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Desperate Girls  作者: 白川脩
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第69話


第69話

"まさかの決着"


隠し通路へと入ろうとした時に、突然聞こえた轟音のような音。


明美と優子はその音の正体を突き止める為、音が聞こえた方向へと歩みを進めていた。


「………」


突然、明美が立ち止まる。


「…どうしたの?」


「誰か来るわ」


「誰か…?」


正面の暗闇を、優子が銃に付いているフラッシュライトで照らす。


すると、有紀奈と恭子と茜と風香の4人と、それを追いかけるようにこちらに走ってくる蜘蛛の集団が見えた。


「な、何!?」


「なるほど、あっちのチームも蜘蛛と遭遇したのね」


「納得してないで逃げるわよ!」


「いえ、その必要は無いわ」


逃げるどころか銃を取り出して、銃口を正面に向ける明美。


「何言ってんのよ!?あの数よ!?それにデカいのだって…」


「同等よ」


「はぁ!?」


明美はニヤリと笑ってこう言った。


「このメンバーなら…ね」


「このメンバー…?」


オウム返しにそう呟きながら、現状のメンバーを確認する。


有紀奈、優子、茜、風香、明美、恭子の6人。


確かに、強者揃いと言ったメンバーだった。


「…本気でやるの?」


「今逃げた所で、結局追い詰められるだけだと思うのだけれど?」


「…わかったわ」


優子は、渋々銃を構えた。


そんな臨戦態勢の2人を見て、走ってきた4人は当然驚く。


しかし、風香と茜の2人に限っては、すぐに気持ちを切り替えてみせた。


「6人なら何とかなりそうね」


「無理でしょ」


「そうは言いつつ銃を構えているあなたの姿は素敵だわ。結婚しましょう」


「喰われろよ」


それに倣って、有紀奈と恭子も足を止める。


「…限りなく無謀ね」


「ですが、逃げ続けた所で良い結果になるとも言えませんよ?」


「…まぁね」


蜘蛛の集団は立ちはだかった6人を見て、威嚇を始めた。


「あら、ご立腹?」


茜が嘲笑気味に笑う。


「ナメられてると思ってんじゃないの?実際ナメてるけどさ」


すると、火に油を注ぐような風香の言動が通じたのか、子蜘蛛の1体が彼女に飛びかかる。


その蜘蛛は、6人の銃弾を一斉に浴び、一瞬で撃ち落とされた。


「バカね」


「勇ましい…って言ってあげましょうよ…」


冷酷な有紀奈と、温厚な恭子。


その時、明美がとある事に気付いた。


「(なんとまぁ、慎重な事…)」


ぴくりとも動かずに、6人を観察している親玉の巨大蜘蛛。


その姿は、子蜘蛛に戦わせて彼女達の力量を計っているようにも見えた。


「自分は戦わずに高みの見物…。気に入らないわね」


「全くね」


「どうして私を見つめているのかしら。神崎茜」


「…よく見ると可愛い顔してるわね、あなた」


「気持ち悪い事言わないでほしいのだけれど…」


「あけみんって呼んであげましょうか?」


「そろそろ本気でぶっ殺すわよ」


「もう…冗談よ」


そんな雰囲気の2人にも関わらず、子蜘蛛は次々と襲い掛かってくる。


一同は特に苦戦する事なく次々と子蜘蛛を仕留めていったが、やはり微動だにしない蜘蛛の親玉には、全員が不安を感じていた。


「見事なくらい徹してるわね。様子見に」


「でも、いきなり襲い掛かってきたら、マズいわよね…」


舌打ちをする有紀奈と、ひたすら不安を隠す優子。


その時、一触即発の現状に痺れを切らした茜が、突然蜘蛛の親玉に向けて銃を発砲した。


「あのさぁ…」


茜の突拍子もない行動に、呆れる風香。


しかし、当の本人である茜はいつになく真剣な表情で、蜘蛛の親玉のある箇所を見つめていた。


「…茜?」


その様子に気付いた明美が、彼女の視線を辿ってみる。


茜が見ていた箇所は、蜘蛛の親玉の右前足にある、抉ったような小さな傷だった。


「傷…?」


「えぇ。なーんか、ピンと来ない?」


期待の眼差しを向けてくる茜に、溜め息を吐く明美。


「弱点とでも言いたいの?そんなに都合よく…」


「あら、でも効いてるみたいよ?」


「…え?」


明美が半信半疑で正面に視線を移してみると、茜の銃弾が命中した箇所である、蜘蛛の親玉の右前足が、ガクリと崩れていた。


「嘘…」


「私の勝ちね」


「勝負していたつもりはないのだけれど…」


「負け惜しみは止めなさい」


「………」


一同は、蜘蛛の親玉の抉ったような傷に向けて、一斉射撃を始めた。


弱点への猛攻撃に、思わず怯む蜘蛛の親玉。


しかし、蜘蛛の親玉はしばらくすると、弱点を左前足で覆って、一同の攻撃の無力化を試みた。


「無駄な足掻きね…」


貫通力の高い銃である、デザートイーグルを使用している明美が、口元を少しだけ歪ませながらそう呟く。


蜘蛛の親玉の防御も虚しく、明美の銃弾は左前足を容易く貫通して、その先の弱点を撃ち抜いた。


「やっぱりイーグルは違うわね」


感心する有紀奈。


「当たり前でしょう。私の愛銃だからね」


「相変わらず引っかかる言い方をするわね…」


「そうかしら?」


優勢気味の一同であったが、ついに蜘蛛の親玉が動き出した事によって、状況は一変した。


「ねぇ…やっぱり無理なんじゃないの…?」


途轍もない勢いでこちらに向かってくる蜘蛛の集団を見て、苦笑を浮かべる優子。


他の一同も思わず後退りをしたが、明美は退こうとしなかった。


「大丈夫よ。私が指示を出すから、その通りに動きなさい」


「指示?」


茜が首を傾げる。


「有紀奈と優子と恭子は私と親玉狩りよ。弱点を狙いなさい。茜と風香ちゃんは雑魚を頼むわ」


「2人で?」


風香が驚いてそう訊くと、明美は彼女を横目で見ながらこう言った。


「できないの?」


「…バカにすんな」


「うふふ…。期待してるわよ」


先陣を切って、次々と襲い掛かってくる子蜘蛛の集団。


茜と風香の2人は前線に飛び出て、順番に飛びかかってきた子蜘蛛を蹴り飛ばし始めた。


「さぁ、撃って!」


明美の号令と同時に、発砲を始める4人。


猪突猛進の蜘蛛の親玉であったが、4人による弱点への集中砲火に耐えきれず、転倒した。


それでも、4人は攻撃の手を一切緩めずに、弱点を正確に銃撃し続ける。


しかし、蜘蛛の親玉は攻撃を受けながらも、ゆっくりと立ち上がって一同を睨んだ。


「流石に今のだけでは倒せませんよね…」


「ちょっとでも期待した私がバカだったわ…」


溜め息を吐く恭子と優子。


体勢を立て直した蜘蛛の親玉は、かなり怒っているように見えた。


そんな様子を見て、茜がイタズラっぽく笑う。


「あんもう、気が早い子ねぇ」


「"気が短い"でしょ」


風香が揚げ足を取ると、茜はウィンクをしながらこう言った。


「そうとも言うわ」


「あっそ…」


一同に向かって、再び突進してくる蜘蛛の親玉。


一同は一切怯む事なく、発砲を続けた。


「あら、ちょっとヤバそうね…」


「一旦退こっか」


耐えているのか、怯まなくなった蜘蛛の親玉を見て、茜と風香が一同の元に戻ってくる。


「2人はもう良いわ。大分減ったからね」


明美は子蜘蛛の数が残り僅かだという事を確認して、2人にそう言った。


「後は親玉を仕留めれば、殲滅完了ね」


気が楽になったのか、表情が少し柔らかくなった有紀奈。


「簡単に言うわね…。まだピンピンしてるわよ?」


そう言った優子はまだ気を抜いておらず、緊張している様子のままだった。


「私やあんたがなんと言おうが、彼女に退く気は無さそうだけど?」


「…そうみたいね」


明美に視線を移す2人。


その視線に気付いた明美が、2人に何か言おうとしたその時、蜘蛛の親玉が急接近して、明美の頭上にその恐ろしい前足を振り上げた。


「明美!」


有紀奈が叫んだのと同時に、蜘蛛の親玉の前足が振り下ろされる。


明美の体は、無残に八つ裂きにされた。


ハズであった。


「…助かったわ。茜、恭子」


明美の頭に蜘蛛の親玉の両前足が当たる寸前、茜と恭子が素早く右前足の弱点を撃ち抜き、それによって怯んだ蜘蛛の親玉は、思わず攻撃を中断。


明美の体は、八つ裂きにされずに済んだ。


「油断なんてらしくないわね。私に見とれてたの?」


「…助けられた身分よ。何とでも言いなさい」


「ん?今何でもするって言ったわよね?」


「言ってないのだけれど…」


「そんな事より…」


調子に乗っている茜を押しのけて、明美の元へ行く有紀奈。


「さっき、何か言い掛けてたわよね?」


「あぁ、もう言う必要も無いわ」


「は?」


「"弱点を撃ち抜けば攻撃を中断させられるから、逃げずにここで仕留めましょう"って言おうとしたのよ」


「…なるほど、もう証明済みね」


「そういう事」


再び攻撃を再開しようとする一同。


すると、激昂した蜘蛛の親玉が、突然奇行に走った。


その奇行とは、天井と左右の壁に自分の体を狂ったようにぶつけ始めるという行為。


それはまるで、八つ当たりをしているようにも見えた。


「バカみたい。恥ずかしくないのかな」


嘲笑する風香。


他の一同も呆気に取られて、ひたすらその様子を観察するように見つめていた。


しかし次の瞬間、一同は更に困惑する事になる。


蜘蛛の親玉が体をぶつけていた壁や天井が衝撃に耐えきれなくなり、轟音を響かせながら崩れ落ちる。


結果、親玉を含めた蜘蛛の集団は、瓦礫の下敷きとなって全滅した。


「…本当にバカじゃん。大丈夫なのかな」


「大丈夫じゃないわね…」


困惑している風香と茜。


他の一同も2人と同じように困惑していたが、言葉も出ないと言った様子であった。


「…まぁ、自滅してくれたお陰で手間が省けたわ。行くわよ」


振り返って、歩き始める明美。


有紀奈、優子、風香の3人も、それについていく。


恭子と茜はしばらくの間、苦笑を浮かべながら、目の前に積み上がった瓦礫を見つめていた。


「衝動に駆られてしまったのね…」


「衝動…ですか?」


「きっと今、"まさかこんなんなると思わんかった"って言ってるハズよ」


「言ってないと思います…」


第69話 終




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