む」

「α、β、エレベーターを降りたらそのまま南側の入り口へと出てくれ。

 窓には液晶シャッターが降りているが道路に面した廊下があるはずだ。

 お互い一本道、真ん中へと向かってくれ。

 3階分の吹き抜けのホールで合流するはずだ」


「了解」

「了解」


 水口とキットは繰り返し監視映像や各種センサーをチェックし、偽装工作プログラムを適用しつつ監視を続けた。

 深夜で誰一人いない。

 残業をする人間すらこのビルに一人もいない。

 再び無線が入る。


「こちらα、ビッグアイ、廊下の東端まで辿り着いた。メインホールなどないぞ」

「こちらβ、廊下の西端まで来た。メインホールは見つからなかった」


「βへ、本当に30階で降りたのか?」

「間違いない。30階で降りた」


 VR空間の水口は突如焦った様子でビルの監視データを表示させる。

 水口とキットの目の前に巨大なビルの3Dスケルトン模型のようなものが出現した。

 αチーム、βチームをしめす光点は確かに30階の南廊下の東と西の端にある。


「そんな……、間違いないはずだ」


 北入り口から入り、警備室に残った一人のメンバーから通信が入る。


「ビッグアイ、外の様子は大丈夫か? 何か騒がしい気がする」


 水口は慌てて監視映像を並べてチェックする。


「通行人がまばらに居るだけだ。入り口扉はロックしたまま、問題ない」


 しばらく監視映像を見ていたキットが何かに気が付き、水口に尋ねる。


「この二人組、ちょっと前に同じ場所を通っていたような……たしかこの電灯の前で一人がもう一人の頭を叩いて……」


 キットが拡大した監視映像に二人組の通行人が映された。

 二人組はキットが指し示す電灯の前まで歩くと、一人がもう一人の頭を叩いた。


「!」

「緊急事態! 罠だっ! すまない、俺の不注意だ!」

「おいっ! ライトの明かりがいくつも近づいて来るぞ……、NSATだっ! やば……」


 銃撃の音と共に警備室に残ったメンバーの通信が途絶えた。

 キット達が見ている全てのセンサーや監視カメラの映像は平穏な深夜のビル内を映したままである。


「作戦中止! 引き上げるぞ! ビッグアイ! ナビゲートを!」

「映ってない! どの映像にも映ってないんだっ! それに俺が把握しているデータではαもβも同じ階に居る…………一階のドアだって開いてないんだっ!」


「αへ、今窓を割って外を確認した。我々βは国土交通省町田ビルの中に居ない。ここはどこだ?」

「動いてないんだよぉ……、βのメンバーは棒立ちのまま誰も動いていない!」


「こちらα、ビッグアイ、お前達も位置を移動すべきだ。…………今何処にいる?」

「何を言っている? 俺たちは……」


 VR空間でキットが水口の前に手をかざし、しゃべるのを止めさせた。

 そして水口に言った。


「もう完全に敵の制御の中、何も信じちゃ駄目だ」

「んなこと言ったってどうしろってんだ! カイ達やワン達が全滅する! レジスタンスが壊滅する!」

「僕が基幹ネットワークのメイン情報ケーブルから侵入する。一番近い場所への行き方を教えてくれないか?」


 水口は半ば放心状態で片手で操作し、周辺のアンダーワールドの3Dマップを表示した。

 そして片手で頭を押さえながら、地下50メートルにある細長い空間を指さした。

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