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(旧作)大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~  作者: 顔が盗賊 / TECH
第一章 『帝都の大盗賊』
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第五十二話 「好奇心の先に」



(ここを左に、そして左に、右に、坂を下ると.......あった。)


ここは第十九階層。弓人は第十階層からここまで行き止まりの箇所を虱潰しに周っていた。初めこそは音の反響から宝箱がありそうな場所を探していたが、ある行き止まりで魔法陣の様なものがあり、弓人が近づいた直後それが爆発。その爆煙の晴れた中心部に宝箱が出現するという謎のトラップが存在したのである。それ以来、弓人は音響探索時に宝箱が存在していなくても、全ての行き止まりに訪れていたのである。


そして、その探索を続ける事九階層、弓人はこの階の最後の行き止まりに着いた。


(ここまで良いお宝は無かったな。前回の森でも見つけた(ほの)かに光る石かボロボロの短剣、何故かポーション?、謎の......お(ふだ)?の様なもの。俺にはさっぱり価値がわからない物ばかりだ。)


弓人はそうぼやく。しかし実際は魔物の毛皮や龍的な鱗などが入っていたのだが、どれも大きすぎて持ち運ぶ事を諦めたのである。


(コルバもドリーも、何かしら良い物を持っていかなくちゃいけないからな。理想としては小さくて価値の高い物が良いな。)


弓人は魔法のポーチを所有している。つまりそれなりに小さい物なら嵩張(かさば)らずに持ち運ぶ事が出来るのである。


そんな事を考えながらも、弓人はこの階の最後になる宝箱を開ける。あの爆発以外にも数々のトラップが存在したが、弓人の超人的な反射神経、否、ただ単に弓人にとってそのトラップは遅く、そして何よりその強靭な肉体が自身の体を強固に守っていた。そういった異常な事情もあり、今回の宝箱も全く警戒もせず、




()いた”。


(え?)



////////////////////////////////////////



弓人は決して反応出来なかった訳では無い。しかしそのトラップは“弓人に対し”確かに機能していて、


ビィ―――――――ガッ、ガッ、ガッ、

ガガガ、ギュ―――――ン


(おお、これは新鮮。)


独りでに開いた宝箱を中心に大きな魔法陣が描かれる。それは呑気な弓人はもちろん、この行き止まり空間を覆い隠さんばかりのもので、激しい光を発しながら大きく広がっていく。


(なんだ?少し様子が......まぁ、取り敢えず避け..........え?)


流石に不味い気配を感じ取った弓人、そこから跳び退くため脚に力を入れるが、


(体が、動かん。おいおい、俺の体はこんなに(やわ)だったか?)


今日(こんにち)まで常に人外の性能をみせていた肉体、それが今、全くと言っていい程動かないのである。しかし弓人が驚いたのはそれだけでは無く、自身の体に別の違和感を感じていた。それは経験は無かったが、日頃訓練しているものと似た感覚で、


(魔力?が吸われている?.......そうだな、吸われているな。どういう事だ?)


体が動かない事に加え、魔力までも吸収される感覚に襲われる弓人。どう足掻いても地面に吸い付いた足が動く事は無い。しかし、強大な魂がそうさせているのか、パニックにはならない弓人は脱出方法を探る。体が動かない事と魔力が吸収されている事、ここから考えられる事は、


(俺の魔力をエネルギーに、俺自身を拘束してんのか?でもこの魔力の流れ、吸われ続けるだけで止める事なんて出来ないぞ。)


弓人は毎日魔力運用の訓練を欠かしてはいなかったが、それはあくまで独学での話。魔力の元栓なるものを閉める訓練はしてこなかった。


(普通に魔力の強弱をコントロールは出来んだけどな。吸われない様にするなんて、どうしたら。)


考えている()にも魔法陣は唸りを上げ、それが発する眩い光が弓人を包まんとする。未だ弓人の体が動く気配は無い。





三十分後。


ギュ――――――ン


「(まだかなぁ。早く元の道を進みたいんだけど。)」


魔力を吸われ続けて半刻、遂にこの状況に慣れてしまった弓人は実に呑気に呟く。すると、今までは心の中だけでの呟きを口に出したためか、その願いは叶った様で、


ギュ―――ッガガガッガガッガッガガガッ


先程を凌駕する閃光とも言うべき光を放ち、そして、




弓人は、消えた。


そう、彼の願いは望まない形で叶ったのである。



////////////////////////////////////////



キュイィィィィィンッ


トンッ

(っと。............ここで「ぶへっ」とか言いながら地面に激突するのが定石なんだろうが、しかし俺には叶わない。それがこの体の宿命。)


空中に出現したのだろうか、弓人はその魔法陣からこの不明の場所に吐き出された。しかし、今までの階層とはその装いは全く違い、


(壁が熱いな。床も熱.......あ。)


弓人が足元を見下ろすと、そこには“十本の指”が。


(靴が、無い。いや、溶けたのか?)


弓人は存在を確かめるかの様に足の指をピコピコ動かす。結果、全ての指は健在であった。しかし、それに喜ぶのも束の間、


ジジジジジジィィィ


(うわっ、鎧も駄目か。)


胸部から背中の上部を守っている鎧の金属の部分が赤熱し始めた。靴が無くなった事には大して感慨の無かった弓人であったが、こと武具に関しては話が違った。


弓人は考える間も無く精神を集中させる。体の奥の方、“先ほど盛大に吸引された”場所に。


――――――――――――――


音にならない音が弓人の体を包む。程なくして、その弓人を包む膜は二十センチ程の厚さになった。


弓人が“その”行為を行った直後、鎧の赤熱は鎮まり、元の重厚な暗い色の金属が顔をのぞかせた。そして“その”という行為は先程嫌というほど“行わせられた事”で、


(出来たっ。やっぱり魔力と言ったらこれだよな。)


弓人は今、魔力を纏っていた。そしてそれは光を曲げ、陽炎の様に、しかしはっきりと弓人の体を包んでいた。


(取り敢えず、なんとかなったな。)


この空間での一番の問題を一先ず解決した弓人は、改めて周囲を見渡す。壁も床も全てが赤いのは、それら全てが高温で赤熱していたからのようだ。そして、落ち着いてみて目で見て、一番目立つものがすぐそばにあった。しかしそれは、自身から近いと錯覚させる程の異常なもので、


(でっか――――い扉だな。うわっ、帝都の外壁と同じ高さとか。)


そのスケールに呆れかえる程の巨大な門。それが弓人の前に“堂々と”鎮座していた。その門には装飾は無く、しかし金属さえ赤熱する温度の中、暗い色ながら光沢を放っている様に見えた。


その高温のため、周りの景色がユラユラと揺らぐ中、弓人は吸い込まれる様にその門へ向かう。決して興味本位では無い。ただただ、そこへ行かなくてはいけないという、一種の脅迫を心に受け、その扉に手を掛ける。そして、


ゴ.........ゴ......ゴ...ゴ、ゴ、ゴゴゴゴゴゴ


一度力を入れると、その巨大な扉はまるで意思を持つかのように弓人を迎え入れた。否、まるで主人の下に賓客を持て成すかのように。


弓人はその空間へ入る。心は平常、しかし、圧迫される感覚は全く消えず、その足を進める。


(これが、地獄か。)


弓人の入ったその空間は、門の付近を除き、全てが赤く輝く溶岩で埋め尽くされ、壁の高い所からは、ありとあらゆる場所から溶岩が吹き出し、それらは大きな滝を成していた。


正に地獄としか言いようのない空間に足を踏み入れてしまった弓人。しかし、それはまだこの地獄の序章に過ぎず、


ゴポッ、ズシンッ、

ズズズゾゾゾゾゾゾゾッ


ドンッッッッッッッッ


これからの地獄を体現するような“者”が、



今、姿を現した。



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