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Desperate Girls  作者: 白川脩
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第10話


第10話

"合同庁舎へ"


「ここだよ」


先頭を歩いている結衣が、床に書類が散乱している例の部屋の前で立ち止まった。


その部屋の扉の惨状を見て、楓が眉をひそめる。


「…えらい壊れとるな。誰がやったんや」


「…私です」


「…嘘やろ?」


「扉の向こうに敵が居るって思ったら、つい連射を…」


その会話を聞いて、玲奈がある事を思い出した。


「(あの時の銃声、この人の物だったんだ)」


「ほら、早く行くわよ」


そう言って、一番先に部屋へ入っていったのは葵。


「待てや」


すぐに、楓がその後を追う。


続けて入ろうとした結衣を、凛が止めた。


「待って」


「どした?」


「この狭い部屋の中で患者に襲われたら危険だし、見張りを立てておいた方が良いんじゃない?」


その意見に、玲奈が賛同する。


「確かに必要だね。誰が残る?」


「じゃあ、凛と玲奈、見張りよろしく!」


凛と玲奈は、結衣を二度見した。


「…え?」


「…結衣姉、何で私達なの?」


「いや何となく。行くよ亜莉紗」


「は、はーい…」


部屋に入っていく結衣と亜莉紗。


取り残された玲奈と凛は、キョトンとしながら顔を見合わせた。



「最近の若い子は、本当に片付けをしないわねぇ…」


部屋の中の散らかり具合を見て、葵がそう呟く。


「片付ける前に、患者が襲ってきたんやろ。…若い子って、幾つの連中の事を言ってるん?」


「二十代!」


「…葵さん、幾つや?」


「27よ」


「………」


すると、机の上の書類を調べていた結衣が振り向いて、楓の方を見ながらこう言った。


「この部屋が散らかってる原因はズバリ、"片付けたんだけど、その後に患者が荒らした"だよ。片付ける前に襲われたってのは間違ってる!」


結衣のその推測を、亜莉紗が否定する。


「違うよ。"片付けたけど、その後誰かが荒らした"って考え方が普通でしょ」


「いやいや患者でしょ」


「患者が荒らす理由が無いよ。荒らしたのは人間だってば!」


「人間って誰?」


「…さぁ」


そこで楓が、2人の会話を終わらせようとする。


「…そんなんどっちでもええやろ。さっさとファイルを探そうや」


「いや、どっちでもよくないのよ。楓」


「そうなんですよ。楓さん」


「………」


すると、葵が得意気な顔になってこう言った。


「わかったわ!"片付けた後、患者と人間に荒らされた"…で間違いないはずよ!」


「おぉ~!」


「流石は葵さん!」


「(何やねん、こいつら…)」


その後、やっとファイルを探し始めた楓以外の3であったが、3分も経たない内にやる気を無くした。


「やっぱり多いよ~」


「見つかる訳ないよ~」


「…腰が痛くなってきたわ」


「………」



その頃…


「…あなたが大神姉妹の妹?」


「…はい」


見張りとして外に残った凛と玲奈の2人。


凛は玲奈に興味があるらしく、珍しく自分から話し掛けていた。


「名前は確か…玲奈ちゃんだよね。私は…」


「…凛さんでしょ?結衣姉から電話で聞いた」


「…そうなんだ」


しかし、普段から口数が少ない凛は、話し掛けようとしてもどう話して良いのかがわからない。


すると、今度は玲奈が口を開いた。


「…名字は?」


「…え?」


「名字」


「…あぁ、宮城だよ」


「…宮城さんね」


「うん」


再び沈黙が訪れる。


その沈黙の原因は、互いに発言の機会を譲り合っていたからであった。


「(…玲奈ちゃん、あんまり喋らない子なんだな)」


「(…宮城さん、あんまり喋らない人なんだな)」


気まずい空気が流れ始めたその時、部屋から4人が戻ってきた。


「早かったね。どうだった?」


玲奈の質問に、楓が答える。


「無駄足やったわ。病院にも無かったから、あとは合同庁舎やろな」


「そっか」


6人は警察署を出る事にした。


「ねぇ、お2人さん。合同庁舎までの道のりはわかるの?」


葵が歩きながら、結衣と玲奈に訊ねる。


「道はわからないけど、場所ならわかるから大丈夫」


答えたのは玲奈。


「…どういう事?」


「町の中央に建ってるバカデカい建物、あれが合同庁舎だよ」


そう説明したのは、結衣だった。


「ちなみにさ、合同庁舎にも無かったらどうするの?」


そう言った亜莉紗に、凛が返答する。


「その場合は、依頼主に連絡。…まぁ、そんな事は無いと思うけど」


「…そういえば、あなた誰?」


「…今更?」


「私は上条亜莉紗。あなたは?」


「…宮城凛」


「凛ちゃんって言うんだ。よろしくね!凛ちゃん!」


「(こういう人苦手だなぁ…)」


それから間もない内に、出口に辿り着いた。



警察署を出た6人はまず、遠くにそびえている合同庁舎を見つめる。


「遠いわね…」


「面倒やな…」


「帰りたーい…」


あまり行動的では無い葵、楓、結衣の3人が溜め息を吐く。


逆に玲奈、亜莉紗、凛の3人は、合同庁舎の位置を確認するなり、すぐに歩き始めた。


「元気ねぇ…あの子達…」


「…行こか」


「帰りたーい…」


3人もしぶしぶ歩き出す。


その時だった。


先に歩き始めた3人と、後からそれを追う3人の間に、轟音と共に巨大生物が飛び降りてきた。


「うわびっくりした!」


「…どこから来たんや」


「警察署の屋上から、飛び降りてきたみたいね」


「えらい頑丈なやっちゃな…」


先に歩き始めた3人も、こちらの異常に気付く。


3人がこちらに来ようとした時、葵が刀を抜きながら3人にこう言った。


「あなた達は先に行ってて!後で合流しましょう!」


「でも…」


戸惑う玲奈であったが、結衣も葵と同じ事を言う。


「大丈夫!ここは私達に任せて!早く!」


「…わかりました!庁舎の入り口で待ってます!」


凛がそう言い、他の2人を引っ張って走り始めた。


3人を巨大生物が追おうとしたが、楓がその足を撃ち抜き、阻止する。


「…なぁ、6人でやった方が早いやないか。何で先に行かせたん?」


楓の質問に、葵が答えた。


「あの子達に死んでほしくないのよ」


「…ウチらはええっちゅう事か?」


「あら、あなた達2人はこんな奴にやられる程度なのかしら?」


「へっ…よく言うわ…」


「あなたも同じ理由でしょ?」


葵が結衣を見る。


「え?私は、玲奈の歩くペースが早すぎるから分かれたかっただけですけど…」


「………」


「………」



一方…


「…ここまで来れば大丈夫ね」


巨大生物との戦闘を葵達に任せ、先に合同庁舎へと向かった3人。


ある程度走った所で凛が立ち止まり、巨大生物が追ってきていない事を確認した。


「よし、行こっか」


「そうね」


歩き出す玲奈と凛。


1人、止まったままの人物が居た。


「ちょっと…休まない…?」


息を切らしながら懇願する亜莉紗。


しかし、玲奈と凛の2人は全く疲れていないらしく、止まらずに歩き続けた。


「何してんの、行くよ」


「ひぇ~…」


亜莉紗は仕方無く、2人の後を追う。


すると、5分程歩いた所で、ある事に気付いた。


「………」


「………」


「(え、何この空気)」


一言も発さずに、ひたすら目的地へと歩き続ける玲奈と凛。


亜莉紗は思い切って、話し掛けてみる事にした。


「ね、ねぇ2人共。何か話さないの?」


「………」


「………」


「ほら、お互いの事を知っといた方が色々と…」


「………」


「………」


「あ、UFOだ!」


「………」


「………」


「(あああぁぁぁッ!)」


急に叫びたくなった亜莉紗は、心の中で悲鳴を上げた。


第10話 終




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