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(旧作)大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~  作者: 顔が盗賊 / TECH
第一章 『帝都の大盗賊』
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第五話 「第一店主」


城からの脱出に成功した弓人だが、これから何をしたらいいのか悩んでしまう。


城下に降りてみると大通りがあって、そこには商店や露店が並んでいる。しかし科学レベルはお粗末としか言いようがない。全て建物は木か石でできているし、透明度の高いガラスが貼ってある窓なんて稀である。あるにはあるが、ほとんどは開閉式の木の板を窓に使っている。


(ますます地球ではないな。少なくとも現代の科学技術が存在しない。)


ふと弓人が露店を眺めていると、りんごらしき果物に目が留まった。


(そういわれてみれば全然飯食ってないな...)


こちらの世界の人間の新陳代謝がどのようなものであるかはわからないが、少なくとも人は食事をし、なにより弓人自身腹が減っている。


弓人は露店に近づいて店番をしているおっさんに言う。そのりんごそっくりの果物を注文するために。


「これ、1つくれ。」


(我ながらなんと無愛想なんだろうか。この体になってから鏡を見たことがないがきっとこのぶっきらぼうな物言いを同じぐらい無愛想な顔をしていることだろう。しかし、鏡なんてそんじょそこらにあるのか?科学レベルから察するに貴族的なにかは持っているだろうが。)


弓人は長い事思案していた事に気付き慌てて前を見る。しかし、


「・・・・・・・・・」


(え? 無視? そりゃなんで?)


「これ1つくれ。」

「・・・・・・・」


「こ!れ!1つくれ!!」

「・・・・・おぉ!? なんでい、いきなり現れやがって。」

(イラッ)


「...っ......1つ35カッシュ、3つで100カッシュだ。あんちゃん。」


(カッシュ。それがこちらの、もしくはこの国の通貨か。さて、腰についてる巾着の中を見てみてもわからんぞ。金、銀、銅、そしてそれぞれ少し違う大きさのものまである。

そりあえず小さい銀貨を渡してみるか。)


弓人は小さい方の銀貨を渡す。


「ずいぶんと大きいので払うな。」


(はてそうなのか?こと巾着の中ではそこまでグレードは高くないんだが。)


「ほら銅貨9枚だ。」

(1つしか頼まなかったのだが.........)


おっさんは弓人にりんごを3つとお釣りを渡してきた。まぁいいと2つは背中のバックにでも入れる。りんごをしまっていると何かを察したのかおっさんが言う。


「おめぇこの国にきたばかりか?」

「え、ええ、そんなところです。でもなぜ?」


弓人は怪訝な顔で問う。


「そりゃぁ何か小銭出すのもしまうのもなんかぎこちなかったし、なにしろここいらの服装じゃぁねぇな。それよりおめぇさん自分で気づいてるとは思うが.........」


(ん?なんだ?)


おっさんの目がこちらを見通す。濃くて深い茶色の瞳だ。



「その“黒髪”に“金色の瞳”。この帝都どころか、ここを通る旅人でも見たことがねぇ。」



////////////////////////////////////////



「おめぇさん、まさか、自分の容姿がわからねえのか?」

「そりゃぁ鏡なんてないし………」


露店の店番の言葉に弓人は仕方なく、そして苦し紛れの返答をする。


「冒険者組合や教会なら小さな鏡くらいあるんだがな。」

「ぐぅっ」

「............まぁいい。冒険者に余計な詮索は野暮ってもんだ。もしくはおめぇさんがやんごとなき身分だったりしたら嫌だしな。」


(いや、だったら聞くなよ。)


そんなことを思いながらも確かに自分の事すらわからない状況はまずいと思ったのか弓人は思案する。この容姿が迫害の対象であったり、指名手配なんてされていたら、今この時点で無防備すぎるからだ。認識を阻害する能力?が効いているから良いものの目立ちすぎたり、こんな能力があるのだから“索敵”の効果がある能力もあるのだろう。


(しかしこのおっさん、何か変に引き際がわかっているような… いやこういうのでも下手に信用してはいけないな。)


そう、だいたいこのてのお話で相手を過剰に信用すると後から裏切りに遭う。もしくは面倒事に巻き込まれるのは必定。なにより城に浸入している時点でこの体は犯罪者のものである可能性が高い。そして一番はこのおっさん、城壁に比較的近いこの露店で商人(あきんど)らしからぬ体幹、そしてその瞳を異常までにギラギラさせているのだから。


(金を払って、お釣りも受け取った。さっさとここを離れよう。)


「おめぇさん、本当にこのあたりの事どころか常識にも疎そうだ。だから.........」


スッ.........サササササ


「この俺が...................え?」



////////////////////////////////////////


――Side:露店の店番??――



「おい!まだ話は......ってどこいった?」


大通りは賑っているとはいえ人々は商いをしている場所は出来るだけ空間が空くように歩いている。それよりもいきなり目の前から一瞬で“掻き消える”なんてことはあり得ない。何より彼には大きな秘密があった。


(チッ、ってぇとぉ、今回は大物を逃がしちまったみたいだなぁ。)


彼にはある任務があった。こうして城にも冒険者組合にも近いここで露店を開き日々行きかう者達を見極めているのだ。そして彼にはある能力があった。しかし…


(俺の探知に引っかからないだとぉ?直接面と向かって話したんだ。この俺が気配と魔力どちらも感知できないなんてありえねぇ!!)


そう彼こそ弓人が真っ先に恐れた(たぐい)の人間、索敵・探知系の魔法使いだった。


(しかし奴はこの地にきて日が短いか、そうでなければ特殊な事情があるに違いねぇ。なによりも自分が無知な事に警戒していやがった。)


しばし考え込む。


(今考えりゃここに現れたところからおかしかった。俺は決して気を抜いていたわけじゃねぇのに、いきなり目の前に現れやがった。)


考えても弓人の正体に辿りつかない。そう、弓人も知らないその正体(・・)に辿りつける訳がないのだが.........



「おめぇはいったいなんなんだ?」




「はい?私ですか?」


(っ..........)


気が付けば出ていた声に露店に来ていた客が反応する。つられて彼も驚いたわけだが、


「いらっしゃい!全部さっき仕入れた新鮮ものだよ!さぁ見ていって!」


すぐさま店主の顔にもどり、客を捌いていく。


(あいつは逃がしちゃなんねぇ)


そんな店主の囁きが、大通りの群集に消えていった。



////////////////////////////////////////



先程の露店から離れて30分程…


(ふう、なんとか撒いたな)


実際にはあのおっさんは追ってきていない。それでも弓人は何か得体の知れないものに追われていた気がしたのだ。その感覚はあのおっさんから同心円状に広がったと思ったら一斉にこちらに向かってきたように感じた。


(明らかにこちらを探知しようとしていたな。おーコワイコワイ。)


まさか初めての会話があんな危険人物(多分自分みたいなのに対いて限定)だったとは誠に運がない。


(とりあえず先程感じた感覚は途切れた。どこか店に入るとするか......それよりも腹が減ったな。)


こっちに来てからりんごしか食べていないのだから当たり前である。


(食事というよりはどこかで休みたい。精神も体も何ともないが.........流石にこんなにも緊張しっぱなしだったら休んだ方がいいだろう。)


そう、次の行先が決まった。


食事が出来て休める店、「宿屋」だ。








―――――榊 弓人―――――


服装:不明

武具:ナイフ×1

防具:革の軽装(仮称)

装備:リュック×1

金銭:価値不明

持ち物:ロープ、糸、その他使途不明


――――――――――――――


表記は今後“多量”に増えます。

表示は変更があった時と、その他区切りの良いところで行います。






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