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(旧作)大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~  作者: 顔が盗賊 / TECH
第一章 『帝都の大盗賊』
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第二十五話 「表の日常」


弓職人ポードルから生産系魔法の存在を示唆された弓人は興奮しすぎて変な返事を返してしまった。弓人はポードルが“少々覚えがある”といったところに、謙遜からの発言だと特に思うところは無かったが、


「ああ、少々とは、ここで使うべきではなかったですな。ご安心下さいですな。少なくともこの帝都で私を越える弓職人はいないのですな。」


ポードルは客に渡す武器を“少々かじっただけの魔法”で作ったと思われたくなかったようで、安心させるために弁明してきた。


「ああ、大丈夫だ。腕のことは何より“この”弓が証明している。」


弓人は背中からポードルから貰い受けた弓を出してみせる。12、3歳の体格に合った小ぶりな弓は、一度矢を番えれば魔物を滅却する兵器に変わる。それを作り上げたものを一体どうしたら疑うことができるだろうか。弓人のポードル指数は常に最高である。


「急がなくていい。最高の弓を作ってくれ。」

「そうしますかな。いつだってお客様には最高の状態で弓をお渡ししますかな。」

「ああ、大いに期待してる。」


少し傲慢な態度であったかと若干後悔しながら店を出る弓人であった。


////////////////////////////////////////



店を出た弓人は特に行くあてもないらしく、ふらふらと組合支部へ向かった。いつもの賑わいを見せる大通りを縫うように進み、最近お馴染みになった4階建てを視界にとらえる。大通りに口を開く扉の無い入口をくぐり中へ。すると、これも最近恒例と化した『ああ、あの坊やか』というニュアンスの視線がロビーのあちこちから突き刺さる。そんな視線受けながらいつもの受付へ向かおうとすると..........


「おお、久しぶりだなぁ。」


バラルの宿屋で出会った、あのランクC冒険者<ガルド>だった。久しぶりの再会であったが、弓人は支部内での口調とどう折り合いを付けようか迷っていた。そんな弓人をやはり無口と思ったのか、


「ああ、いいんだいいんだ。おめぇさんと会えただけで俺はうれしい。」

(いったいなんのことだ?)

「この前はすまなかったなぁ。俺の雇い主が仕事を持ってきてなぁ、そっちに行ってたんだよ。おめぇさんが組合に来た時にいてやれりゃぁよかったんだが。」

(いや別に。)

「まぁ、それは俺の落ち度だ。」


少しだけ申し訳なさそうな表情をするガルド。しかしすぐさまその表情を変え、


「それにしてもおめぇ、大した活躍だったんゃねぇか。南の大商隊の救援を成功させたって聞いたぜ。」

(!?、その情報は普通に出回ってるのか?)


一番知られて欲しくなかった情報が(ちまた)に流れているかもしれない現状に弓人は内心頭を抱える。これがただの噂を聞いたガルドの憶測であるのを願うように弓人は聞く。


「それは、誰から聞いたんだ?。」

「っ!?、お、おお。なんか南外縁の支部の方に顔を出した時にな。小さいなりの子供にしか見えない奴、が、ガーデンウルフをこれでもか、と切り刻んでいたって。周り、の奴は信じちゃいな、かったが、俺は、おま、えの事を知っていたしな.........。」


急に弓人に対して言葉を少々丁寧に使い始めたガルド。様子もおかしいようにみえる。それもそのはず、弓人はこの望まない状況に自覚のないまま周囲に威圧を振りまいていたのだから。それも相当高位の冒険者や格式高い貴族が放つものより重たい威圧を。しかし自分のこと特定はされていないと知った弓人は内心ほっとし、それと同時の周囲への圧力を下げた。


「「「(......ふぅ)」」」


周りから同じ種類のほっとした時の吐息が聞こえる。こちらを遠巻きに見る視線に弓人も気が付いたのか、


(え?あ、まさか俺?)


自覚はやはり全くなかったようで自分に飛んでくる視線に申し訳なさそうに小さくなる。そのギャップに眉が下がり口角が緩やかに上がる者もいた。またおかしなファンが増えそうな嫌な予感を感じ取った弓人は仕切り直すように言う。


「ん、んんっ。まぁとにかく、確かに救援にはいった。しかしそこまで活躍したわけではない。ガーデンウルフはすでに他の冒険者がほとんど討伐していたんだ。どうせ自分達が手も足もでなかった戦を変な噂でうやむやにしようとする、そういった下らないものだろう。」


長い文をすらすら話した弓人、この世界に来てからの快挙である。畳み掛けるように言われたガルドはただただ頷く。ランクC冒険者が見事に形無しである。


「そ、そうか。まぁ確かにその体じゃぁそこまで戦えないもんな。」

「当然だ。」


無力であることを()も当然のように言う弓人。自分の強さではなく弱さをアピールするとはファンタジー的冒険者にあるまじき暴挙であるが気にしない。弓人のねらいはただ『秘密を持っていたい』、ここに尽きるのだから。


上手くガルドを丸めこんだ弓人はガルドに手だけで軽くお別れの挨拶をして、本来の目的地である受付へと向かう。今日は表の依頼の達成報告にきたのである。


「お疲れ様です。ユミヒトさん。」

「ああ、そっちもな。今日も達成報告に来た。」

「承ります。依頼書を。」


達成証明の印の入った依頼書を見せる。すると軽く一礼した受付嬢は背後の棚を一つ開けて小さな袋を出す。それを弓人の待つカウンターに持っていき、


「こちらが今回の報酬になります。お受け取り下さい。」

「ああ。また来る。」


報酬を受け取った弓人は踵を返し、出口へ向かう。その時.........


「そこのガキちょっと待「まぁまぁやめとけって。」(ゴッ)」

「ああ?何言って(ゴスッ)...........」


二人組の男が弓人に突っかかろうとしたのだろう。ポケットに手を入れ顎を前に突出し、これぞチンピラスタイルで来たその者達は近くの冒険者に無力化された。テンプレをそこまで望まない弓人は有り難くはあったが少し疑問に思う。普通なら当人達の問題であって周りは関与しないのが世の常であるはずだと。しかし、チンピラを無力化した冒険者の顔を見て納得する弓人。


(ああ、こいつらが死なないように“保護”したのか。)


「悪いな。」と今にも聞こえてきそうなその表情から理解する弓人。面倒事を止めてくれた事に一応感謝し、軽く会釈してから支部を出る。


これから始まるは、当然、



裏の依頼、






狩りの時間である。





―――――榊 弓人―――――


服装:不明

武具:弓×1、ナイフ×1

防具:革の軽装(仮称)

装備:矢のホルダー×1、リュック×1

金銭:9,757,850

持ち物:ロープ、糸、その他使途不明


――――――――――――――


表記は今後“多量”に増えます。

表示は変更があった時と、その他区切りの良いところで行います。





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