表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Desperate Girls  作者: 白川脩
34/79

第34話


第34話

"試験"


「準備って、何の準備なの?」


有紀奈の隣を歩きながら、明美が訊く。


「準備は準備よ。ヘリの整備や武器の用意、その他諸々…」


「ねぇ、あの子達…本当に連れて行く気?」


葵が不安そうに訊くと、有紀奈は得意気な顔になって答えた。


「和宮町の生存者よ?実力は私が保証するわ」


「でも…」


躊躇う葵の後ろで、茜が溜め息を吐く。


「くどいわね。言っておくけど、彼女達は一度"行く"と言ったら、私達の制止なんか聞いてくれないわよ?」


葵はそれを聞いて少し考え込んだ後、こう言った。


「…彼女達、銃は使えるのよね?」


「当然よ。射撃の腕なら、姉さん以上の子も居るわ」


「…この建物、射撃訓練の場所はある?」


有紀奈を見る葵。


「簡易な物なら」


「そう…。それじゃ、彼女達の実力を見せてもらえないかしら?やっぱりこの目で見ないと、何とも言えないわ」


「仕方ないわね…。茜、先に葵さんと訓練所に向かって頂戴。彼女達を集めてくるわ」


「了解。こっちよ」


葵と茜は、射撃訓練所へと向かった。



その頃…


「そういえば晴香、今日はバイト休みなの?」


「うん。今週はもう無いらしいよ」


「バイト?」


美咲と晴香の会話に、亜莉紗が加わる。


「はい。私、麓のパン屋でバイトさせてもらってるんです」


「パン屋かぁ~。女の子らしいね!」


「えへへ…。まだ2回しか行ってないんですけどね」


晴香は照れくさそうに笑いを浮かべた。


「なんや、若いの3人が寄ってたかって、何を話しとるん?」


そこに、建物の中をぶらぶらと歩き回っていた楓がやってくる。


「あ、楓さん!」


「…宮城は居らんのか?」


「居ませんけど…何か用事が?」


「用事っちゅうワケやないが、お前と一緒に居るんやないかと思うとっただけや」


「なるほど。ちなみに凛ちゃんなら、優子さんと出掛けましたよ。」


「そうか」


楓は頷いた後、晴香と美咲の2人に視線を移した。


「朝霧や。よろしゅうな」


それに、笑顔で答える2人。


「赤城晴香です。よろしくお願いします」


「篠原美咲です!よろしくお願いします!」


「(タイプが真逆の2人やな…)」


するとそこで、晴香の携帯が突然鳴り出した。


「誰から?」


「有紀奈さんだ。何だろ…」


そう呟いて、携帯を耳に当てる晴香。


「どうしたんですか?」


すぐに、有紀奈の声が返ってきた。


『晴香ちゃん?急で悪いんだけど、射撃訓練所に来てくれないかしら?』


「射撃訓練所…?」


その言葉に、他の3人も反応を見せる。


『えぇ。詳細は後で話すから、とりあえず自分の銃を持って来て頂戴。切るわよ』


晴香が有無を言う前に、有紀奈は電話を切った。


携帯をしまう晴香に、亜莉紗が訊く。


「どしたの?」


「よくわかりませんけど…銃を持って射撃訓練所に来いって…」


「…葵さんの考えやろな」


楓に視線を移す一同。


代表して、晴香が訊いた。


「どういう事ですか?」


「あの人は、何事も自分の目で見んと納得できない人なんや。さしずめ、お嬢さんらの腕試しって所やろ」


そう言って、晴香と美咲を見る楓。


その視線に、2人は一瞬で緊張感に包まれた。



一方…


「あの…止めた方が良いんじゃないかな…」


「瑞希は黙ってて。こいつが先に喧嘩売ってきたんだから」


「私がいつ喧嘩売ったの?自意識過剰なんじゃないの?」


風香と玲奈はどうにも馬が合わないらしく、再び喧嘩腰になって睨み合っていた。


「…ムカつく」


銃を取り出す風香。


それを見て、玲奈もナイフを取り出す。


「誰に銃向けるつもり?遊びじゃ済まないよ」


「上等」


「(あわわ…)」


その時、風香の携帯が鳴り出した。


「ちょっとタイム」


「うん」


「(待つんだ…)」


着信相手は有紀奈。


風香は面倒臭そうに携帯を耳に当てた。


「…何ですか?」


『急で悪いんだけど、銃を持って射撃訓練所に来て頂戴』


「…は?」


『瑞希ちゃんも一緒だったら、伝えておいてね。それじゃ』


「ちょ、ちょっと…」


風香が理由を訊く間も無く、有紀奈は電話を切った。


「はぁ…。意味わかんない…」


銃をしまって、歩き出す風香。


「ちょっと。どこ行くつもり?」


そう言ってこちらを睨む玲奈の横を、風香は平然と通り過ぎながら、彼女の質問に答えた。


「射撃訓練所」


「何で?」


「何でも良いじゃん。瑞希、行くよ」


「え?私も?」


「銃持って来いだってさ」


「ま、待ってよー!」


1人取り残された玲奈。


風香と瑞希が見えなくなるまで待った後、2人をこっそりと追った。



射撃訓練所…


「有紀奈さん。どういう事ですか?」


有紀奈に呼ばれて、射撃訓練所へとやってきた晴香と美咲の2人。


一緒に居た亜莉紗と楓も、2人の腕が気になるらしく、訓練所にやってきた。


「突然でごめんね。こっちの葵さんが、どうもあなた達の腕を自分の目で見ないと信用できないらしいの。だから、今からちょっとした実弾演習をしてもらうわ」


「実弾演習…?」


美咲が呟く。


「えぇ。内容は、移動する標的を撃ち抜くという物よ。あなた達なら、難なくこなせるハズよ」


「武器の指定はありますか?」


晴香が質問すると、有紀奈は銃器が収められている棚を開けながら答えた。


「無いわ。好きな物を使って頂戴」


そこに、風香と瑞希もやってくる。


「…なるほど」


風香は射撃訓練所の様子を一目見ただけで状況を察し、持ってきた銃を取り出した。


「あの…これは…?」


理解できない瑞希は、おどおどした様子で有紀奈に訊く。


すると、風香が代わりにこう答えた。


「細かい事は気にしないで、とにかくやれば良いみたいだよ」


「何を…?」


「さぁね」


「ふぇ~…」


それぞれ銃を持って、指定された位置に付く4人。


4人が銃の確認をしていると、有紀奈が彼女達に予備の弾薬を渡しながらこう言った。


「簡単に説明しておくわ。ランダムに出現する、丸い的を撃つのよ。再装填は合間を縫って行って頂戴」


「的の数は?」


風香が質問する。


「50枚よ。的の出現が途中で止まる事は無いから、常に気を抜かないように」


有紀奈はそう言って、開始のボタンの前に立って4人を見た。


「…さてと、準備は良いかしら?」


「いつでも行けます」


「おっけーです!」


「いいよ」


「だ、大丈夫です!」


銃を構える4人。


「よし…射撃開始!」


有紀奈がボタンを押したのと同時に、的の出現が始まった。


「中々、難しそうですね…」


的の移動速度が思ったよりも早い事に、驚く亜莉紗。


「せやな…。それに、4人っちゅうのもやりづらいと思うで」


「的を取り合って、無駄な発砲が生じる事があるからね…」


楓の言葉に、葵が共感した。


しかし、有紀奈はそれを否定する。


「その点なら大丈夫よ。彼女達ならね」


「…どういう事やねん」


「チームワークってヤツよ」


そう言った茜を、葵が見た。


「チームワーク?」


「えぇ。彼女達は、"目の前の標的を撃破する"という意志だけで戦闘を行っているの」


「…それじゃあやっぱり、標的が被るのでは?」


亜莉紗の疑問には、明美が答えた。


「よく見てみなさい。1人1人、正面にテリトリーを作っているのがわかる?」


それを聞いて、納得する楓。


「…なるほど、分割してるっちゅう事か」


「その通りよ。全員が自分のテリトリーの中の標的だけを撃っていれば、無駄な発砲は無くなるわ」


「なるほどね…」


葵は彼女達の予想以上の実力に、感心した。



最後の的を風香が撃ち抜いたのと同時に、終了を知らせるブザーが鳴る。


「50枚中、50枚破壊。…お疲れ様」


有紀奈の言葉を聞いて、4人は銃を下ろした。


「…どうかしら?」


茜が横目で葵を見る。


葵は茜をしばらく見つめた後、静かに笑ってこう言った。


「合格」


第34話 終




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ