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夏の最後の思い出作り


八月が終わり、九月が訪れた。

夏の盛りが終わったとは言え、暑い日は変わらず続いていたが、アーファブル大陸の情勢は以前と大きく変わって居た。


カーレント国が戦に敗れ、その隣国のディザン王国が、ついに侵攻されたのである。


カーレント国を経由した、大陸南部からの侵攻であり、これに対してディザン王国は首都からの援軍を南に送った。


その数はおよそで3千人。


動員できる兵士の内の3割程度という事らしい。

兵の7割は首都に残し、無法地帯からの侵攻に備えているという事だが、南ディザンが陥落すれば、王国の命運が風前の灯火と言うのは誰の目にも明らかだった。


現在、ラーズ公国には、無数の亡命者が殺到しており、皮肉な事にこの事により経済効果が発生していた。


それは、ラーズ公国が始まって以来の飛躍的な成長というものだったが、その原因が原因だけに、殆どの者が素直には喜べていないと言う状況だった。


騒乱の火種は大陸中に広がり、ラーズ公国にもその火は届こうとしている。


そんな中で彼女達が久しぶりに我が家を訪ねて来たのだ。




九月の三日。

晴れの日の午後。


その時の私は稽古を終えて、暇潰しにフェネルとバトルをしていた。


キッチンの近くのテーブルに陣取り、ジュースを片手の適当なバトルで、視線は今は掃除をしているレーナの背中に釘づけだった。


「ちょっとぉ~。随分とヨユーじゃないっすかぁ?久しぶりのファイナルバトルなんだから、もっと集中してくれませんかねぇ!?」

「仕方ないだろう…長いんだよお前は。結果として自滅とかをするんだから、無駄な長考と言わざるを得ん。黙って待ってやっているんだ。そこには文句をつけんでも良かろう」


フェネルに言われ、そう返す。

聞いたフェネルは不満げだったが、思い当たる節があるのであろう、「ちぇっ」と言って顔を戻した。


「そう言えば就活はどうなって居るんだ?まさかこのままグダグダやって、ここに転がり込もうと思ってるんじゃないだろうな?」


その言葉には「まさか」と言ってくる。

何やら自信に満ちた顔だ。


「見つかったのか?」


と聞くと、「まぁ」と返すので、どういう所かと質問してみた。


「姉さんに寄生して生きて行く事にしました。パンツとか服とか、靴とかを売るんです。で、売ったお金でプレゼントして、飽きた頃には盗んで売り捌く。これって完璧なリサイクルシステムですよね?」

「盗むと言う点を除けばな…」


それにはもはや呆れるしか無く、それしか言えない私である。


「というか、エリスもバカじゃないんだ。しょっちゅうモノが失くなれば、何か怪しいと思い出すだろう?」

「いやいや、多分思わないですよ。モノに対する執着が無いんです。新しい服を買ってきたと思っても、一回着ただけで着なくなりますからね?多くても二回とか、三回とか。逆に気に入ったのは何度も着ますけど、そういうのはホントに滅多に無いです。てわけで商品と在庫はたっぷり、僕の未来は明るい訳です」


質問するとそう返されたので、犯罪に手を染めていると言う意味で「真っ暗だと思うが…」と言って置いた。


「生涯収入が3億を越えれば最終的には勝ち組ですよ。例え人生の何割かを陽の当たらない場所で過ごすとしてもね……」


独自の理論を展開し、フェネルが「ターンエンド」と言った。

犯罪だと分かっては居るんだなと思い、私は山札からカードを取る。


「あ、先生、お客さんです。玄関の方に回って貰ったんで、すみませんけどお願いします」


言ってきたのはルニスであった。

「ああ」と返すとドアを閉め、診察室の中へと戻る。


「行って来ましょうか?」


と、レーナが言うので、「いや、私が行くよ」と答えて置いた。


「敵前逃亡は死刑であるぞォー!!」


騒ぐフェネルには「後でな」と言い、軽くかわして玄関に向かう。


「じゃあレーナさん、先生と交代して下さい。どうせクソ長い話になるし」


と、フェネルはすぐにもレーナに頼み、「はいはい…」と、仕方なく返されていた。


キッチンを出て玄関に向かうと、そこには懐かしい顔があった。


「お久しぶりです」


と、揃って言うので、私も同様の言葉を返す。

そこに居たのはラミアのロニアと、その恋人のクラスであった。


「あの、それは一体…?」


それに加えてもう一人、そこには人が存在しており、疑問に思った私は指さして、それの正体を二人に聞いてみた。


指さす場所はロニアの腕の中。


そこには一人の赤ちゃんが居て「あぶあぶ」と何かを言っていたのだ。


「あ、私達の子供です。少し前に生まれたんです」


その質問にはクラスが答え、隣のロニアと「アハハ…」と笑う。


「ま、そう言う訳なんだ」


と、ロニアがこちらを向いたので、「そう言う訳か…」と言葉を返した。


「(ラミアの子でも見た目は普通だな…それとももう少し大きくなったらどこかに変化が現れるのかな…?)」


興味本位でしげしげ見るが、まさかそれを聞く訳には行かない。

故に私は少々見た後に、「まぁ、上がってくれ」と二人に言った。


「レーナ、ロニアだ。飲み物を持って応接間に来てくれ」


そして、真っ直ぐの廊下を歩き、キッチンのドアを開けてレーナに教える。


「えっ、本当ですか!?分かりました、すぐに行きます!」


そんな喜びの顔を見てから、ドアを閉めて後ろを向いた。


「どうぞ」


言って、応接間のドアを開ける。

二人が入った後に続き、手前のソファーに腰を下ろす。


正面にはロニアとクラスが座り、赤子が「きょろきょろ」と周りを見ている。


「それで今日は?」


と、理由を聞くと、ロニアが無言で札を出してきた。




テーブルの上に置かれたそれは、札と言うよりは符というものだった。

何が書かれているかはさっぱりだが、絵と、文字が記されていたのだ。


形は長方形で、20㎝程の大きさ。

中心付近に目のようなものが描かれた、薄気味悪い符と言えた。


「これは一体…?」


右手に取って質問してみる。

返って来た言葉が「さぁ」というもので、直後の私は眉根を下げる。


「ここに来る途中で襲われたんだよ。アブなんとかのオーク兵にね。それはクラスが倒してくれたんだけど、そいつの背中にそれがあってさ。何だか気になる感じだったから、一応はがして持ってきたって訳」


が、ロニアが続けた言葉によって、「なるほど」と言って真顔に戻れた。

私は医者で、研究者では無く、こういう方面には全く無知だ。


しかしながらこの符に何か、意味があるのは理解が出来る。


「少し預かっても?」

「その為に持ってきたんだよ」


聞くと、ロニアは笑って言った。


「実はもうちょっとでオムツになる所でした」


と言う、クラスには「ちょっと!」と慌てて見せている。

私はそれに笑いをこぼし、その符を両手に二人を眺めた。


「ロニア~久しぶり~!」


そこへレーナが姿を現す。


トレーの上にはオレンジだろうか、橙色のジュースが乗っている。


「久しぶり~~!!元気してたぁ~?!」


言われたロニアがすぐに立ち上がり、レーナが近寄って二人は対面した。


「えーーー!?それ、その子ってもしかして!!?」


赤子を目にしたレーナが驚き、トレーの上のジュースが揺れる。

一方のロニアは「あはは…」と笑い、「あたしの子供…この間産まれたんだ」と、少し照れ臭そうにそれに答えた。


「可愛いー!目元とかロニアそっくりじゃーん!」


ガールズトークの始まりである。


私とクラスは顔を見合わせ、お互いに「タハハ…」と苦笑いした。


「そう言えば名前は?」


二人を置いてクラスに聞いてみる。


「ああ、男の子なんでホープにしました。希望、という意味ですね」


その返答には「良い名前ですね」と言う。


「ありがとうございます」


と、クラスが言って、私が「いやいや」とそれに返した。


「ちなみにこちらへは何をしに?彼女の話を聞く限りでは、これは途中で拾ったようですが?」


右手に持った符を見せて、話題を変えてクラスに聞いてみる。

この時にはロニアも再び座り、レーナがジュースを置き出したので、乗り出していた身をソファーに戻した。


「いや、実は少し前から、ロニアの体調がおかしくなってきて、かと言って普通の医者にも見せられないしで、先生の元を訪ねようとしたんです。でも、ディザン王国に入った頃には体調も随分良くなったみたいで……今はもうご覧の通りです」


クラスが答え、最後に微笑む。

聞いた私も理解して、「なるほど」と言って微笑んだ。


おそらくロニアとクラスが住む村は、例の「塔」の範囲に入っている。

魔物であるロニアにはそれが作用し、体調の悪化に繋がったのだろう。

範囲の外に出たから治った。


そう考えれば説明がつくが、私はそれを言うべきか迷った。

言ってもどうしようもないと言うのが、迷う最大の理由である。


そんな事を言われてしまっても、彼らの家はそこにある訳で、そこに帰れなくなるような事を言われてしまっても困るだけだろう。


だが、だからと言って言わずに居るのも、ロニアと赤子の為には良く無く、その板挟みになったが故に、私は一人で迷っていたのだ。


「え!カーレントが!?マジで!?」


左前方でロニアが言った。

正面のレーナが教えたらしい。


「あ、いや、イグニスがやられたのは知ってたけど、カーレントもやられたんだ?駄目だねー田舎は…情報が遅れてるわー」


言葉を続けて息を吐き、「やれやれ」と言った顔で頭を振った。


「(やはり話しておくべきだな…)」


と思ったのはこの時。


何も言わずに帰してしまえば、彼らは帰り道で大変な目に遭う。

最悪、三人の内の誰かの命が、失われるかもしれない訳だ。

彼らとしては少々困ろうが、そうなるよりは遙かにマシだろう。


「ちょっと良いかな?」


そう思ったが故にロニアに言って、各地の塔の出現と、その事による魔物に対しての関連性を教えたのである。


「それは…大変な事ですね…」

「い、一体何がしたいんだそいつ…?良い迷惑だよそんな事…」


全てを聞いたクラスが言って、それに続いてロニアが言った。

長い話でジュースは無くなり、赤子は「すやすや」と寝息を立てている。


「反抗する魔物の討伐の為、と言うのが、現時点では一番有力な説だ。現にラーシャスやフェンリルと言う、強力な魔物も力を失っている。半魔の私には効かないらしいが、純粋な魔物であればある程、効果は大きいという話だった」


それを見てからそう言うと、ロニアが「マジかよ…」と小さく言った。


「だったらアブディクル帝国の先陣は、その影響を受けないんですか?殆どが魔物という事じゃないですか?」


これはクラスが聞いて来たもので、それにはいつかラーシャスが言った「条件が同じならその通りですが…」というものを答えに選ぶ。


「向こうだけに何かがあるなら、不利なのはそれが無い魔物だけ、ですか…」


それだけで分かったのかクラスが呟く。

私がそれに小さく頷くと、クラスはロニアの顔を見つめた。


「兎に角、今は帰るのは危険です。幸い客室が空いているので、良ければそこに泊まって下さい。レーナもきっと喜ぶでしょうし」


話題を変えてそう言うと、クラスが「どうする?」とロニアに聞いた。


「あたしは別に構わないけど…」

「それでは少しお世話になります」


返って来た言葉がそれだったので、こちらに向いてそう言った。


「ちょっと赤ちゃん抱かせてよ」

「大丈夫~?」


直後にはレーナがロニアに近付き、苦笑いをされつつ赤子を渡される。


「あ、あれっ?ちょ、ちょっと、ちょっと嘘ォ!?」


そして、すぐにも赤子が泣き出し、私達は全員で笑うのである。


「(この符はフォーリスにでも渡して置くか。本部にならば分かる者も居るだろう)」


そう思い、符をしまった私だが、この符の謎は意外な所から解明される事になるのである。




それから二日後。

九月五日の朝の事。


我が家にまたも客がやってきた。


こちらはあまり久しぶりでは無いが、ある意味で意外な訪問者であり、迎えた私は玄関先で驚き、「ど、どうしたんだ?」と相手に言っていた。


「いや、どうしたと言われても、約束を果たしに来ただけなんだが…」


聞かれた相手、ラルフが言って、後ろに立っているシーナが笑う。

私から見て左後ろには、ラルフの妻のフィーナが居たが、こちらは眉毛一つ動かさず、我が家の外観を観察中だった。


思わぬ客に困惑しつつ、それでも何とか「約束とは?」と聞く。


「快復したら訪ねて行くと、病床の場で誓ったはずだが?」


すると、ラルフがそう言ったので、そこでようやく両手を叩けた。


「という事は治ったのか!?」


が、直後には再び驚き、その顔を見てラルフが微笑む。

後ろのシーナは「ぷっ」と吹き出し、顔を逸らして口を押えた。


「おそらくな。こうして歩けるし、実際の所、死神はやって来ん。治って居なければとうの昔に、奴と一緒に旅立っていただろう」


その言葉には「そうか…」と返す。

近くに友を亡くしたばかりの私には本当に嬉しい事で、人生をかけて治療法を見つけてくれた、アールへの感謝はやむ所が無かった。


「まぁ、とにかく入ってくれ。レーナもルニスもきっと喜ぶ」


笑って言うと、ラルフは「いや」と言う。


「な、なぜだ?」


と聞くと「時間が惜しい」と言い、私を若干疑問顔にさせた。


「こういう情勢だ。バカンスというものにも時間的制限が付きまとう」


続く言葉に更に疑問し、「どういう事だ…?」と言葉にして聞く。


「つまりな、海に行きたいのだ」


と、ラルフが真顔で言った事で、「はァ?」と返してしまうのである。


「世界の8割を占めているという、塩分濃度の高い水の事だ」

「い、いや、それは知っているが、どうして海に行きたいんだ?」


何かを誤解してラルフが言うが、そこは私も一応知っていた。

その上で知りたい所を聞くと、ラルフはようやく説明をしてくれた。


「生まれて此の方行った事が無いからだ。ヴァンパイアというものは流れる水をどういう訳か苦手としていてな。そうなってからは余計に行けなかった。それに、楽しい思い出を今の内に作りたい。となると、やはり海しかないだろう」


真顔で言うので「そうか…」と返す。

一応それで理解は出来たが、展開の早さには困惑していた。


「アブディクル軍は待ってはくれんぞ?さぁ早く、話を纏めて来い」


そんな私の尻を押し、あくまで真顔のラルフが言ってくる。

仕方が無しに皆に伝えると、ルニスを中心に大賛成が上がった。


この事により私達は、ラルフの一家に私とレーナ、それにルニスとロニアとクラス、挙句に二人の赤子を連れて海に行くと言う事になった。


「いつもの少年は連れて行かないのか?彼が居ると賑やかで良い。ついでに姉上も誘って見てくれ」


これは、街へと向かう途中で、ラルフが言った言葉であった。

それには「どうなっても知らんぞ…」と返し、レーナと共にアンブレー家を訪ねる。


「行く行く!そりゃあ行きますよ!姉さんも行くよね!?海だってー!!」

「ホントにー!?行く行く!そりゃあ行くわよ!」


たまたま祝日と言う事もあって、二人はすぐにそれに飛びついた。

結果、赤子を含めた11人と言う数で、海へと向かう事になったのである。


「赤ペンキなんて持って行ってどうすんのよ!?えっ!?ロリノッポの股間に塗るぅ!?バカじゃないの!ソッコーで捕まっちゃうでしょ!」

「大丈夫大丈夫!センセーなら「いや、コレは模様ですから」とか言って、うまい事乗り切ってくれるはずだって!」


そんな声が聞えて来た為に、レーナと共に苦笑いする。


「むしろ姉さんの水着のがヤバイでしょ!?切れ込みヤバ過ぎ!らめぇえ!見えちゃううううう!!」

「見るなバカ!!」


その光景には興味はあったが、「ごほん」と咳込んで誤魔化しておいた。

それからおよそ10分後、準備を終えて二人が出て来る。


「じゃあ先生、お願いしますねぇ」


と、後ろに母親がついて来たので、「わ、分かりました」と言って頭を下げた。

その髪型は言わばドリル。


「ああこれぇ?ハンマンハッポで負けちゃってー♡」


と、言い訳した彼女に合わせて笑う。


「ハンマンハッポって一体なんだ…?」


去った後にフェネルに聞くが、返された言葉は「さぁ…?」というもの。

一方のエリスも首を振り、ハンマンハッポは謎となった。


アンブレー家を出発し、馬屋の前でラルフ達と合流する。

それから馬車を二台借りて、海辺の街のレフに向かった。




砂浜にはあまり人が居なかった。

季節が若干外れている為か、或いはこれから集まってくるのだろう。


砂浜に入り、更衣室を見つけて、私達は持参の水着に着替える。


「見かけによらず凄いモノを持っているね。その水着で隠し切れるかな?」


と言う、ラルフの対象はクラスであり、一体ナニが何だったのかは、敢えて気にしないようにしておいた。


「先生には水着を持ってきてあげました!選ぶのに苦労したんですよぉ?」


こちらはフェネル。

渡されたのは2㎝強の絆創膏である。


「隠せるかッ!!」


流石の無謀に受け取らなかったが、フェネルは「えー…」と不満顔だった。


私とクラスがトランクス型の水着に、フェネルがブリーフ型の水着に着替える。


最後にラルフがスク水型に着替え、縞々模様に全員が引く。

挙句に頭にはスイミングキャップまでかぶり、「どうだ?」とまさかのドヤ顔である。


「あー…そう言えばルニスはどっちに行ったんだ?」


誤魔化すようにそう聞くと、フェネルが「え?あっちでしょ?」と言った。


「それは不味くないか?」


と言うより早く、隣の更衣室から悲鳴が上がった。

助けを求める悲鳴では無く、驚きから上がる悲鳴である。


実際の言葉は「ヤダ~~~~♡」と言うもので、おそらくはだが興味津々に何かを眺めているのだと思われた。


「大丈夫ですか?そんな水着で?」


とは、ラルフの妻のフィーナの言葉で、言われたのだろうルニスはそれに、「あ、ちゃんと前張り貼っとくんで…」と、照れ臭そうに返答していた。


「興奮した時に剥がれるんじゃないのか?いや、むしろ今は貼れるのか?」

「真顔で言うのはやめてくれるか…」


ラルフが言って私が言った。


「どういう事ですか…?」


と、疑問するクラスには「まぁ色々と…」とだけ答えて外に出た。


女性陣が現れたのは、それからおよそ5分後の事。


「(おぉ~…)」


殆ど全員がビキニであったので、私のテンションが密かに上がる。

唯一、ルニスの下半身は短パン型の水着であったが、これはあれを隠す為には仕方が無い対処と言えた。


「あれ?姉さんあの水着じゃないの?家ではVの字みたいなの着てたじゃん?」

「なっ!?」


フェネルの言葉に全員が驚く。

言われたエリスは顔を真っ赤にし、「あ、あれは冗談よ!本気な訳無いでしょ!?」と、一応の言い訳を展開している。


「見たかったなぁ~?」


と言うルニスには、背中を叩いて「やめてよ!」と言い、「V字って…」と慄くレーナには「冗談だから…!」と取りすがっていた。


「(こうして見るとルニスが一番か…エリスも意外に大きかったんだな…反してフィーナが一番小さいか…って、何を評価しているんだ私は…!)」


見て、評価をした後に思い、私は慌てて首を振った。

ちなみに一応書いておくと、ルニス>ロニア>エリス>シーナ>レーナ>フィーナという順で胸のサイズは小さくなるようだ。


平等では無いのでこちらも書くと、クラス>…えっ?ああ、必要無いか……


「さて、それではお楽しみと行こうか。早速だがスイカ割りとやらを見てみたいのだが」

「あ、ああ、そうだな、それでは買って来よう」


ラルフに言われ私が動く。


「僕も行くー!」


と、フェネルがついて来て、二人でスイカを2つ買った。


「ルニスさんばりのパイオツですぜ!」


と、フェネルがスイカを胸につけたが、それには呆れて「やめろ…」と一言。


店主に言って木刀も買い、それらを持って皆を探した。


「こっちこっち!こっちですよ先生~!」


それはルニスの声だった。

更衣室から少し移動して、浜辺の一画に全員立っている。

背後にサーファーの若者達が居て、女性陣の尻を見ていたようだが、こちらからの視線に気付いた後は、顔を背けて海へと漕ぎ出した。


「(気持ちは分かる。レベルは高いしな…)」


そこは責めず、むしろ同意して、私はフェネルとその場に向かう。


「二つも買ってきたんですか?」


と言う、シーナに一先ず「ええ」と返した。


そこからはもう和気あいあいな、スイカ割り大会の開始であった。


「ああーもう全然駄目じゃなぁーい!!」


と言う、エリスの明後日へのアタックに笑い、


「ちょっ!?明らかに僕狙いですよね!?ちがっ!違うってあっちあっち!!?」


と言う、ロニアのフェネルへの接近に笑う。


「あ、あれっ…だ…駄目だ…歩けないや…」


とは、回された後に倒れたルニスで、「自分のスイカを押し潰したか」と言う、ラルフの言葉に全員が引いた。


「あれっ!?外れぇ!?」


続くレーナは的をこそ外すが、叩いた勢いで砂を巻き上げ、


「良し!やった!!」


更に続いたシーナに至っては、外したが衝撃波でスイカを割った。


「こういう競技でしたっけ…?」


と、驚くフェネルには何も言えず、ただ、茫然とそれを見ていた。


「私は一体何を割れば…?」

「も、もう一個いっちゃいます?」


スタンバっていたフィーナが言って、気を利かせたクラスが聞いてくる。

私が小さく頷いた事を見て、クラスはもう一個のスイカをセットした。


「どうぞーフィーナさーん!!」


それから言って、フィーナに教える。

言われたフィーナはルニスに回され、その後に海へと歩き出した。


「セットする必要は無かったな…」

「ああ」


私が言ってラルフが返す。

フィーナはそのまま海へと進み、「えい」と言って波を叩く。


しかし、それでも諦めずに彷徨い、


「あー!?」

「だめー!!?」


砂風呂に入っていた男性の股間を「えい」と叩いてしまったのである。


「アアアアアアアアアアイ!!?」


声にならない声が上がり、砂風呂から飛び出して男性が悶える。


「割れた手ごたえはあった」


と言っているフィーナの目隠しはラルフが外し、私とクラスが男性に謝罪した。


その後の男性陣のスイカ割りでは、ラルフが露店のイカ焼きを襲ったり、フェネルがイカサマをしたりしたが、最終的にはクラスが普通に、無難にスイカを割ってくれた。


私はと言うと割るスイカが無く、罰ゲームで埋められたフェネルが代役となったが、流石に叩くのは可哀想なので、場所は分かったが(うるさいので)外してやった。


そのご褒美か何なのか、赤子におっぱいをやるロニアを目撃し、「やはり良い事はするものだな…」と、一人で満足して天を見るのだ。


「ちょっとーセンセー、たすけてくださーい…僕もスイカ食べたいんですけど~…」


その声でようやく我に返り、フェネルを砂から引き出してやる。

それから皆でスイカを食べて、浜辺で少し休む事にした。




一時間程が経っただろうか。

砂浜にも随分と人が増えて来た。


やはりは時間が早かっただけで、需要はまだまだあるという事らしい。


私は現在、木陰に入り、ラルフとフィーナと休んで居る。

レーナとシーナとエリスは泳ぎ、今は沖に居るようである。


残りの4人は赤子の為に、砂で遊園地を作っているようで、意外に凝り性なクラスのせいで、作業がいまいち捗らないようだった。


「皆、生き生きとしているな。少々無理に誘ってしまったから、楽しんで貰えるか心配だったが、どうやら杞憂であったようだ」


皆の様子を見てラルフが言った。

その左隣りに座っている、フィーナが僅かに顔を綻ばせる。


「しかし、急にどうしたんだ?やはり戦争が関係しているのか?」


それを見てから質問すると、ラルフは「ああ」とまずは言った。


「近い内にディザンは負けるだろう。そうなると次はこの国の番だ。どういう結果に終わるとしても、その傷跡は深く残る。そうなると今、この時で無ければ、楽しい思い出は作れんと思ってな。皆には付き合って貰ったという流れだが、誘ってみて良かったと思っているよ」


それには「そうか…」と言葉を返し、しばしの間を無言で過ごす。


「君は戦に参加するのか?聞けば、ア連とラーズ公国の間で、同盟が締結されたと聞いたが?」


しばらくが経ってラルフに聞かれ、両方に対して「ああ」と言う。


今度はラルフが「そうか」と言って、「死ぬなよ」とだけ付け加えて言った。


「レーナは…帰した方が良いと思うか?聞くべき事では無いかもしれんが…」


自意識過剰と言えるかもしれないが、私が戦に参加すれば、おそらくレーナも参加するだろう。

駄目だと言ってもついてくる可能性は、今までを省みて非常に高い。

そうなると決して安全とは言えないし、殺せば殺すだけレーナの手も汚れる。


父親として、それはどうなのかと思い、私は一応質問してみた。


「それは本人が決める事だな。私とフィーナはあれを産み、ただ、育てたと言うだけだ。生きる道を強制する権利は、例え、親でも持ってはいないさ」


ラルフが答え、フィーナが頷く。

偉大な親父だな、と、思うと同時に、友である事を誇りに思う。


「安心しろ、レーナは守るさ」


と言って安心させてやりたいが、実際の所は逆である為、私は何も言えなかった。


「また、こういう場が設けられると良いな」


その言葉にはすぐに「ああ」と言う。


「あれっ?」


と言う声が聞えたのはその時。


右を見ると、どこかで見た事がある、体格の良い女性が立っていた。

髪は白色。身長は私とほぼ同等である。


「あー…」


と、名前に迷っていると、向こうから「ヨハンナだよ…」と先に言ってきた。


そう、首都の大盾部隊の部隊長のヨハンナである。

その体はスウェットスーツというのか、「ぴっちり」とした黒の水着に覆われ、一体何に使うのだろうか、銀色のゴムのボールを持っていた。


「あんた達も休みかい?あのお嬢ちゃんはどうした?」


聞かれた為に成り行きを言う。


「はぁーん…そっちも大人数なんだねぇ」


と、気になる事を口にしたので、「という事はそちらも?」と言葉を返した。


「ああ、大盾部隊の部下達とね…ってそうだ。丁度良いじゃないか、良かったら試合の相手になってくれないか?」


答えた上でヨハンナが手を叩く。

こりゃ名案だわ、と、言わんばかりの顔だ。


「何のですか?」


顔を顰めてそう聞くと、ヨハンナは「バトルバレー」と言った。


「バトルバレー…?」


と、疑問する私にヨハンナは説明を始めるのであった。




バトルバレー。


それは即ち、バレーを基礎にしたドッジボールだった。


ただし、ボールを掴んではいけない。


そこはバレーのルールを適用し、トスやレシーブで攻撃を凌ぐのだ。


地面に落ちても得点は無し。

兎に角ボールで敵を倒す。

スパイクやサーブで敵を転がし、その上でボールが地面に落ちたら、ようやく得点となる訳である。


例えばボールを返したとしても、戦闘不能になればその場で得点。


吹っ飛ばされてラインの外に出てしまった場合も得点になる。


「あんた達が勝ったら夕食を奢るよ。逆に、負けても何も要求しない。ただ、相手が欲しいだけだからね?」


ヨハンナがそう言うので、私は一応皆に聞いた。

失うものが何も無いからか、意外にも皆やる気であり、結果として私達はヨハンナの挑戦を受ける事になった。


9対9のバトルであったが、最初は7人が出る事になる。


こちらのメンツは私とラルフ、それにフェネルを除いた七人で、あちらのメンツはヨハンナと、他6人の男女となった。


「じゃ僕は審判をやりまーす!」


体格上勝負にならないフェネルは審判という事になり、中央に作られたネットの横の監視台の上に「ちょきん」と収まった。


「おいおい、何か始めるらしいぞ」

「バトルバレーとかいうものらしいぜ?」


その頃には他の客達も集まり、試合場の周囲に人垣が出来る。


「サーブ権はそっちに上げるよ。さぁ、せいぜい楽しませておくれ」


ヨハンナが言ってボールを投げた。

レーナがそれを受け取って、姉のシーナに「はい」と言って渡した。


「じゃあ行きます!」


シーナがボールを「ぽーん」と上げる。


「(油断しているな…)」


と、私が思うのは、相手の選手に対してだった。

誰もが「にやにや」と笑いを浮かべ、完全にこちらをナメていたのだ。


だが、それは直後のサーブで、瞬時に消える事となる。

バキョオン!!という音と共に、変形したボールが飛んで来たからだ。

宛ら火が点かんばかりの勢いで、ネットを越えて男に飛びかかる。


「のごおおおおおぉ!?」


男はそれを顔面に受け、きりもみを巻いて後ろにすっ飛んだ。


「マジ!?」


と、すぐに顔色を変え、女性の一人がカバーしたが、すっ飛んだ男は砂浜に刺さり、両足を「ピクピク」と痙攣させていた。


「はい、バケモノガールズに一点でーす」


フェネルが冷静に言い、一点が入る。


「どういうチーム名!?」


と、レーナが吠えたが、チーム名が変更される事は無い。


「サーブ権継続デース」


フェネルの言葉でボールが戻る。

相手のチームからは微笑みが消え、全員が真剣な顔になっていた。


「行きまーす」


シーナが言って、再びサーブする。

今度のそれも猛烈なものだが、今度はヨハンナが気合で受けた。


ボールは頭上高くに上がり、一人の女性がスパイクをする。

それはルニスの胸に当たり、激しく波打たせた後に落ちた。


「なんて防御力だ…!」

「防御力って…」


相手の女性選手が驚き、言われたルニスが苦笑いする。

当然、ルニスは転がってないので、これは得点にはつながらない。


「タイム!」


その様子を見てヨハンナが手を上げる。


「選手交代だ!」


どうやら選手の交代らしい。


男女が三人下げられて、しばらくしてから代わりが現れる。

その三人は女性であったが、ヨハンナよりも体格が良い、筋骨隆々の女性達だった。


「ロナ!入ります!」

「ラナ!入ります!」

「リナ!入ります!」


殆ど同時にそう言って、三人がコートの中へと入る。


「ご苦労!」


と言ったヨハンナに対し、「ハッ!」と言って腰を落とした。


「チーム海坊主の選手交代です…」


フェネルそれには「ギロリ」と睨む。


「行きまーす!」


しかし、直後にサーブが打たれ、視線はすぐにそれに移った。


「どっせええいい!!!」


どの海坊主か不明だが、兎にも角にも誰かが受ける。

そして、それに耐えきって、ボールを万全の位置に上げた。


「おりゃあああ!!」


これまた不明の海坊主が飛び、凄まじい勢いのスパイクを打つ。


「きゃあああっ!!?」


エリスが受けて後ろに転び、


「うわ!?ちょっ!?」


飛んで来たボールを顔面に受け、連鎖する形でルニスが倒れた。


「チーム海坊主に2点でーす…サーブ権もあっちに移りまーす」


フェネルの言葉で得点が刻まれる。

得点をめくる係はあちらの誰からしい。


「すみません…ちょっと油断しました…」

「腕が折れそう…」


ルニスとエリスがそう言って、私とラルフに交代をする。


「なんとッ!?!」


直後のサーブでラルフが吹き飛び、ヤシの木に引っ掛かって戦闘不能となった。


この事により7対6となり、数の上でも苦戦を強いられる。

だが、レーナが守ってくれたので、私は何とかコートに立てていた。


「母さん行った!」


ボールを上げてシーナが言った。

言われたフィーナがボールを見上げ、コートの外にそのまま走る。


「あ…」


そして、そのまま屋台に激突し、戦闘不能となったのである。


「ごめんなさい…後はよろしく…」


頭の上に焼きそばを乗せ、右手を震わせてフィーナが言ってくる。

直後には骨組みが「ぐしゃり」と潰れ、店主と共にそこに埋もれた。


敵からの猛攻は更に続き、ロニアとクラスもやがて脱落。

こちらも反撃して数を減らしたが、例の3人とヨハンナは残っていた。


「タイム!」


レーナが言って休憩を取る。

それからシーナに近付いて、何やら「もにょもにょ」と何かを話した。


「先生」

「はい!?」


急な事に驚くが、返事をしてから二人に近寄った。


「私と姉さんのどっちかで、ボールを一旦上げますので、その後にネットの近くに上げてくれますか?」


レーナに言われ「ああ…」と言う。


「大丈夫。これなら行けますよ」


と、シーナが言うので「そうですか…」と返した。


「タイム終了で!」


レーナの言葉で試合は再開され、相手からの強烈なサーブが飛んでくる。


「ハイッ!!」


しかし、これはシーナが受け取り、予告通りに上へと上げた。


「よしきた!」


指示に従って私が動き、ボールをネットの近くに飛ばす。


「やああああっ!!」

「はああああ!!」


レーナとシーナが同時に飛んで、飛んで来たボールにダブルスパイクを放った


「ぐああああああっ!!!!」


受けた相手が顔を歪め、見る見る内に砂にめり込む。


「あああっ!!!」


気合の声でボールを弾いたが、台の上に居るフェネルに当たった。


「なんでえっ!?」


と言ってフェネルが吹き飛ぶ。

ボールを弾いた相手はと言うと、完全に砂の中に埋没していた。


「姉上!姉上ぇぇ!!?」


相手の一人が声を上げ、もう一方が砂から引き出す。

出された誰かは白目を剥いて、涎を垂らして失神していた。


「よしっ!」


レーナとシーナがハイタッチする。

それを見た私は改めて、二人の戦闘力に戦慄した。




試合自体は引き分けに終わった。

あの後もう一人を気絶させたが、そこでボールが割れてしまったのだ。


「殆どこっちの負けみたいなもんだよ…とんでもないね、あんた達は…」


ヨハンナはそう言って握手を求め、レーナとシーナはそれに応じた。


その後に全員で夕食となり、砂浜でバーベキューパーティーが行われた。


最初は皆で食べていたが、やがては少しずつ散り散りになり、夜の帳が降りた頃には、好き勝手な場所に陣取っていた。


それはヤシの木の下だったり、波打ち際の岩場だったり、或いは、少し離れた所の砂浜と街との境であったりだ。


流石に夜なので水着は着替え、殆どの者が服を着ている。

唯一、ヨハンナはそのままだったが、後でサーフィンをする為らしい。


そんな中で私とレーナは、砂浜を歩いて雑談していた。


「えー、お父さんがそんな事言ってたんですか?ほんと、先生にはカッコつけたがりますよねぇ…」


レーナが言って「あはは…」と笑う。

その内容は先程聞いた「子供の人生は子供の物論」である。


どうやらレーナは聞いた事が無いらしく、その発言をカッコつけと取り、少々呆れた様子に見えた。


「それで、レーナはどうするんだ?もし、私が戦争に行くとしたら」


良い機会だと思って聞いてみると、レーナは「えっ?」とまずは言った。


「ついて行きますよ。当たり前じゃないですか」


そして、直後にそう言って、私に「にこり」と微笑みかけるのだ。


嬉しい事だが断らなければならない。


以前の戦争の時とは違い、今回は私も戦うつもりだからだ。


となるとレーナは私の為に、多くの者を殺さねばならなくなる。


そうなる事は私も嫌だが、父であるラルフもきっと嫌がる。

それに、これは単純な事だが、自分の好きな女性には、安全な所に居て欲しいと言うのが、男の共通の思いのはずだ。


それ故に私は「いや」と言って、首を振って見せたのである。


「今回はルニスと留守番をしていてくれ。私の勝手に付き合う事は無い。ラーシャスやフェンリル、それにキーンやゴーレムなんかも居るからな。私は多分、大丈夫だ」


そう言うと、レーナは「嫌です」と言った。

微笑みはもう消えている。

私の顔を真っ直ぐに見て、「そんなのは嫌です」と更に続ける。


「お父さんが言ったように、自分の意思でついて行きたいんです。先生に付き合う訳じゃなくて、わたしがそうしたいだけなんです。もし、わたしの知らない所で、分からない理由で先生が死んだら、わたしは一体どうすれば良いんですか?後悔しながら生きるしか無いじゃないですか…?先生はいつも後悔しないように、思うように生きろって言ってますよね?だったらわたしにもその権利を下さい。ついて行く権利を、わたしにも下さい」


私の手を掴み、レーナは言った。


一体何事かと思ったのだろう、皆がこちらを見ていたので、とりあえずその手を離そうとする。


たまたま通ったラルフとフィーナも、「どうしたんだ?」という顔で後ろから見ていた。


「嫌です」


が、レーナは離れてくれず、目を見たままで頑なだった。


「そうなるともう…言う事は聞かないか…」


諦めたように呟くと、レーナは「ですね」と言って微笑んだ。


「本当に、無茶はしないでくれよ…?駄目だと思ったら引っ張って逃げてくれ。その時には黙って従うから」


やむを得ずにそう言うと、レーナは「はい」と力強く返した。


「という訳で手を離してくれるかな…?ラルフとフィーナの視線が痛いんだ…」

「あっ!?す、すみません!」


ここでようやくレーナの手が離れ、ラルフとフィーナが微笑んで去る。


「実に結構」


という声が聞こえ、「何が!」と、レーナが抗議をしていた。


「(もし、無事に戻ったら……なんて言うのは死亡フラグだが…)」


だが、もしも無事に戻れたら。


その時には自分の気持ちを伝えよう。


そう、周りには誰も居ない、静かな場所でひっそりと。


レーナの怒り顔を横から見つめ、私は密かにそう決意した。


何気にラルフがセクハラキャラに…

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