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Desperate Girls  作者: 白川脩
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第73話


第73話

"淡い希望"


「…え?」


謎の生物の右腕は、玲奈の頭に当たる寸前で止まった。


何があったのかと思いながら、玲奈が辺りを見渡してみる。


すると、倒れている明美の側に、デザートイーグルを構えている晴香の姿を見つけた。


「赤城さん…!」


「玲奈ちゃん!風香を連れて逃げて!」


デザートイーグルの重い反動に怯みながら、晴香は必死に謎の生物を食い止める。


しかし、怯んだのはさっきだけで、謎の生物は晴香の居る方向へ体を向け、荒々しい足取りで歩きは始めた。


晴香は発砲しながら少しずつ後退し、玲奈達との距離を離していく。


遠くなった所で、玲奈達の元に結衣が駆けつけてきた。


「玲奈!大丈夫なの!?」


「私は大丈夫だけど、こいつが…」


玲奈はそう言って、風香に視線を移す。


風香は頭を強く打ったのが原因となり、気を失っていた。


「あんたはこの子連れて逃げて!明美と茜さんは私達が何とか…」


「何とかされる必要は無いわ…」


突然背後から声が聞こえ、驚きながら振り向く結衣。


そこには、蹴りつけられた腹部を苦しそうに押さえながら立っている、明美が居た。


「明美!」


「大声出さないで。…響くから」


「ご、ごめん…」


明美は倒れている茜の元に歩み寄り、彼女を抱き起こした。


「悪いのだけれど、私は戦えそうにないわ…。これを、晴香ちゃんに渡して」


明美が結衣に手渡したのは、デザートイーグルの弾倉。


「これを…?」


「えぇ。…それと、肩が外れるから連射しないようにって、言っておいてね」


明美はそう言って小さく笑うと、風香を抱えている玲奈と共に、出口の方へと向かった。


「…どいつもこいつも、無茶ばかりしやがって」


渡された弾倉を握り締め、囮になっている晴香の元へ走り出す結衣。


間に合うかどうかなどは、考えてすらいなかった。



その頃…


謎の生物が保管されていた、管理室がある通路を走っている人物が1人。


「(あの部屋で間違いなさそうですね…)」


その人物、恭子は、無断で楓達と分かれ、謎の生物が出てきた部屋を目指していた。


管理室を見つけた恭子は、念の為に銃を取り出す。


その部屋は、無残に破壊された扉が目印になって発見する事ができた。


飛び込むように部屋の中に入り、敵影の有無を確認する。


敵は居なかったものの、部屋に入った恭子はすぐに異常な光景を目にした。


「(これは…)」


叩き割られて、真ん中に大きな穴が開いているカプセル。


そこからは、中に入っている水が未だに少しずつこぼれていた。


「(ガラス片の飛び方から見て、中から割れた事は間違いなさそうですが…)」


今はそんな事どうでも良い、と心の中で自問自答し、謎の生物の情報が無いか辺りを探し始める恭子。


すると、不意に開けた引き出しの中に、文字が書かれた1枚の紙と、何かが入っている小さな箱を見つけた。


「(…?)」


紙を手に取り、文面を目で追い始める。


その紙には、謎の生物の名前と思われる"D-15α"という文字と、特徴や身体能力などが書かれていた。


「(アルファって事は、試作型って事ですか…?そんな、あの戦闘能力でまだ未完成だなんて…)」


戦慄する恭子。


しかし、すぐにマイナスの感情は消え失せ、そのかわりに、希望というプラスの感情が湧いてきた。


「(試作型なら、何とかなるかもしれませんね…。それよりも、この箱は何なのでしょうか…?)」


紙をポケットにしまい、小さな箱を手を取る。


箱を開けてみると、見たことも無い形の拳銃が1丁と、小さなアンプルのような物が1つだけ入っていた。


「(銃…ですね)」


拳銃を手に取り、全体を見回してみる。


その銃は驚くほど軽く、また、弾倉を入れる部分が無かった。


代わりに見つかったのは、銃の後部にある撃鉄付近の小さな穴。


どうやらこの穴に、一緒に入っていた小さなアンプルを入れ、そのアンプルを射出する装置のようだった。


問題は、このアンプルの中身が一体何なのか。


恭子は他に情報が無いか、引き出しの中を改め始めた。


しかし、引き出しの中には今見つけた紙と銃が入った箱しか入っておらず、他には何も見つからなかった。


そこで恭子は、謎の生物"D-15"について書かれた紙を取り出し、もう1度よく目を通してみる。


「(私とした事が、こんな項目を見落とすだなんて…)」


紙の下の方に、"緊急時の対処法"という項目を見つけた。


そこには、今恭子が手にしている拳銃の事も書いてある。


どうやらこの銃が射出するアンプルには、標的のD細菌を死滅させる効果があるようだ。


「(という事は、これを上手く使えば感染した人達を治す事も…)」


しかし、そんな恭子の期待は、"同時に宿主自体の生命活動も停止させる"という一文に打ち砕かれた。


「(流石に、そこまで都合よくはいきませんね…)」


一喜一憂を繰り返している恭子。


それでも、最後に残った感情は、"喜"の方だった。


「(とにかく、これを使えば奴を何とかできるかもしれませんね)」


拳銃とアンプルをしまい、部屋を出る恭子。


その時、隣の通路の方から、銃声が聞こえてきた。


「(…急ぎましょう)」


恭子は心の中でそう呟いて、薄暗い通路を走り始めた。



一方、玲奈達を逃がす為に囮となり、D-15を1人で惹きつけていた晴香。


「(弾が切れた…!?)」


唯一の頼りであった高火力の銃デザートイーグルの銃弾が、ついに底を突いてしまった。


やむを得ずに、自分の銃であるアサルトライフルを取り出す。


しかし、デザートイーグルの銃弾を撃ち込まれてもびくともしないD-15に、アサルトライフルを使った所で効果が無い事など、撃つ前からわかっていた。


それでも晴香は、目の前の強大な敵に銃弾を撃ち込み続ける。


やはり、D-15に変化が訪れる事は無かった。


「(こ、このままじゃ…いつかは…!)」


思わず嫌な予想をしてしまう晴香。


その時、D-15の背後から、こちらに走ってくる人物の姿が見えた。


「させるかぁッ!」


「ゆ、結衣さん!?」


走ってきた結衣はD-15の背中に、強烈な飛び蹴りをお見舞いする。


しかしD-15は素早く振り向き、結衣の足を掴んで彼女の攻撃を受け止めた。


「へっ!ばーか!」


ニヤリと笑う結衣。


結衣は大きくひねるように全身を反転させ、その勢いを生かして、掴まれていない方の足でD-15の首を蹴りつけた。


D-15は、思わず手を離す。


支柱となる物が無くなった結衣は、両手を地面に着けて着地して、D-15が怯んでいる隙に晴香の元へと移動した。


「二の矢…ってね。帰ったら、茜さんにお礼言わなきゃ」


「二の矢…ですか?」


「独り言!気にしないでね!そんな事より、明美からプレゼントがあるよ」


結衣はそう言って、明美から預かっているデザートイーグルの弾倉を渡す。


「あ、ありがとうございます…」


晴香はプレゼントが銃弾である事に少々困惑しながら、それを受け取った。


「さてと…。とりあえず逃げるよ、ハルちゃん。いい策が思い浮かぶまで、弾を温存したいからね」


「わかりました。…ハルちゃん?」


2人はD-15に背を向けて、通路の奥へと走り出す。


その時、2人は正面に、地上へのハシゴを見つけた。


しかし状況が状況なだけに、当然登ろうとはしない。


「今は…無理ですよね」


「登っても引きずり落とされるだけだね。後にしよう」


「そうですね」


2人は立ち止まらずに、ハシゴの前を通過した。


「大神さん!赤城さん!」


D-15を隔てた向こう側から聞こえてきた恭子の声を聞き、走りながら顔だけを後ろに向ける結衣と晴香。


「恭子!無事だったんだ!」


「どうするおつもりなんですか!?」


「それを今考えてる所!」


その時、晴香が正面を指差しながら、結衣にこう言った。


「結衣さん!行き止まりです!」


「嘘!?」


結衣はまさかと思いながら、正面に視線を戻す。


晴香が言った通り、2人が進む予定だった道は、行き止まりとなっていた。


壁にぶつかるように立ち止まり、振り返る2人。


すると、息つく間もなく、D-15が結衣に強烈なストレートを放ってきた。


それを何とか避けて、結衣は晴香と共に恭子の元へ。


D-15が殴った箇所には、大きな穴が開いていた。


「ひとたまりもないってね…。あれじゃ、一撃もらったら終わりだ」


「茜さんや有紀奈さんも、あの腕力にやられちゃったんですかね…?」


「多分ね…」


D-15の攻撃力に、戦慄する結衣と晴香。


しかしこちらには、そんな敵にも十分対抗できる手段があった。


「大神さん。良い武器を見つけましたよ」


そう言って、アンプルが装填してある銃を取り出す恭子。


「何だいそりゃ」


結衣は見た事も無いその銃の形に、眉をひそめた。


「D細菌を死滅させる効果を持つアンプルを射出する銃です。…本当に効くのかどうかはわかりませんが」


「アンプルシューターってヤツだね」


「そうなのですか?」


「知らないけど」


「えぇ…」


アンプルシューターと呼ばれるらしいその銃は、恭子が撃つ事になった。


「私とハルちゃんで奴を足止めする。その隙に、恭子がそれを奴の心臓に撃ち込む。これでいこう」


「心臓が弱点なのですか?」


「ハルちゃんが玲奈達を助ける為にひるませた時、銃弾は心臓に当たってたから、多分そうだと思う」


「わかりました」


それぞれ、銃を構える3人。


D-15は3人に向かって、ゆっくりと歩き出した。


「さぁ、最後の戦いだよ!」


第73話 終




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