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Desperate Girls  作者: 白川脩
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第42話


第42話

"それぞれの戦い方"


唯一持っている1丁のハンドガンすら使わずに、体術で戦っている風香。


凛は、予想を大きく上回る風香の動きに、驚いていた。


「…何ですか」


「良い動きだね」


「………」


風香の体術は、茜から教わった体術を自分なりに改良したもの。


「(この子、私や亜莉紗よりも上かも…)」


凛は思わず、心の中でそう呟いた。


その後、辺りの患者が減ってきた所で、凛が風香に話し掛ける。


「和宮町の生存者…なんだっけ?」


「一応」


素っ気なく答える風香。


「ライフルとかは使わないの?」


「邪魔になりますから」


「邪魔?」


「接近戦は銃よりも、ナイフや体術の方が戦いやすいじゃないですか」


「なるほど…」


風香は凛にまじまじと見つめられ続け、困惑し始めていた。


「…何ですか」


「やっぱり、玲奈ちゃんに似てるかも」


「………」


「(うわ、すごい嫌そうな顔…)」


油断しているように見える2人であったが、辺りの患者は2人に触れる事すらできずに倒されていく。


近くの患者を体術で仕留める風香と、離れた位置に居る患者を銃撃で仕留める凛。


本人達は気付いていなかったが、2人の相性はかなり良かった。



「美咲ちゃん。援護を頼むわ」


「任せてください!」


和宮町の生存者の中で、最も射撃の才能がある美咲。


銃の種類によっては、特殊部隊の隊員である有紀奈や、その中の最年長である茜をも上回る実力を持っていた。


こっそりと横目で、美咲が使っている銃を見る優子。


「(にしてもまさか、"彼"の銃を使いこなす少女が居るとはね…)」


"彼"とは、和宮町で起きた一連の事件において亡くなった、特殊兵器対策部隊の隊員の1人。


その人物は、追い詰められた一同を助ける為に手榴弾を使い、大量の患者と共に自ら爆死した。


「(自分が死んでも仲間さえ生きていれば良い…彼らしい考えね…)」


寂しげな表情になり、戦闘中だというのにボーっとしてしまう優子。


「優子さん!援護お願いします!」


そんな彼女を引き戻したのは、美咲の声だった


「…あ。ご、ごめん。任せて」


「…どうしたんですか?」


美咲は再装填をしながら、不安そうに優子を見る。


「…何でもないわ。ほら、さっさと終わらせるわよ!」


優子は彼女を安心させる為に、笑顔を作った。


そして、話を打ち切るように銃を構える。


しかし、誤魔化す事はできなかった。


「普通に怪しいです…」


訝しげに優子を見つめる美咲。


「ふふ…。後で話してあげない事も無いかも?」


「何ですかそれ!絶対教えてくださいね!」


「はいはい…」


優子はくすくすと、静かに笑った。



「亜莉紗さん、銃は使わないんですか…?」


手に何も持っていない亜莉紗を、きょとんとした表情で見つめる瑞希。


「私の戦い方はちょっと特別なんだ」


「特別…?」


「こういう物を使うの」


亜莉紗はそう言って、自製の地雷を取り出した。


「そ、それは…?」


「ま、地雷みたいな物かな。…それっ!」


それを患者の足元に、勢いよく投げ込む。


患者はすぐにそれを踏んで、一瞬で炎に包まれた。


「はわッ!?」


「はわ…?」


謎の声を出した瑞希を、二度見する亜莉紗。


瑞希は顔を真っ赤にしながら、誤魔化すように笑った。


「す、すす、すごいですね!じ、自分で作ったんですか!?」


「(めちゃくちゃテンパっちゃってるよこの子…)」


そこに、複数の患者から逃げてきた晴香がやってくる。


「盛り上がってないで戦ってくださいよ!」


「あ、ごめんごめん。それじゃ、一気に片付けちゃいましょ~」


亜莉紗がそう言って取り出した物は、黒い液体が入った3本のビン。


それを患者の足元に投げつけ、割れたビンから四散した液体に、銃弾を1発撃ち込んだ。


地面と銃弾の摩擦により、液体が溜まっている箇所が一気に燃え上がる。


その上に居た患者は全員炎に包まれて、しばらく経った所で倒れ込み、そのまま動かなくなった。


「終わりっ…と」


銃をしまってそう呟く亜莉紗を見て、呆然とする晴香と瑞希。


亜莉紗は2人の様子に気付くと、けらけらと笑い出した。


「驚いた?私の戦い方は、色んなトラップを使うの」


「トラップ…?」


訊き返す晴香。


「うん。今見せた物とか、地雷とかね。他にも、人体を一瞬で切断するワイヤーとかもあるよ」


そう言った直後、患者が背後に居る事に気付き、再び銃を取り出して頭を撃ち抜く。


「一応、銃も使うけどね」


すると晴香が、亜莉紗の腰元のポーチに着眼してこう訊いた。


「そのポーチに入れてあるんですか?」


「主にはポーチの中に入ってるけど、足首の所に2つ、スカートの内側にも4つあるよ」


そう言って、太ももに巻いてあるベルトから、いくつかのビンを取り出して2人に見せる。


「歩いてる時に落っこっちゃわないんですか?」


瑞希の質問に、亜莉紗はスカートをポンと叩きながら答えた。


「ガッチガチだから大丈夫。…いざという時、すぐに取り出せないのが欠点なんだけどね」


「(不便…)」


そこで、さっきから全く戦っていない3人の足元に、患者の死体が飛んでくる。


飛んできた方向を見てみると、凛と風香の2人がこちらを睨みながら立っていた。


「………」


「………」


2人の無言の圧力に3人は戦慄して、慌てて戦闘に戻った。



「…結衣姉、そろそろ倒してよ」


休む間もなく、延々と続く巨大生物の攻撃をひたすら避け続ける玲奈。


彼女は少しずつ、疲労の色を見せ始めていた。


「しょうがないなぁ…。そろそろこっちを使ってあげよう」


そう言って、リボルバーを取り出す結衣。


「(最初から使えよ…)」


玲奈は心の中で、そう愚痴った。


そんな中、かなりの数の銃弾を撃ち込まれているにも関わらず、特にこれといった変化が見えない巨大生物。


「(リボルバーなら大丈夫だと思うけど、こんなに弱点撃っても死なないとはね…)」


結衣は妙な違和感を感じながら、巨大生物の背後にリボルバーを構えた。


そして引き金を引いて、反応を見る。発射された銃弾は見事に巨大生物の背中に命中したが、巨大生物は少し怯んだだけで倒れなかった。


「…まさか」


銃を下ろして、玲奈に視線を送る。


「…玲奈、こいつの背中の色を見てみて」


「…わかった。ちょっと待って」


珍しく真剣な表情をしている結衣を見て、玲奈は嫌な予感を感じた。


玲奈は巨大生物の攻撃を避けて、素早く背後に回る。


そして、喫驚した。


「弱点じゃない…!?」


それを聞いて、溜め息を吐く結衣。


「…やっぱりね。どうりで弱ってないワケだ」


巨大生物の攻撃をバク転で避けた玲奈が、結衣の元へと戻ってくる。


「どうするの?」


「まずは弱点を探さないとね。2人で行くよ」


「了解」


2人はそれぞれ武器を構えて、巨大生物を睨んだ。


「背中じゃないとしたら、弱点は頭か胸の口、といった所かな」


「…勘?」


「うん」


「………」


手始めに、結衣が頭を狙ってリボルバーを撃つ。


反応は無かった。


「ちぇ…」


「次は…」


「胸だね」


そのまま、胸元に付いている大きな口に発砲する。


しかし、そこも弱点では無かった。


「…あれ」


「バカみたい…」


玲奈は結衣を見て鼻で笑った後、巨大生物に接近して背後を取る。


その後、振り向きざまの爪振り攻撃をしゃがんで避けて、2本のナイフで勢いよく腹部を斬り上げた。


しかし、巨大生物は怯まず、玲奈に掴み掛かろうとする。


玲奈は掴まれそうになった腕の代わりにナイフを掴ませて、もう1本のナイフを首に突き刺した。


それでも、巨大生物は怯まない。


武器が無くなった玲奈は、素早く後ろに下がり、後を結衣に託した。


託された結衣は巨大生物の背後に、2丁のハンドガンを連射しながら近付いていく。


巨大生物の攻撃が届く間合いになると、彼女は銃をしまって体術に移行した。


様子見もせずに、最初から水面蹴りを仕掛ける結衣。


それは避けられたが、結衣は素早く立ち上がり、続けて攻撃を繰り出した。


顔面にパンチを3回、足にキックを1回、腹部にキックを1回、流れるように放っていく。


巨大生物も負けじと手を出すが、結衣はその手を両手で上手く掴んで引き込み、そのまま顔面に肘を打ち付けた。


そこで、玲奈が突き刺したナイフを抜き取り、彼女に投げて渡す。


もう1本の落ちているナイフは、拾うなり巨大生物の肩に突き刺す。


すると、巨大生物は苦痛の雄叫びを上げて、その場に膝を付いた。


「ここだ…!」


弱点がわかった所で、巨大生物の顔面を膝で蹴り上げて一旦距離を離す。


手に持っているナイフを玲奈に渡し、結衣は代わりにリボルバーを取り出して、再び近付いていきながら巨大生物の肩に発砲し始めた。


1発命中する毎に、大きく怯む巨大生物。


残弾数3発を全て撃ちきった所で、巨大生物はゆっくりと倒れて、そのまま動かなくなった。


「やりぃ!」


「お疲れ様」


2人はハイタッチをして、丁度戦闘を終えたらしい優子達の元へと歩いていった。


第42話 終




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