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(旧作)大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~  作者: 顔が盗賊 / TECH
第一章 『帝都の大盗賊』
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第四十一話 「森のテンプレ三銃士(1/3)」


要塞都市バイスの門から一瞬で去った弓人はそのまま都市から500メートル離れた川の堤防へ来ていた。暗く、流れの比較的速い川は月の明かりを鈍く反射していた。この川には大きな石が水面から顔を出していたりはせず、浅い場所があるとは思えない程の深淵を水面に移していた。


(わ、これは荷物を濡らさずに渡る自信は無いぞ。)


流れが速く、浅瀬の無い川。橋を使わないという選択肢を封じるには最適な川である。


(だからこその橋と要塞か。)


防衛の要所としては適切な配置であり、敵の侵入を防ぐことができるであろう。


(まぁ行くしかないんだけどな。こっちで組合証明を読み取られても困るし、別に義理立てはしてないが、早急にとのお達しだからな。何より早く帰りたくもある。)


最終的に面倒という理由で回避されてしまった要塞。設計者があの世にいれば、さぞ悲しまれていることだろう。そんな悲壮をも弓人は蹴とばして先へ進むわけであるが。


弓人はしばし考える。数分後、


(うん、そうだな。俺の中にいる。大魔道士様の御力を御貸し願おうではないか。)


弓人は立ちあがり川へ向かう。荷物を一つにまとめたり、濡らしたくない物を手に持って掲げたりはしない。そのままただ歩いて川に入る。そして、


.........___ .........___ .........___ .........___ .........___


音の無い音が川の水面を叩く。なんと弓人は荒々しい水面に立っていた(・・・・・)


(おお、流石だな俺の体。バランスもばっちりだ。)


弓人は足から出した魔力を薄く水面に沿って広げるようなイメージで伸ばし、それの厚みを少し増して、浮力と安定を得ていた。弓人からみれば微々たるものだが、あのバラルの宿屋で初めて魔力を引き出した、あの騒ぎの時よりはそれを消費しているのが分かる。その時は魔力をただ発散させている為に事態が悪化したとも言えるが、それでも現在の消費魔力は大きい。メッセンジャーや宅配便の様な業種の人間でここまでの魔法を使える者がいないことは弓人にも容易に想像がついた。そこまでの魔力を持っていれば魔術学校に通ってお抱え魔法使いになった方が将来安泰の筈である。


.........___ .........___ .........___ .........___


弓人は順調に水面を進む。ここで大蛇や大きいモンスターでも出てくれば劇的だったのであるが、そんな幸運が舞い込むわけも無く、水面歩きは尚も続く。


.........___ .........___ .........___ .........___トットットットッ


遂に対岸に着いた弓人。特に濡れたヶ所は無く、川を自力で渡ったと言っても誰も信じないであろう。弓人はそのまま対岸の要塞を見やる。


(確かに、ここから見ると攻める気を無くすな。)


川の向こうには高くそびえる壁を備えた、堅牢な要塞があった。それに加えて橋まで完全に押さえているのである。攻めろと命令させる敵の方が不憫で仕方がない。弓人は一通り眺めた後、踵を返して街道を目指す。ここを進めば目的の森である。


軽快だが音の無い走りで薄暗い草原を進む。森までの道程に弓人を阻むものはもう無い。



////////////////////////////////////////



(あれが森か、随分を深そうだな。)


走り続けて30分、森が随分と近づいてきた。日が昇るのはまだまだ先であるが、弓人の目にはしっかりと森の輪郭、否、浅い所まで細かく見る事ができた。


(別に魔物が外を警戒しているとか、そういう事は無さそうだな。さて、まだ太陽は拝めないが........折角要塞をスルー出来たんだ。この暗視装置をフルに使って森を攻め落とそうじゃないか。)


どこかで、多分南の方で『あれ?』という声が聞こえたのは気のせいだろうか。それは商会長感のある声であったが。


弓人は今回もそういった声は軽く蹴とばし、森目掛けて突進する。


(いざ参らん、とはいかず、)


ガガガ、ガガッ


ただの地面の上を然もスケートリンクのように急ブレーキをかける。地面に深い溝を残した弓人は目の前の森を見る。先は深く、暗視を使ってもその奥を探る事は出来ない。ましてや今は深夜、こんな時間に入ろうとは普通は思わないのだが、


(ん~、でもなぁ、ピルンの草の手がかりがこの匂いだけだしな。)


弓人は巾着袋から小瓶を取り出す。今回の依頼は本人も忘れがちだが、ある薬の材料になる『ピルンの草』の採取である。その為のヒントが小瓶の中に入っている失敗作の匂いだけとは、弓人でなければ達成できなかったであろう。なぜなら、


(まぁ、嗅げばいい話だからな。)


そうなのである。今、森の中は暗闇、しかし弓人は暗視が使える上に鼻がとても利く。犬でも嗅ぎながら目標の位置を探るのに、弓人は一回嗅げば風向き、空間の構造、湿気などをすぐさま考慮し、正確な位置を瞬時に割り出してしまうのである。麻薬探知|犬(人)になって地域に一人置いておけばその街の麻薬は一掃できそうである。


そんな嗅覚抜群な弓人は取り出した小瓶を開けて、まずは手で扇いで匂いを嗅ぐ。有害なものが無いと何故か(・・・)判った弓人はそのまま鼻を小瓶に近づけ中の空気を吸う。そして蓋をしてまた仕舞う。


(よし、完璧に覚えた。あとは探すだけだ。)


弓人は躊躇わず森へ足を踏み入れた。



////////////////////////////////////////



スンスン


(ん?なんか臭いな。目的の草ではないし。目茶苦茶臭い。)


普段から犬以上の嗅覚を発動させている訳ではない弓人。しかしながら今は探索中であり、その能力をフルに使っているためあらゆる匂いの情報が脳の入って来るのである。そんな中弓人は目的とは別のすごく不快な臭いを感知した。それは生き物の生臭さや洗っていない皮脂の匂いの様で、


(まさかな。いや、きちっと聞いた訳ではないが魔物があのガーデンウルフだけの訳がない。そうすると、)


弓人は隠密を発動させ、森の中を進む。発動といっても本人は至っては気配を消している認識でしかないが、それでもそれを消すことが出来るという事だけは認識している。


弓人は匂いのする位置に足を進めると、そこには、


「「「Zzz、Zzz、Zzz、Zzz」」」

「グガッ、......Zzz、Zzz」


おそらく女の怨敵、ゴブリン顔のゴブリンの姿があった。しかし暗闇のため肌の色はうっすらと緑であるとしか判らないが。彼らは大木の根の下を掘り下げて根城にしているようだ。入口には他の細い根をカーテンの様にしているが弓人前では効果は無く、当然のように内部が視認できた。本人は視認したくなかったようだが、


(骨骨骨、まだ腐りかけも.........。性別はもう分からないが、巣に持ち帰るんだ、当然女性だろうな。)


巣の中には骨やよく判らないものが雑多に置かれており、その隙間を敷き詰めるようにゴブリン達が寝ていた。


その光景を見て弓人は考える。それは正義を取るか、自分の中に眠る“盗賊”を取るかであり、


(『女の敵を討つ!』にするか、『ぐへへ、いいお宝がありそうじゃわい』にするか、ん~~迷うな。)


蓋を開けてみれば結果は全く変わりそうにない、実にくだらない迷いに入っていた弓人。結局どっちでもいいと判断したようで弓人は巣の中へお邪魔する。


当然息は止めて。


(お邪魔します。)


心の中で呟き、根のカーテンを開けて中へ。どのゴブリンも気が付く事無く侵入を果たした。その時根を動かす音がしなかったことに弓人は疑問を持たなかったが。


中に入ると華麗なステップで奥の方へ、そのまま集積所と思しき場所に着く。そして、


(まずは、そうだな。合掌。)


御遺体や御遺骨に手を合わせ、(こうべ)を下げる。


1分後(あたま)を上げた弓人は周囲を見渡す。金銀財宝とはいかないが、冒険者や襲った人から奪ったのであろう品物や道具が散乱している。しばし漁ってみると、


(ナイフか、よし、これは予備として。ん?手紙か。こっちは.........)


今回の成果は以下の通りである。


ナイフ1つ、手紙1通、針20本、指輪4つ、手のひらサイズの魔道具照明1つ、糸数本、小さなストップウォッチの様な何か。加えて、


(?なんだこれ、石?でも少し透き通っているな。小さいし、持っていくか。)


大豆程の大きさも無い半透明な石。しかし何故か放っておけなかった弓人はそれも仕舞う。


(後は、はぁ、こいつらをどうするかだが........)


弓人はゴブリン達の間を縫う様に何かを撒きながら(・・・・・・・・)外へ、ここで呼吸を再開する。そして上を見上げ、


シュンッ、タッ

(バキッ、バキッ)


大木の枝に乗って音がしないように手で押さえながら近くの枝を折り始めた。折られた枝は弓人によってまだ無事な枝の方に投げられ、その上に集まった。そして大量の枝を抱えるようにして、


トンッ


地面に降りたった。つまり自分よりも大きな枝を数多く抱えながら無音で下りたのである。それを何事も無かったかの様に枝を先程のゴブリンの巣に入口に集める。


(雨でも降ったのか、いや、最近は降ってないな。この枝が水分を多く含んでいるんだろう。)


湿った枝で蓋をされたゴブンリンの巣、そこへ、


カチッ


地面に落ちていた枯葉と小さな枝に先ほどのストップウォッチの様な物で火を点け、大きな枝の間から巣の中に放り込んだ。つまり、


ボゥッ、ブォォォォァァァ


先程撒いたアルコール臭のする液体に引火したのか、ゴブリンの巣の中が明るくなる。塞いだ入口の隙間から漏れ出るのは光と、


「グギィァアアア」

「ゴゴググゥウウ」

「...........ピギィ」


彼らの悲鳴が、焼き尽くす炎と共に辺りに響く。しかし響いていると感じているのは弓人だけで、その悲鳴は渦巻く炎の音にかき消されている。湿った枝で蓋をされた巣の中は地獄と称するのが相応しいだろう。


(まぁ、弔い合戦という訳ではないが.........安らかに、それだけだ。)


そう言って、弓人は森の奥へ入っていく。


一応、コルバの依頼のために。






―――――榊 弓人―――――


服装:不明

武具:弓×1、ナイフ×2(NEW)、仕込みナイフ×7

防具:革の軽装(仮称)

装備:矢のホルダー×2、リュック×1

金銭:19,757,850

持ち物:ロープ、糸、発光するアクセサリー、ライター、手紙1通、針20本、指輪4つ、手のひらサイズの魔道具照明1つ、半透明の石


――――――――――――――


表記は今後“多量”に増えます。




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