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Desperate Girls  作者: 白川脩
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第23話


第23話

"組織の襲撃"


「お帰り。早かったね」


「葵さん、どう?」


4階を捜索していた3人を連れて戻ってきた結衣が、未だに目を覚まさない葵を見ながら、玲奈に訊く。


「まだ起きそうにないよ。無理に起こす必要も無いし、しばらくそっとしておいてあげよう」


「そうだね」


結衣は頷いた後、集まった一同の顔を見ながら、本題に入った。


「さて…。集まってもらった理由は言うまでもないけど…」


「…峰岸恭子ね」


壁にもたれながら腕を組んでいる凛が、そう呟く。


「その通り。こちらに危害を加えてきた以上、見過ごす事はできないからね」


「やっぱり戦うの…?」


亜莉紗が不安そうに訊くと、結衣は首を横に振ってそれを否定した。


「いや、なるべく交戦は避けたいかな。知っての通り、奴はかなりの手練れだからね」


「それなら、どないするつもりや。話ができる相手やないで」


楓の言葉に、明美も賛同する。


「説得する前に、頭を撃ち抜かれるわよ」


「うん。それはわかってるよ。…それでも、話してみる」


一同は、そう言った結衣を一斉に見た。


「…結衣姉、正気なの?」


「理由の無い殺人なんて無い…ってね。きっと、何か理由があると思うんだ」


「理由…彼女に限っては無いと思うのだけれど」


「…どういう事?」


一同の視線が、結衣から明美に移る。


「彼女、殺人衝動と言っていたわ」


「殺人…衝動…」


恐ろしげに呟く凛。


「えぇ。D細菌を狙ってる理由も、それらしいわ」


「殺人の為に…D細菌を?」


玲奈の言葉に、明美は静かに頷いた。


「…本人の口から聞いたから、間違いないハズよ」


「あの…1つ聞いても良いですか?」


そう切り出したのは亜莉紗。


彼女は明美の返事を待たずに、質問を始めた。


「D細菌を作ったのは…その…明美さんなんですよね?」


「そうよ」


「彼女は、どうして明美さんが作ったって事を知ってるんでしょうか?」


「…え?」


亜莉紗の予想外の言葉に、明美だけで無く他の人も驚く。


「…葵さんは妹から聞いた言うてたが、あの人はちゃうやろうな」


「その事を知ってるのは、明美さんと、明美さんの部下。それと、葵さんと、葵さんの妹だけ…」


凛の呟きに、玲奈が反応した。


「沢村さん。部下の中に、峰岸さんと接点があった人物は居ませんか?」


「…わからないわ」


「わからない?」


「部下と言っても、四六時中一緒に居るわけじゃないからね…。私の知らない誰かと繋がっていたとしても、それは私にはわからないのよ」


「…そうですか」


黙り込む玲奈を、結衣が見つめる。


「…なーんか、引っ掛かってるように見えるね」


「…別に」


その時、通路の方から、銃声が聞こえた。


「………」


最初に動いたのは楓。


「楓さん!」


すぐに凛が後を追い、それに続いて亜莉紗も部屋を出た。


「…結衣姉」


「…うん」


2人は同時に走り出し、すぐに立ち止まって顔を見合わす。


「…私が行くから、結衣姉が待っててよ」


「いやいや、逆だよ。私が行くの」


「先に動いたのは私だよ」


「年功序列ってね」


「その言葉、大嫌いなんだ」


「うるさい!口答えするな!」


「…はぁ。すぐにそうやって声荒げる」


「うるさいうるさいうるさい!私が行くの!」


「わかったわかった…。はい、どうぞ」


部屋に残っている明美は、そんな2人を微笑ましそうに見ていた。


結衣が出て行った後、玲奈がその視線に気付き、明美に視線を返す。


「…何でしょうか?」


「うふふ…。私から見たら、あなたの方がお姉ちゃんね」


「はぁ…」


玲奈は溜め息を吐いて、近くにあった椅子に腰を下ろした。



銃声の元を確かめるために、部屋を飛び出た楓と凛と亜莉紗の3人。


分かれ道で立ち止まり、楓が後ろに居る2人を見る。


「宮城、上条、お前らはこっちや」


「待ってください。1人で行く気ですか…?」


凛が訊くと、楓は鼻で笑って答えた。


「お前らに守られる程、落ちとらんわ。…何かあったら、適当に発砲して知らせるんやで」


「わかりました。…お気を付けて」


「おう」


指示された方の道へと走り出した2人を見送り、反対の道へと歩き出す楓。


「(…行くか)」


彼女には、"銃声の主はこちらに居る"という確信があった。



「ねぇ凛ちゃん。本当に大丈夫なのかな?」


ずっと走っている訳にもいかないので、しばらくした所で歩きに変えた2人。


「…何が?」


「楓さん」


亜莉紗は、さっき分かれた楓を心配していた。


「大丈夫よ。あなたと違って、楓さんは有能だから」


「あの…私なんか気に障るような事しましたっけ?」


「別に」


「(やっぱり冷たいよ~…)」


すると突然、凛が通り過ぎようとした扉を見て、立ち止まる。


「…どうしたの?」


「…誰か居る」


「へ?」


勢い良く扉を蹴って開け、銃を構えながら中に入る凛。


しかし、部屋の中は暗闇に包まれており、何も見えなかった。


「り、凜ちゃん…?」


その時、部屋の中が一瞬だけパッと光り、同時に、凛の足に激痛が走る。


凛は自分の足を見て、何者かに撃たれたという事に気付いた。


「ッ…!」


その場に崩れ落ちる凛。


「(今のは…銃の発火炎だ!)」


亜莉紗は素早くポーチの中から自製の閃光手榴弾を取り出して部屋の中に投げ込み、凛を部屋の外へと運び出した。


「傷は!?」


「大丈夫、足だけよ…」


「大丈夫じゃないでしょ!止血しないと!」


銃を取り出して部屋の中に何発か発砲し、隠れている敵を威嚇する。


敵に動きが無い事を確認した亜莉紗は、凛の腕を肩に回して立ち上がらせて、その場から離れた。


道中、亜莉紗の肩を借りている凛が、苦笑する。


「ふっ…。あなたに助けられるとはね…」


「いーから黙って傷口抑えてて!」


「はいはい…」


すると前方に、走ってこちらに向かってくる結衣の姿が見えた。


「凛!?」


凛の傷を見て、何があったのかを訊こうとする結衣を、亜莉紗が遮る。


「話は後!まずは部屋に行って止血だよ!」


「わ、わかった!」


しかしその時、背後から銃声が聞こえ、近くの壁に弾痕ができた。


それを見た結衣が、銃を取り出す。


「先に行って!ここは私が請け負う!」


「ありがとう!」


亜莉紗はその場を結衣に任せて、玲奈達が居る部屋へと急いだ。



一方…


「…やっぱりあんたか」


「ふふふ…。こんばんは」


2人と分かれた楓は、すぐに頭を撃ち抜かれた患者の死体と、それをやった恭子の姿を見つけた。


「…ウチの仲間に手ぇ出したらしいな」


「誤解ですよ。正当防衛です」


「やかましいわボケ。さっさと銃捨てろや」


楓は銃を構えながら、恭子にそう言う。


すると、彼女は突然、静かに笑い出した。


「ふふふ…」


「何がおかしいんや」


「あなたの軽率さですよ…」


「…なんやと?」


「周りをよく見てください。あなたはもう袋の鼠…」


銃を構えたまま、辺りを見渡す楓。


気が付けば、恭子の手下と思われる複数の人間が、楓に銃を向けていた。


「…こりゃ参ったわ。あんた、どっかの組織の人間やったんか」


「気付くのが遅すぎましたね…」


「ふん…」


楓は恭子を見て鼻で笑った後、ゆっくりと銃を下ろした。


第23話 終




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