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Desperate Girls  作者: 白川脩
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第13話


第13話

"合流と変更"


「今向かってる所。そっちはもう着いたの?」


電話越しに、玲奈に訊く結衣。


『うん、全員無事だよ。そっちは大丈夫?』


「愚問だね」


『…あとどのくらいで着きそう?』


「10分、20分くらいかな」


『了解。入口で待ってるね』


「はいよー」


「…妹か?」


携帯をしまう結衣に、楓が確認するように訊いた。


頷く結衣。


「うん。もう着いたって」


「えらい早いな」


「言ったでしょ?」


「ふん…」


楓はこちらのペースが遅いと呟こうとしたが、面倒臭い事になりそうなので止めた。


しばらく歩き、死屍累々の住宅街に辿り着いた3人。


辺りに転がっている死体の傷を見て、葵は誰がやったのかを判断し、わざとらしくこう言った。


「あら、この辺りは随分と死体が多いわね」


「今度は正真正銘、玲奈達がやった後だね」


「…えらい派手にやったもんやな」


所々にある爆発の痕を見て、楓が苦笑する。


それは、亜莉紗の地雷が付けた物であった。


「…あ、玲奈の奴、銃使ったな」


結衣が1つの死体を見ながら、そう呟く。


「どうしてわかるの?」


そう訊いてきた葵に、結衣は死体の首元を指差しながら説明した。


「玲奈は、狙いを少し下にずらす癖があるんですよ。だからほら、首辺りに銃創がある死体が多いでしょ?あいつが頭を狙った証拠です」


「なるほどねぇ…」


「にしても大神の妹、中々やるやないか。全部、首から上に当たっとるで」


玲奈がしとめた患者の死体の銃創を見て、感心する楓。


すると、結衣が得意気な顔になって、彼女を見た。


「そりゃあ、私の妹だからね」


「…ほう、言いよるな」


「私と同じ血が流れてるんだから、射撃もできて当然…ってね」


「…まぁ、お前の腕はウチもよう知っとるさかい。その通りかもしれんな」


「!?」


信じられないといった様子で、楓を見る結衣。


「…どないした」


「楓がデレたの5ヶ月ぶりに見た!」


「………」


「デレたデレた!楓がデレたよ葵さん!」


「え、えぇ…?私に振ってくるの…?」


困惑する葵の隣で、楓は大きな溜め息を吐いた。


その付近の患者は玲奈達が倒した集団が全てだったらしく、3人は一度も武器を構える事無く、住宅街を抜ける事ができた。


そこから5分程歩いた所で、突然結衣と葵が立ち止まる。


「…なんや?」


楓がそれに気付いて振り返ると、立ち止まった2人は全く同じ言葉を全く同じタイミングで同時に叫んだ。


「疲れたーッ!」


「…はぁ?」


呆然とする楓。


「ちょっとぐらい休もうよー。疲れたよー」


「そうよ。人間、休息は大切なんだから」


「あと少しやで?」


「騙されないよ!そんな言葉にはね!」


「…いや、もう目の前にあるやないか」


「いい?楓ちゃん。目の前ってのは"目"の"前"にある事を言うのよ。何百メートルも先にあるのに目の前とか言われたらイラっとするじゃない」


「(こっちがイラっとしてきたわ…)」


今日だけで何回目なのだろうと思いながら、再び溜め息を吐く楓。


2人にこれ以上歩く気が無い事を悟った彼女は、仕方無さそうにこう言った。


「…5分だけな」


「よっしゃー!」


「やったー!」


「(…上条、代わってくれへんかな)」


すると、彼女の気が休まる間もなく、結衣が何かを見つけて声を上げた。


「あ!あんな所に自動販売機があるよ葵さん!」


「まぁ!丁度喉が乾いてたのよね!」


そう言って、楓を見つめる2人。


楓は何かが吹っ切れて、力無く笑った。


「(なるようになれや…もう…)」



その頃…


先に合同庁舎へと到着した玲奈達は、退屈しのぎにしりとりを始めていた。


先攻は凛。


「射る」


続いて玲奈。


「ルアー」


尚、亜莉紗は始まる前から不参加を希望していた。


「(直感でわかるね。…この2人には勝てないって)」


次の番は凛。


そこからはお互い、2秒以内でひたすら言葉を出し合った。


「"飽きる"」


「"ルーム"」


「"むせる"」


「"ルビー"」


「"ビル"」


「"ルーキー"」


「"消える"」


「"ルーマニア"」


「"アイドル"」


「"ルージュ"」


「"ジュエル"」


「"留守"」


「"スキル"」


「"ループ"」


「"プロフィール"」


「"ルール"」


「"累積"」


「"気取る"」


「"ルクセンブルク"」


「"クロール"」


「あの…止めてください」


亜莉紗が、2人を止めた。


「ふぅ…。中々やるわね、玲奈ちゃん」


「そっちもね、宮城さん」


「(おかしいよ!この2人やっぱりおかしいよ!)」


それから更に待つ事約10分。


やっと、こちらに歩いて来る結衣達3人の姿が見えた。


「…やっと来た」


不機嫌そうに呟く玲奈。


凛も同じ様子であったが、亜莉紗だけは違った。


「結衣ーッ!」


「うわ、どしたの」


到着するなり突然、亜莉紗に抱き付かれ、困惑する結衣。


「常人って素晴らしいね!ずっと友達でいてね!」


「え、えぇ…」


そんな2人を傍らに、楓は凛の元へ。


「遅なってすまんかったな」


「いえ。…どうせ、結衣が足を引っ張ったんでしょう?」


「…葵さんもや」


「…ご苦労様です」


そんな中、葵は1人で合同庁舎の入口の前に立って、建物を見上げていた。


「………」


そこに、玲奈がやってくる。


「…嫌な予感がする、って、顔に書いてありますよ」


「…あら、凄いわね」


図星を指された葵は、玲奈を見て誤魔化すように微笑んだ。


「…私もなんです」


玲奈のその言葉を聞いた葵の表情が、普段の余裕に溢れている表情から、いつになく真剣な真顔に変わる。


「何となく…ですけど」


付け足す玲奈。


すると、葵はいつもの表情に戻って、こう言った。


「うふふ…。予感っていうのはそういう物よ。…行きましょうか」


「…はい」


2人は他の人を置いて、先に合同庁舎へと入っていった。


薄暗いロビーを見て、患者の奇襲に備える2人。


2人の視界を照らす明かりは、窓から差し込む月明かりだけである。


「…私が後ろを見ますね」


「ありがとう」


すると、すぐに後を追ってきた4人が、2人の元へと走ってきた。


玲奈に詰め寄る結衣。


「おい玲奈!実の姉を置いてくなんていい度胸だね!」


「葵さん、どうかしたんですか?」


先頭に居る凛が、心配そうに葵を見る。


玲奈と葵は顔を見合わせた後、4人に視線を戻し、ある提案をした。


「10階建てを全員で回るのは得策とは言い難いわ。また、手分けをしましょう」


「階が多いから、2人1組でね。私は神崎さんと行く」


その提案に4人は賛成して、結衣と亜莉紗、楓と凛の2組に分かれた。


「まずは1階、2階、3階よ。私達は2階を調べるから、結衣ちゃん達は1階、楓ちゃん達は3階をお願い」


「了解っす!」


「了解や」


3組はそれぞれ、合同庁舎の捜索に取り掛かった。


第13話 終




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