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(旧作)大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~  作者: 顔が盗賊 / TECH
第一章 『帝都の大盗賊』
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第二十八話 「修道女」

「少し準備をするから支部の外で待っていて欲しい。」

「ん、ああ。」


行先は決まった、とばかりに準備を始めるドリー。弓人はそんな自身満々な彼の雰囲気に押され執務室の外へ。3階分の階段を降り、ロビーへ。カウンターの内側が見えてくると。


「ユミヒトさん。お話は終わったのですか。」


今弓人が一番疑っている受付嬢が話しかけてくる。やはりこの弓人に対する愛想が支部のためのものだったらこと(・・)である。どちらにせよ無駄な傷を負いたくない弓人は素っ気ない返事を返す。


「ああ。」


それを見た受付嬢は少しだけ悲しそうな顔をする。その顔を見た弓人はやはり非情だった。


(俺は騙されん。)


そう心で宣言しながらカウンターを抜ける。その受付嬢への態度に休憩していた冒険者から若干棘のある視線が送られてきたが、それらを跳ね返して扉のない入口を出る。


外は清清しい程の青空といつも通りの賑わいで溢れていた。いつまで待てばいいのか聞いていなかった弓人は支部の外壁へ背中を預け腕を組む。弓は予め体の横にまわしてある。そうやって休んでいようとしたがすぐに近くに自分に視線を向けている気配に気が付く。この視線の持ち主は当然、


「やあ、おまたせ。」


支部長ドリーが怪しげな黒いローブとフードを被って現れた。


「............あやしい。」

「そうかい?」


二人は一路教会へ向かう。大通りの賑わいに似合わない、落ち着いた足取りで。




////////////////////////////////////////



「思ったのだが、」

「ん?なんだい?」


弓人は先程の会話の中で思った事を言う。


「魂と一番近づくと言ったが、それは存在を証明されているのか?」

「んー、いや、されていないね。」


あっけらかんと言うドリーに力の抜けた顔をする弓人。しかしドリーは話を続け、


「しかしこれから教会で行う儀式を受けた者は皆魂の存在を信じるらしいよ。僕もその一人だしね。」

「そう、なのか。」

「証明はされていないけど、信じる程には存在を感じることが出来る。それが“魂”さ。」


二人がこんな会話を続けていると、


「ほら、見えてきたね。あそこが教会だよ。」


すると見えてきたのはこれぞ教会、と言わんばかりの上に尖った屋根がいくつもある建物である。二人はここまで20分程歩いた。大通りを南門にひたすら行くのではなく、何度か横の通りに入って。


「ここに来るのも久しぶりだなあ。」


ドリーの能天気な声を聞きながら二人は教会の入り口へ向かう。枠が金属で補強してある木製の重そうな扉だ。それをドリーは3回のノックの後開けようとする。すると、


「いや、そっち(・・・)は開けない方がいい。」

「え?」


弓人が言う。ドリーからしたらおかしなことだが。ドリーは既に手をかけた扉を押し開くと.........


ッブゥワォンッ


「ぐっ」

「おっと。」


ギンッ


突如薙刀のような武器が振り下ろされてきた。弓人はそれを予知していたかのようにドリーの襟首を引っ張り、それを回避させる。直後武器が地面にぶつかった音が教会の中に響いた。


「..........。」


武器を持つ人物に批難の目を向ける弓人。その目にはあの時ドリーを震え上がらせたものよりも険が入っていた。それを受けた犯人はというと、


シュッ


なんと振り下ろした薙刀を上に振り上げてきたではないか。弓人は何気ないステップでそれを避ける。しかし振り上げた薙刀はまたもや弓人を斬らんと迫って来た。



ほんの、ほんの一つの動作。弓人は塩を一つまみするかの様に薙刀の刃を親指と人差し指で(つか)んだ。否、()まんだ。


「っ!?.........ひぃっ。」


弓人は薙刀の先端から柄の方へ、そして今自分に武器を向けている無礼者に目を向ける。すると、


(お、おや?)


そこには美しい金髪を腰まで下ろし、修道服を女性の部分で大きく盛り上げた、これまた弓人()ストライクの麗人と呼ぶが相応しい美女がいた。


(あ、俺堕ちた。陥落ですわ。)



これが正体不明の子供<弓人>と教会の修道女<リーザ>との出会いであった。





(しかしなに一つ、感動的ではないんだが........)


相手の容姿にとても満足ではあったが、もう少しいい出会い方があったのではないかと思う弓人であった。


////////////////////////////////////////



「ま、ま、誠に申し訳ありませんでしたっ。」


折れるのではないか?と思う程に頭を深く下げ、弓人に謝罪する修道女。それを見た彼は。


「まぁ、誰も危険な目には遭ってないんだ。気にするな。」

「.........え?」


ドリーの驚きと若干の批難の視線を軽く蹴とばし弓人は続ける。そう、この程度彼にとって危険の内に入らないのである。


「今日はドリーの誘いで来た。」

「(支部長様をそんな呼び.........)は、はい、そうで御座いましたか。」


(うつむ)き申し訳なさそうに瞳を右往左往させながら答える修道女。その仕草だけで危うく飛び掛かりそうになる弓人は必至に自分を抑える。


「ドリー、ここからは頼む。」

「え?ああ。この子は冒険者ユミヒト。()ての通り少し特殊な事情があってね、教会の力を借りたいと思ったのさ。」

「ええ、はい。いつでも、ど、どんな事も承っております。」


(え?どんな事も?)


先の騒動から混乱が抜けていないのか修道女との話が進まない。仕方なくドリーは強引に話を進める。


「この子を自身の魂に近づけてやって欲しいんだ。」

「ええ、可能で御座います。はい、いつでも。」

「.........。」


少しも混乱から抜けそうにない修道女。こんな状態何か(まじな)いでもされたらたまったものではない弓人は少し話題を変えるために言う。


「その前に聞きたいことがある。お前は何故いきなり襲ってきたんだ?」


ズバリとした質問にたじろぐ修道女。落ち着かせるためでもあった話題変えだったが完全に失敗だったようだが、


「それは、何か恐ろしいものを感じ取ったからです.........。はい。」

「恐ろしいもの?」


弓人はあの『反魔晶』破壊の騒ぎの教訓から、魔力運用の訓練は欠かしていない。魔力をどのように使えば周りの魔道具に影響が無いかは、バラルの宿屋で訓練済みである。

何度かロビーの照明が光り輝いていたらしいが...........。


「まさか魔力を感じ取ったのか?」

「え?、い、いえ、ただ、強大な“何か”が迫ってきたように感じまして。」


申し訳なさそうに言う修道女。何か察したのか首を捻りつつ考え込むドリー。なんとなく理由の分かった弓人。


(俺の魂を感じ取ったのか?いや“俺の”が強いとも限らないが.........。)


黙り込んでしまう一同。しかしそこへドリーが一言投げかける。


「他の修道女からは何か聞いているかい?」

「それが.........三週間程前より、原因不明の体調不良で、あまり.........。」

「ここへ来ていないと?」

「はい、皆宿舎や家にこもっている様です。それも何かに怯えたように。」


この会話に何か引っかかった弓人。


(ん?三週間前?俺があの祭壇で目を覚ますよりも前だな。)


「三週間前というのは確かか?」

「はい。あ、いえそれよりも少し前だったと思います。」


魂の事など忘れて話し込む三人。自分も忘れていたがやはり一番頭のまわるドリーがここへきた目的へと話を戻す。


「まあとりあえず、だ。このユミヒト君に魂の存在を感じさせやって欲しい。」

「ええ、はい。分かりました。こちらへどうぞ。」


三人は入口とは反対の方向に歩いて行く。先程修道女に襲われてよく見ていなかった弓人だが、見ればこの建物の内部は外見と(たが)わず荘厳で神聖な雰囲気を纏っている。そのまま前の世界の教会である。


「この先のお客様用の部屋にベッドが御座います。そこで執り行いましょう。」


礼拝堂の奥にある扉を開ける。すると短い廊下と突き当りに階段があり、三人はその階段へ。角張った螺旋を昇っていき一階と同じような廊下が見える。修道女がその廊下にある扉の一つを開ける。中にはホテルの一室と言っていい程の見事な一部屋であった。ほんの少し部屋を見て周りたいと思った弓人であったが、本来の目的ではないので自重した。


「さあ、こちらへどうぞ。」


修道女についていくとそこにはベッドがあり、そこに弓人を案内する。


フカァ


ベッドに腰掛け靴を脱ぐ。そのまま仰向けに寝転んだ。


「それでは力を抜いて下さい。魔法をかけるわけでは御座いません。ただ貴方の魂を少し現世に浮上させます。」


そう言って弓人の額と胸の上に手のひらをかざす修道女。


「それでは始めます。」



(あ、こんな真面目な声出るんだ。)


というくだらないことを考えながら弓人は意識が少しずつ遠のいていく。



視界全体が明るくなり始め、終いには全てが白で塗りつぶされた。



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