表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Desperate Girls  作者: 白川脩
26/79

第26話


第26話

"報復開始"


「そういえば、峰岸恭子の場所はわかるの?」


明美が歩きながら、葵を見る。


「わかるわけないじゃない」


「………」


すると、2人の後ろを歩いている楓が、口を開いた。


「あいつなら、上や」


「上?」


楓に視線を移す葵。


「仲間を連れて、階段がある方に歩いていったさかい。間違いないと思うで」


「なるほど…。それじゃ、5階に行きましょう」


3人は上への階段を目指して、突き当たりの分かれ道を左に曲がる。


そこで、結衣と玲奈の2人を見つけた。


「あら、大神姉妹が揃ってるじゃないの」


「葵さん!もう大丈夫なんですか?」


葵はそう聞いてきた結衣に、微笑みかける。


「えぇ。心配してくれて、ありがとね」


「いえいえ。大事に至らなくて良かったです!」


そんな傍ら、泣いた後の顔を見られたくない玲奈は、3人に背中を向けていた。


「…なんや、泣いてたんか?」


いつの間にか隣に居た楓が、玲奈の顔をまじまじと見ながら、そう訊く。


玲奈は無表情で、こう答えた。


「泣いてません」


それを聞いて、目を細める楓。


「嘘つけ。どう見ても泣いた後の顔やないか」


「泣いてません」


「目元が…」


「泣いてません」


「…せやな」


楓は押し負けた。


「5人も居たら、むしろ面倒ね…」


一同の顔を見回しながら、明美が呟く。


すると、それを聞いた葵が、玲奈を見ながらこう言った。


「接近型の私と玲奈ちゃんを中心に、チーム分けをしましょう」


「5人しか居らへんで」


楓の指摘に、葵は即答する。


「私のチームを2人、玲奈ちゃんのチームを3人にすれば、何の問題も無いわ」


「相変わらず、大した自信やな…」


「うふふ…。それじゃ、チームを決めましょうか」


葵はそう言って、明美に視線を移した。


「あなたは私と来て頂戴」


「…私?」


「えぇ。…聞きたい事も多々あるしね」


「…わかったわ」


必然的に、結衣と楓は玲奈のチームにつく。


「おい、大神」


「…どっちですか?」


「妹や」


「もう名前で呼んだ方が早いんじゃないんですかね…」


「そうか?なら、玲奈」


「はい」


「お前、やっぱり泣いとったやろ」


「泣いてません」


「…そうか」


納得しない楓に、結衣がこっそりと耳打ちで話す。


「…さっき私の胸で泣いてたよ!」


「…やっぱりな」


2人の会話に気付いた玲奈は顔を真っ赤にしながらも、気付かない振りをした。


「チームとは言っても、基本的には全員で移動するわよ」


葵が一同全員に、そう言う。


「…どういう事っすか?」


結衣が首を傾げると、葵の意図を汲み取った明美が、彼女に代わって説明した。


「分かれるのは戦闘だけ。そう言ってるのよ」


「なるほど…」


「そういう事。さて、そろそろ行きましょうか」


歩き出す葵。


他の4人も、後に続いた。



階段を登って、恭子が居ると思われる6階に到着する5人。


「…見当も無しに、見つけられるんですか?」


玲奈は葵を横目で見ながら、そう訊いた。


葵はその質問に、顔を前に向けたまま答える。


「見つけるのは、大変でしょうね」


「…じゃあ、一体どうするんですか?」


「見つけてもらえば良いのよ」


葵がそう言った途端、彼女の隣に居た明美が、突然手に持っている銃を構えて、正面の虚空に発砲した。


「なっ…!?」


困惑する玲奈、結衣、楓の3人。


玲奈がその行動の意味を訊く間もなく、結衣が5階にて交戦した敵と同じ服装の人間が複数、通路の先に現れた。


刀を抜く葵。


正面に居る敵達はそれを見て、5人に向けて発砲を始めた。


5人は素早く近くの壁に隠れて、被弾を免れる。


負傷を負った者は居なかったが、流れ弾が明美の腕にかすり傷を残した。


葵がすぐに、それに気付く。


「…かすっただけでしょうね?」


「えぇ。大丈夫よ」


「そう…」


葵は安心した素振りを見せた後、一同に向かってこう言った。


「早速だけど、分かれるわよ。私達はこっちの道から行くから、あなた達は敵を食い止めて頂戴」


「了解っす!」


「わかりました!」


「任せろや」


接近型の玲奈も結衣から銃を一丁借りて、3人は銃撃での戦闘を始めた。


「さて、行くわよ明美」


「…確かに、名前で呼ばれると違和感があるわね」


「うふふ…。でしょ?」


2人はいつの間にか、お互いに敵対心を失っていた。


2人が歩き出し、曲がり角を曲がった所で、回り込んで来た複数の敵と遭遇する。


明美はすぐに銃を構えて先制を取ろうとしたが、敵も手練れで、彼女よりも早く銃を構えてきた。


しかし、明美の隣に居るのは神崎葵。


彼女は一瞬で刀を抜き、目の前の敵を全員、峰打ちで制圧してしまった。


そのあまりの早さに、思わず反応が遅れる明美。


「…助かったわ」


「うふふ…。遠距離の時は頼むわよ」


葵は刀を鞘にしまいながらそう言って、再び歩き始めた。


「本当、敵に回すのは危険ね…」


彼女の背中を見ながら、呟く明美。


「何か言った?」


「別に。…それよりも、訊きたい事があったんじゃないの?」


「そうだったわね。依頼の件で、気になった事があったのよ」


「気になった事?」


「私達をそれぞれ別の場所から行かせた理由よ」


それを聞いた明美は、そんな事か、と拍子抜けした様子で答えた。


「ただの安全確保よ。私達が行く前にあなた達を向かわせて、患者を掃討してもらったってだけ」


「へぇ…。私達はただの駒ってワケ?」


「依頼ってのは、そういう物よ」


「いいご身分ね、全く…」


葵は吐き捨てるようにそう言った後、続けて思い出したようにこう訊く。


「…わざわざ、あなた達が出向いた理由は?」


「それも単純な事よ。ファイルの探索の効率を良くするってだけ」


「…本当にそれだけ?」


「…何よ」


「あなたが直々に依頼を手伝うなんて、今まで1度たりとも聞いた事が無かったからね。それに…」


葵が言おうとした言葉を、明美が先に言う。


「峰岸恭子の出現…。今回の依頼には不自然な点が多い…。そう言いたいんでしょう?」


「ご明察ね」


「…ハッキリ言って、依頼主の私ですら困惑してるわ。峰岸恭子の件もあるけど、それ以前に、ファイルを奪われた事さえも不自然なのよ」


「…どういう事?」


明美は腕を組みながら、話し始めた。


「奪われたファイルはね、私と私の仲間しか番号を知らない金庫の中に保管しておいたの。…それが忽然と消えたってのも不自然なんだけど、それ以上に変なのは、金庫の中にファイルを撮った写真が入っていた事よ。ファイルが無くなった後にね」


「ファイルが無くなった後って事は…誰かがファイルを盗んで、代わりに写真を置いたって考えられるわね」


「変でしょう?」


「変ね…」


犯人の思惑が全くわからない2人。


すると、近くの部屋から物音が聞こえた。


「…ま、今は考えてる時じゃないわね」


「そうね。もしかしたら、峰岸恭子が何か知ってるかもしれないし、彼女の拘束を優先しましょう」


2人は武器を取り出して部屋の前に立ち、勢いよく扉を蹴って開けた。



「楓、1つ作戦があるんだけどさ」


「お断りや」


「まだ言って無いじゃん!」


「お前の作戦に乗るほど、ウチもアホちゃうわ」


「何だとこの野郎ー!」


多数の敵の進攻を、たった3人で食い止めようとする結衣と玲奈と楓。


戦況は、劣勢だった。


「…結衣姉、一応言ってみてよ。どんな作戦?」


「まず、玲奈が飛び出して…」


「却下」


「ですよねー…」


そんな会話をしている内にも、敵は次々と増えていく。


楓は壁から僅かに頭だけ出して、敵の数を確認した。


「…なんや、思ったより少ないやんけ」


「何体ですか?」


「約10体や」


「少ない…のかな」


その時、絶え間なく響いていた敵の銃声が、突然ピタリと止んだ。


「………」


再び、頭だけを出して様子を見る楓。


彼女が目にした光景は、巨大生物によく似ている見た事の無い生物が、敵を次々と殺戮している光景だった。


第26話 終




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ