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(旧作)大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~  作者: 顔が盗賊 / TECH
第一章 『帝都の大盗賊』
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第六十六話 「隠し持つモノ」



「よし、着いたぞ!!」

「おお、ここが武「入るぞ!!」」


弓人達はものすごい速度で武具屋に到着した。しかし、新しいものを見た時のヴィルの御約束は残酷な冒険者弓人によって差し止められてしまった。批難がましい目をする相棒を余所に弓人は店の中へと入っていく。


ドタダダダダダダ


その歩く歩調はこんな感じであったが、それは当然、音としては周りに(はっ)してはいない。そんな見た目だけは騒がしい弓人はいつもの弓が陳列されているエリアではなく、そのままカウンターと向かった。そしてそこへ身を乗り出し、


「ポードル!!いるか!?」


親愛なるサプライヤー、ポードルの名を呼んだ。するとどこかで身をピクリと動かした感覚がした。当然弓人の超能力(?)で察知したのである。そして、その感覚がしてすぐに、カウンターの向こうにある扉が開かれた。


「っ!?これは、お客様。いらっしゃいませなのですな。」

「ああ。久しぶり、だな。」


弓人がぎこちないのは、当然、彼等にとっては久方振りの再会に自分を大歓迎(全力で攻撃)してきた、あの恐ろしい怪物と料理が上手いダンディーな男の所為(せい)である。しかし弓人が考えていた程ポードルは興奮していない様である。


「御帰還が遅いので心配していたのですな。」

「それに関しては、悪かった。」

「いえいえ、そういった意味で言ったのではないのですな。ただただ、(わたくし)めはお客様のご帰還をここからお待ちしていただけなのですな。」

「嬉しい事を言う。」


新しい武器が手に入るとの事で、興奮していたのはポードルではなく弓人の方だった様である。


ボウガン(クロスボウ)の話をした時もそうだったが、少しくらい口調も変わると思ってたんだけどな。普通の口調だ。いや、ポードルの口調だ。)


あの新しい武器を注文した時の事思い出しながら、自分が考えていた展開とのギャップを感じていく。


「それでな、分かっていると思うが、今日は帰還の報告と、あと新しい武...........」


そんな事を考えていた弓人は取ってつけた様な理由を最初に述べたが、その瞬間であった。彼の口を止めた出来事が起きたのは。


..........ぶ、ぶわぁっ


「「!?」......ポー、ドル?」

「???、どういたしましたかな?」


普段通りのポードル。しかし、その双眸からは溢れんばかりの涙が、そして、


「な、んか、赤、くね?」

「一体どういたしましたかなですな?」


いつも以上におかしな言葉使いの彼の涙には、何か赤いものが混じっていた。別段血に抵抗の無い弓人でも、見知った人物が“血涙”の様なものを流していれば、人並みには感情を揺り動かされるのである。


「あ、いや。武器を、」

「そうでしたな。はい。そうでしたな。新しい武器が出来ておりますな。今お持ちしますな。」


ポードルの異常さに押されるままに弓人は話を進めてしまった。そして、顔の下半分をよく分からない液体で濡らしたポードルはカウンターの向こうの扉へと消えていった。


「.............今のは、なんだ?」

「俺に聞くな。俺に。」


聞き先としては間違っていないヴィルに対し、今回ばかりは完全なる拒絶を浴びせた弓人。それを受けたヴィルも弓人が拒絶する気持ちは理解出来ているらしく、それ以上は追及しなかった。


「それにしてもユミヒトの周りには独創性溢れる者が多いな。」

「誤魔化しきれてないからな、それ。」

「変わり者、の方がよかったか?」

「否定する気にも.....おっと、来たな。」


バンッ


閉じる時は静かであったのに、開ける時は実に豪快に扉を開けたポードルは、片腕で抱えられる程の高級そうな木箱を持っていた。


トン


それを静かにカウンターへと置き、弓人の目の前で早速開ける。そして、


「おお、これは。」

「如何ですかな?」

「早く着けたい。」

「もちろんですな。」


中には子供の腕にも簡単に乗る程小さく、しかし重厚で静謐な雰囲気を出す、一つのクロスボウがあった。それには腕に装備出来るように二つに割れた輪の様な部分があり、弓人は間髪入れずにそれを袖を捲った自分の右腕へと乗せる。


「ここを押して、そう、ベルトを締めるのですな。」


その輪の部分は、少し閉じる事ができ、それを自分の腕に合わせていく弓人。そしてベルトを締めて拳を握りながら感触を確かめる。それを確かめた彼の顔はすぐさま口角が上がり、その目も怪しく光った。


「これもやはり、」

「そうなのですな、早速やってみて欲しいのですな。」


具体的な単語は存在しない会話でも、彼等には彼等の意思疎通が成立するらしく、気付けば左手の中に移動させられていたヴィルは不満げである。


「それでは。」


ギィュゥゥゥゥゥゥゥ


弓人はクロスボウに、その中でも魔力を流し易いと思った部位に魔力を流した。すると、普通の弓の時とはまた違った、独特な動きでその弓の部分が引かれていく。そう、今回は引かれていくのだ。しかしそれよりも、その小さな作動音に弓人は感心していた。


カチ


普通の弓では考えられない程にしなった(・・・・)ところで、音では無い様な小さな音がした。弓人はすぐに魔力を流すのを止め、初めから知っていたその理由を確かめる。


「これで引きは完了か。」

「そうでありますな。これでいつでも発射可能なのでありますな。」


引きが終わると留め金によってその力は留められたままになった。そこへ弓人はおもむろに袖を戻す。


「これは、本当に判らないな。」

「そのために小さく作ったのでありますな。」


クロスボウは弓人の右腕に、“不自然な程”自然にフィットし、袖を下しただけでその存在は完全に隠れてしまった。そして、それを確認した弓人はその首をグルリと回し、ポードルの方を見て唐突に言う。


「いくらだ。」

「.......え、ええ。いきなりで驚いたのですな。」

「早く試し射ちがしたい。」

「御承知したのですな。......え~と、今回は少し待って欲しいのですな。」

「?」


客が店に対して、自分の支払いを待つ様に願い出るのは分かる、しかし店の方からそれを待つ様に言われる事は弓人自身予想していなかった。


「実は、この武器には......流石に誰にもお教え出来ない様な伝手(つて)からの素材が多く使われておりましてな。価格もまだ決まっていないのですな。」

「そうなの___........それよりも、やっぱり......高いのか。」

「どう考えても、常識を外れておりますでありますな。」

「そうか。それは苦労を掛けたな。」


新しい興奮していた弓人であったが、それを作った最大にして唯一の功労者であるポードルが一体どんな苦労していたのかを考えると、申し訳ない気持ちで一杯になった。しかしそんな弓人の気持ちを知ってか、ポードルは思いもよらない事を口にする。


「いえ、これも投資なのですな。.......もし、すぐにお支払いが出来なくとも、その時は(わたくし)を正式に雇って下されば問題無いのですな。」

「.........え?」

「問題、無いのですな。」


本当に思いもよらない事で気の抜けた声の出てしまった弓人。ここで使うのは正しいか不明だが、その強靭な精神力でなんとか話を飲み込む。


「支払が出来なかったらポードルを雇う??どういう事だ??」

「それが出来なかった場合、私は借金奴隷に堕ちてしまうのですな。だからお客様に着いて行くのでありますな。」

「???」


新しい単語“借金奴隷”を聞いた弓人。しかし、その新出単語がこの話の流れを読み解かせた。


「つまり、俺が払わなければポードルも材料元に払えない。払えなければ奴隷生活。ん?俺は......まぁ捕まえれらないだろうしな。ん~........あれ?雇うって表現おかしくね?」


ここで重大な事に気が付いた弓人。それを指摘されたポードルは、


「お客様の所に下宿して、共に旅を「断る!!!!」」


然も当たり前の事の様に話始めたポードルに弓人が待ったをかけた。


「ポードル。俺は今決意した。」

「何を、で御座いますかな?」

「それはな、お前が借金奴隷に堕ちる事も、この武具屋から去る事もしなくてよくなる、とてもすばらしいものだ。」

「............。」


これから弓人は何を言うか大方察しのついたポードルは少し悲しそうな顔をする。しかし、今回の弓人の決意は固かった。彼の体は既に店の出口に向いており、そして、


「安心しろ!!これから、どんな手段を使ってでもお前に金は返してやる!!!」


そのままダッシュしてその場を去った。


一瞬で寂しくなった店内。ポードルが弓人が残していったクロスボウの箱を保管しておこうと目の前のカウンター見ると、


「!?、無い。」


そこには埃一つ無い綺麗な(めん)が、ほんのりとポードルの顔を映していた。



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