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Desperate Girls  作者: 白川脩
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第21話


第21話

"閃光"


「大神姉妹の結衣さん、玲奈さんですよね?初めまして。私、峰岸恭子と申します。以後、お見知り置きを…」


「はぁ…ご丁寧にどうも…」


突然目の前に現れた恭子に、困惑する結衣。


玲奈はいち早く恭子の危険を感じ取り、警戒の眼差しで彼女を見ていた。


「峰岸…恭子…?」


「えぇ。…そんなに警戒しないでくださいよ。危害を与えるつもりはありませんから」


「…嘘つけ」


「はい?」


「目を見ればわかるよ。…あなたの目、いつか見た殺人鬼の目とそっくりだから」


ナイフを握り締める手に、力が入る玲奈。


「…不愉快ですねぇ。本当にそんなつもりはありませんよ」


「黙れ」


「…どうやら、仲良くできそうにはないですね」


恭子はそう言って溜め息を吐き、銃を取り出して玲奈に構えた。


「どうするんですか?ナイフと銃じゃ、結果は見えてますよ?」


「…そうでもない」


ニヤリと笑って、恭子に向かって素早くナイフを投げる玲奈。


そのナイフは恭子が持っている銃に当たり、彼女はその衝撃で銃を地面に落とした。


「ッ…」


「ほらね」


「流石は大神姉妹…。油断してしまいました…」


「(何もしてないなぁ…私…)」


そう思い、形だけでもと結衣が銃を構える。


「…結衣姉、今更構えてどうするつもり?」


「プレッシャーってヤツ…かな?」


「そんなのが通じる相手じゃ…」


その時、2人の足元に何かが転がってきた。


「また、お会いましょう…ふふふ…」


恭子がそう言った瞬間、結衣と玲奈の視界が突然真っ白になる。


それと同時に発生した"キーン"という強烈な音が、2人の聴覚までも一時的に奪った。


玲奈はこの現象を何度か体験した事があったので、すぐに何が起きたのかを知る。


「(フラッシュバンだ…!)」


一連の現象は、恭子が2人の隙を見て使った、閃光手榴弾による物だった。


当然、2人の視界が元に戻った頃にはもう、恭子の姿は無かった。


「私としたことが、迂闊だった…」


「…ま、今のはしょうがないっしょ?」


そう言った結衣を、玲奈が睨む。


「…結衣姉が変な所で銃構えるから」


「私のせい!?」


「…まぁいいや。ファイル探そ」


「(釈然としない…!)」


結衣は姉としての威厳を守る為に、湧き出てくる文句を飲み込んだ。


「…1つ、聞きたいんだけどさ」


「峰岸さんの事?」


ついさっき自分の命を奪おうとした相手にまで、"さん"を付けて呼ぶ玲奈に、驚く結衣。


「…本当、あんた誰にでも"さん"付けだよね」


「結衣姉は違うじゃん」


「だったら、結衣姉さんとか、結衣姉様とかでも良いんだよ?」


「…あの人、何か雰囲気が危なかったよね」


「…お、おう」


玲奈は、狂気を孕んだ恭子のあの不気味な目を思い出した。


「殺人を悪事だと思ってない。…暗い目だった」


「同業者では無いよね。峰岸恭子なんて名前、聞いたこと無いし…」


「聞いたこと無いだけかもしれないけどね。間違い無く、戦闘慣れしてる」


そう言いながら、投げたナイフを回収する玲奈。


「…と言っても、一般市民が銃を持っているハズもないから、同業者では無いにしろ、"そっち"の道の人だろうね」


「"そっち"の道の人…か」


「…考えてたって仕方ないね。行こっか」


「そうだね」


玲奈は疑惑を持ったまま、結衣と共に歩き出した。


「ねー玲奈」


「?」


「ちゃんと牛乳飲んでる?」


「…何で私の胸元を見てるの?」


「ちっせーなー、って思って」


「………」


「冗談冗談。ナイフしまって?」



その頃…


「凛ちゃん」


「…今度は何ですか?」


「あなた、ちっさいわね」


「………」


「靴のサイズ」


「…じゃあ、私の胸元を見てるのは何故ですか?」


「何故でしょう?」


「………」


6階を捜索している葵と凛は、適当に部屋を選んで中に入り、休憩している所だった。


「正解は、本当はあなたの胸の事を…」


「そろそろ行きましょうか」


勢い良く、椅子から立ち上がる凛。


「あら、早いじゃない」


「2分も休めば十分です」


「私は不十分よ?」


「…あと3分だけですよ」


「はーい」


凛は大きな溜め息を吐いて、再び椅子に腰を下ろした。


そんな彼女を見て、葵がこんな事を言う。


「もう…。あなたと楓ちゃん、溜め息吐きすぎよ。溜め息の数だけ幸せは逃げていっちゃうのよ?」


それを聞いた凛は、再び溜め息を吐きながら、心の中で呟いた。


「(誰のせいよ…)」


「こら!人のせいにしてはいけません!」


「す、すみません…。…え?」


心の中を読まれ、驚く凛。


葵は驚いている彼女の鼻の先に人差し指を付けて、いたずらっぽく笑った。


「うふふ…読心術ってヤツよ」


「…鼻を触る必要はあるんですか?」


「触ってみたかったのよ。どんな反応するかなー、って思って」


「…からかわないでください」


凛は顔を少し赤らめながら、鼻の先を触っている葵の指を払う。


すると、葵が立ち上がりながら、こんな事を呟いた。


「…うふふ、あの子にそっくり」


「…あの子?」


「さぁ、捜索再開よ」


「まだ3分経ってませんけど」


「気が変わったわ」


「…そうですか」


凛はそれ以上何も言わずに、葵と共に部屋を出た。


「そういえば凛ちゃん。あなた、どこからこの町に来たの?」


「どこから…ですか?」


「えぇ。もしかして、地下?」


首を横に振る凛。


「いえ。私は森の中を抜けて来ました。…道を指定されたのは初めてでしたけど」


「…あなたも指定されたのね?」


「…あなたも?」


「私と楓ちゃんもよ。しかも、私達は地下のルートを指定されたの」


「…待ってください。大神姉妹と上条は指定されていないんですか?」


葵は苦笑しながら答えた。


「聞き忘れたわ」


「…まぁとにかく、道を指定された理由は気になりますね」


「そうね。本人に聞いてみましょうか」


「え、本人って…?」


「そういえば、あなたはまだ会ってなかったわね。こっちよ」


階段へと向かう葵。


凛は黙って、彼女を追った。


階段の所まで来た時、葵が突然立ち止まる。


「…どうしたんですか?」


「…禍々しいわね」


「はい?」


葵は階段の下を見下ろして、刀を抜きながら凛にこう言った。


「銃、構えておきなさい」


「わ、わかりました…」


状況を飲み込めないまま、葵の指示に従う凛。


すると、誰かが階段を登ってきた。


現れたのは、大神姉妹の2人から逃げてきた恭子。


逃げてきたとは言っても、彼女は全く焦らずに、ゆっくりと歩いてここまでやってきた。


階段の上に居る葵と凛を見つけて、恭子は微笑む。


「こんばんは。神崎葵さんと、宮城凛さんですよね?初めまして。私は…」


「峰岸恭子…」


葵は彼女の名前を呟き、刀を抜いたまま階段を降り始めた。


「…葵さん?」


「あなたは下がってなさい」


付いて来ようとした凛を、止める葵。


そして恭子の元に着くなり、刀の刃先を彼女の顔の前に突き付けた。


「…ご挨拶ですね」


「…あなた、相変わらずね」


「おや、何の事でしょうか?」


「その狂気よ」


「ふふふ…。人間、根本的な部分は変わらないものですよ」


「…それもそうね」


葵は鼻で笑った後、突然刀を振る。


恭子はそれを素早くしゃがんで避けると、銃を取り出して葵の首元に突き付けた。


「少し、動きが鈍ったんじゃないですか?」


「こっちのセリフよ」


葵の言葉を聞いたのと同時に、恭子は頬に違和感を感じる。


手で触ってみると、浅い切り傷が付いていた。


「…現状は私の方が有利です」


「それはどうかしらね」


「何を言って…」


そこまで言って、言葉を切る恭子。


気が付くと、葵の刀の刃先が、恭子の首元に突き付けられていた。


「階段の上に居る凛ちゃんの存在も考えれば、私が有利ね」


「…ふふふ」


お互いに武器を突き付けられているにも関わらず、似たような笑みを浮かべる2人。


そして次の瞬間、凛が恭子の銃を狙って、引き金を引いた。


発射された銃弾が恭子の銃を撃ち抜き、彼女の手に衝撃を走らせる。


しかし、恭子が閃光手榴弾を地面に投げたのも、それと同時の事だった。


第21話 終




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