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(旧作)大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~  作者: 顔が盗賊 / TECH
第一章 『帝都の大盗賊』
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第六十五話 「前人未到」



「結局、あ奴はユミヒトのなんなのだ。」

「え?.......言うならば.....相談役、みたいな。」

「そういう事を聞いているのではない!!」

「???」


貰える情報は貰い、リーザとの関係も崩す事は無く、無事に教会から出る事が出来た弓人は上機嫌で大通りを歩いていた。ヴィルに応える声の調子も軽い。


「まぁ良い。我の体を手に入れられる事は分かったのだ。」

「そうだな。でも、その方法は、」

「それも分かっておる。いくら強大な敵に打ち勝つ事の出来るユミヒトであっても、存在が曖昧なものを捕まえるのが難しい事くらいは理解している。」

「まとまった情報が無いのが辛いな。」


リーザの話によると、魂への肉付けの方法は知っている人がいても、それぞれ断片的な情報しか持っていないらしい。その事を思い出した弓人は少し眉間に力が入る。


「断片的、ねぇ。」

「どうした?」

「そんな、人によっては膨大な価値がある情報が、“断片的”に存在する.......何か、おかしくないか?」

「..........うむ。確かに。そういった情報は統合されるのが普通であろう。」

「ああ。それが持つ者達の協力か、金と権力のある者によるものかは別にしてな。あとは、これが一番重要で、そして厄介だ。」


弓人は一拍置く。


「リーザ。何故彼女がその事を知っているのか。一般では無い?いや、今の話に関しては世に出回るどころか、“一貫した情報が無い事”さえも知っていた。」

「...........ユミヒト、少し()いか?」

「ん?」


弓人の推理を阻んだヴィル。続けてこんなことを言う。


「もしかしたら、この疑問は、“解いてはならぬもの”なのではないか?」

「..............。」


今、弓人の頭の中には二つの思考があった。その一方は、本当は言ってはならない情報をリーザが小出しにしてくれていたのではないか、という真面目な思考で、もう一方は、もし仮にリーザが凄い存在だとしたら、その正体を明かされた時の感動が減ってしまった、という不真面目な、否、リーザからしたら、失礼でふざけた思考である。


弓人はそんな事を考えながらぶつくさと呟いていた。


「お―い。お―いユミヒト―。帰ってきてくれ。」

「......ん、ああ。大丈夫だ。」

「どうせくだらない事でも考えていたのであろう。」

「何故分かった。」


驚きではなく、ジト目を向ける弓人。


「それで、これからどうするのだ?」

「そうだな。誰かいないかな。物知りな奴。...........エルフは別な。」

「そうであるな。......エルフは別、と。」


帝都のどこかで、多分管理職であるエルフの嘆きの声が聞こえた.........気がした。


「あれ?ヴィル。」

「ん?なんだ?」


思考に耽るのも束の間、弓人が唐突にヴィルの名を呼んだ。


「ヴィルって、長生きしてるよな。」

「うむ、これ程に無く。」

「それなら、ヴィルの同類は、いないのか。」

「我の仲間達は..........」

「あ、あ~、すまない。そういう事じゃないんだ。俺が言いたいのは“他の迷宮の(あるじ)”はいないのか、って話だ。」

「ふむ、成程。」

「どうだ?」


弓人は期待を込めて聞いた。


「だがユミヒト、我の作った迷宮が他と同じとは限らぬぞ。」

「......そうだな。」

「分かるであろう?我があの迷宮を作った経緯をしっているのだから。それも作った本人の話まで聞いたのだからな。」


しかしそれはやんわりとした否定をもって応じられてしまった。しかも何故かは弓人にも分からないが、ヴィルは見えない顔でドヤ顔である。


「ん~、他の迷宮とかに魂に詳しい迷宮主とかいないのか?骸骨みたいな奴とか.......骸骨みたいな奴とか......。」

「それしか思いつかなかったのだな。」


弓人の悲しい想像力をヴィルは憐れんだ。


「いやいや、やっぱり魂と言ったら骸骨だろ。」

「誤魔化した上に、全く理解出来ぬ。」


ここにきて意見の相違が生まれてしまった両者。別に陰険な雰囲気が漂ったりはしない。


「よし決めた。」

「何をだ?」

「リーザの言う事から察するに、この帝都の人間ではヴィルに体を取り戻すのは非常に難しい。というか不可能だ。」

「ふむふむ。」

「だから、さっきも言ったが、迷宮にいる奴等に聞こう。」

「ほう......んん?」


一瞬納得しかけたヴィルが違和感に気付く。それはこの大陸の迷宮主に悲しい知らせを伴うもので.........


「つまり、近場から全ての迷宮を回る。」

「回る?それは“制圧”の間違いではないか?」

「そうとも.......言う。」


弓人にも自覚はあった様だ。


「はぁ、ユミヒトよ。そもそも迷宮主が人の言葉を理解する保障はあるのか?」

「無い。」

「何故そこで得意げな顔になるのだ......。」

「どうにかなるだろ。行くぞ。」

「むぅ。」


不満げなヴィルに対して、弓人の決意は思いのほか堅そうである。




////////////////////////////////////////




「え?また.......行くのかい?迷宮で味を占めた冒険者にありがちな行動だけど、ユミヒトにしてみたら.......迷宮、壊さないでね。」

「んな訳ねぇだろ。」


弓人達は迷宮に行く前に一度バラルの宿屋に寄っていた。それは、迷宮の情報を知りたいという理由もあったが、また次に来る時間までが長くなり、バラルが返ってくる弓人を歓迎(迎撃)する力を貯め込ませないためでもあった。


「で、夕食時でもないのにここへ来たって事は、情報が欲しいんだね。」

「話が早くて助かる。」


流石は、弓人の心を読む事に関しては群を抜くバラルである。


「それで、何が知りたいんだい?もしかして、“全部?”」

「ああ。」

「そうか。この前潜る前は、ユミヒトが多少知っていると思って話していたんだ。すまなかったね。」

「問題ない。」


あの時、迷宮の話は<龍の迷宮>についての話題に移行してしまったために弓人は他の迷宮の事を知らない。


「よかった。それじゃぁ、迷宮について話そう。」

「宜しく頼む。」

「ああ。まずは迷宮とは何か。それは“魔物”だよ。」

「え?」


バラルの講義は弓人の驚きから始まった。彼の講義はこう続く。


大前提として、迷宮は魔物である。迷宮には“核”が存在し、それが成長しながら地面を潜っていく。その内部は千差万別、構造にはあらゆる傾向があり、大きく、深い迷宮程、まるで趣向を凝らしたかの様な造形さえも見せる。地上を再現した様な階層を持つ迷宮も存在する。そして、欲深な人間に宛てたものなのか、冒険者が落としたのであろう武具に、時折魔道具化が施され宝箱を模した物の中に入って出現する事もある。


「成程ね。」

「ん?実は知ってたのかい?」

「いいや。」


バラルは決して、弓人は知っていたのではなく、そういったフィクションを読んだ事があった、とは夢にも思わないだろう。


「それで、それはどういった情報なんだ?言いたくなければいいが。」

「別に大丈夫だよ。これは常識みたいなものだしね。」

「そうなのか?ん~、ん?話は変わるが、今の話はどうやって証明されたんだ?迷宮を攻略した奴がいたのか?」


まるで迷宮の生育を実際に観察した様な話に疑問を覚えた弓人。


「ああ、それは昔、当時の魔術学園だったかな?冒険者がまだ若い迷宮を発見した情報を聞きつけて現地に調査へ向かったんだよ。そこで研究した結果が今の話。」

「つまり難易度が低い(うち)に護衛を付けて観察したのか。」

「多分そうだろうね。」


ある程度は納得した弓人。しかしバラルにはまだ話していない情報があった様で......


「あ、そうだ。これを忘れていたよ。」

「?」

「迷宮の核はね.......高く売れるらしいんだ。」

「.......へぇ、いくらくらい?」

「それがね、実際に売買された事が無いから分からないんだよ。」

「......は?」


やはり忘れる程の情報、別段驚くものでは無かった。しかし、弓人はその情報から一つの可能性を見出す。


「もしかして、成長した迷宮って、今まで攻略されて無い?」

「迷宮の核を奪われた、という意味ではね。さっきの魔術学園が調査した迷宮も、後で手が付けられなくなって、今も大きくなり続けてるらしいし。」

(それなら、やはり知識人や文献を探すよりも、実際に潜った方が早いな。むしろそれしか知る(すべ)がない。)


今までの情報を上手く咀嚼した弓人は席を立つ。


「行くのかい?」

「ああ、話してくれて、ありがとう。」

「いいさ。君が無事に帰って来てくれるなら。」

「“宣伝”ってやつがいつ始まるかなんて分からないけどな。」

「君ならどうせ、思いもよらないタイミングで“何か”を起こしてくれるんだろ?期待はしてないさ。ただ事実を言ったまで。」

「未だ来ない未来を事実、か。そういうのは俺だけにしろよ。」

「当然。」


今の会話を挨拶代りに弓人はバラルに背を向け、出口へと歩き出す。背後でバラルがやれやれと言った表情で見送るのが、確かに感じ取れた。




////////////////////////////////////////




「聞く事は聞いた。役立つ情報と言ったら無かったが。まぁいいだろう。」

「心配はしないが......本当に大丈夫か?」

「大丈夫。迷惑は.....掛けない、よ。」

「.............。」


ヴィルが心配しているのが、迷宮とその周りの環境である事はいい加減弓人も察する事が出来た様だ。


「飯を買ったらすぐに行こう。ヴィルの体が待ってるぞ!!」

「複雑な気分だ。」


弓人は通りを歩く。そして特に考えた訳でもないタイミングで屋根に跳び上がろうと足に力を入れた。しかし、


「あ。」


ある重要な事を思い出し、全身の筋肉が固まる。


「どうした?」

ボウガン(クロスボウ)............」

「?」

「新しい武器、取りに行くの、忘れてた。」


ヴィルのいた迷宮に持っていく事の出来なかった新武器。それを思い出した弓人は屋根には上らずに、


トンッ、タンッ、タンッ、トンッ


通りの建物の壁で三角跳びを繰り返す。


「待っていろ!!俺の新武器!!」

「おお!我も見てみたいぞ!!」


意外に乗り気なヴィルを片手に、ポードルの待つ武具屋へ急いだ。



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