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第三話「情報メンバーのお仕事」

 情報ルームにはいったキットを30代後半の小太りの坊主頭の男が出迎える。

 水口と呼ばれるレジスタンスの情報担当メンバーである。


「キット! そこのVRヘルメットを装着しろ。基本的な操作は分かっているな?」

「はい」


 キットは水口と背中合わせになるようにして座り、用意されていたVRヘルメットを被った。

 顔の半分以上がヘルメットに覆われ、目の前に一辺が50メートルほどの四角い部屋が広がる。

 床、天井、四方の壁全てに監視カメラの映像のようなものがみっしり詰まって映っている。

 キットの体はプラスチックの操り人形のような姿のロボットのように映る。

 そして隣には水口の同様の姿が有った。


「ここが俺たちの潜行艇内メインサーバーだ。普段の監視業務はこうやって行う」


 VR空間内で漂う水口が片手を前に出してハンドシグナルを形作ると、四方の壁からいくつかの映像がピックアップされて水口の前まで空中を飛んで移動し、並ぶ。

 そこには小銃を持って階段を駆け上るレジスタンス達の側頭部に装着したカメラの映像、既にハッキング済みのアンダーワールド内で、彼らの走る姿の映った監視カメラの映像があった。


「監視カメラの映像を偽装して作戦メンバーの姿の痕跡を消す。お前も手伝え。メンバーが映っているカメラ映像をピックアップし、プログラムコード『D209』を適用しろ。

 急げよ? 映像の遅延処理は3分間しか猶予が無い」


 VR空間の水口の隣で浮遊するキットは、空中に指をなぞらせて即席でリアルタイムコーディングを行った。

 『RUN(じっこう)』のサインを流すと次々とキットの前に映像が渦巻くように集積され、キットは素早くすべての映像にタッチしてプログラムコード『D209』を適用していく。

 横目でそれを見ていた水口は現実世界の体で思わず笑みをこぼす。


「……ヒュー! 凄いじゃないかキット! さすが期待のルーキーだな。完璧だよ」


 二つに分かれた突入部隊のαチームのリーダー、カイがアンダーワールド最上層の地上へ向かう厳重な金庫の扉のようになった入り口の下に辿り着き、無線連絡を送る。


「αチーム、地上入り口前に到着した。βチームの様子はどうだ?」


 ほぼ同じタイミングでβチームリーダー、ワンからの通信が入る。


「βチーム、エリアインフォメーションリンクケーブルの根に辿り着いた。これから機材を装着する」

「ラジャー、αチームは待機する。いつも通り手早く頼むぞ」


 情報ルームの水口は両手を前に出して片手でグーを作り、片手をそれに被せて指をポキポキと鳴らした。


「キット、いよいよこれからが本番だ。このエリアのセンサーやカメラ類を一気にハッキングする。まずはお前は鑑賞者スペクテーターモードで見ておけ!」


 キットはプログラムを起動し、水口のVR上の体に憑依してスペクテーターとなって待機する。

 キットの視界には水口の視界が映されている。

 1分ほどしてワンから通信が入った。


「βチーム、機材の装着を完了した。いつもの奴を頼む」

「まかせろ」


 VR空間上の水口は片手でサインを空中に描いた。

 一気に空間が暗転し、こんどは和風の古代建築のような四角い空間へと変わった。

 天井も壁も床も、全て格子状に張り巡らされた梁のようなものある板壁で出来ており、格子の中には古代の飾り彫刻のようなものが埋め尽くされている。


「キット、これは今の国家機関で一番普及している第三世代セキュリティシステムネットワーク、天神だ。ここからエリア一体のセキュリティシステムに直結ラインを引く。

 吐くんじゃないぞ?」


 水口は格子の一端に手を押し当てるとそこが四角い穴に変わった。

 そして凄まじいスピードでその穴へと突入していく。

 突き進む水口の背中からは光のラインが残されている。

 しばらく進むと別の大広間のような空間に出た。

 そこで水口は両手を万歳するように上げると、両手のひらから無数の光のラインが拡散し、部屋全体に根を張った。

 こんどはその部屋の壁に手を当てて再び扉を開き、その中を突き進む。

 移動スピードは現実世界の基準ならば時速200キロくらいは出ている。

 しかも加速度はMAXである。

 水口は合計30ほどの大部屋を潜り抜け、全てに光の根を張った。

 そして空中にサインを形作るともはや視認出来ない速度で、今まで引いてきた光のラインを辿って元の部屋に戻る。


「準備完了だ。今αチームの目の前の扉を開ける」


 水口が空中にサインを作るとエリア一体の3Dマップが出現し、水口はそれを拡大して地上のマンホールのような個所をタッチした。

 現実世界のαチームの頭上にある蓋のいくつかのダイオードが赤から青へと輝きを変え、ゆっくりと回転し始める。そして少し上に浮き上がった後、横へとズレて道を開けた。


「地上の通行人情報をこっちに同期してくれ」

「いまやる。オーケー、出来た」


 カイ達αチームのメンバー5人は全員がVRゴーグルを額から下して目に装着する。

 彼らの視界には地上の通行人の姿が分厚い天井を通して全て透けて見えるようになった。

 全て地上の監視カメラ映像からの分析、合成である。

 深夜の為、通行人の姿はほとんどない。

 カイはタイミングを見極めると言った。


「よし、今だ。αチーム、突入する!」

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