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無量

作者: ファイラ
掲載日:2026/01/29

 空を眺めていた。5月の始め。学校からの帰り道だ。僕は雲一つない空を見て、平和を感じていた。

 中一の時に彼女に振られて以来、なんだか心に穴が空いてしまったようで、僕もまだまだだなと感じている。

 こんな田舎町の中学校の前は、24℃くらいの気温で過ごしやすい。僕は公園に立ち寄ると、公園の椅子に座ってまた空を見上げた。空の前には彼女も、彼女に振られた僕も、等しく一人の人間だ。


「涼しい〜」


 僕は心地良い風の中で、愛用しているフルートをケースの上から抱いて目を瞑った。

 The Enchanted Forestという曲を頭の中で流す。フルートがカッコイイ。画面の前の皆様にも是非聴いて頂きたい曲の一つだ。

 まぁ、とにかく僕はその曲を心地良い風の中で流しながら、眠りについた。いや、眠りにつく前に急な違和感に襲われ目を開ける。


「……」


 公園で、青年と呼ばれそうな背丈の人がこちらを見ていた。いや、それだけではない。その青年の後ろは坂になっているはずなのだが、その坂から無機質な目がこちらを見ていた。ロボットのような目だった。

 こちらの視線に気付くと、青年はニコッと笑って話しかけてきた。


「こんにちは」


 爽やかな声だ。


「こ、こんにちは」


 異様なロボットらしき視線に戸惑いを隠せず、声が変な風に出た。間抜けだった。

 青年はこちらに近付いて僕の目の前まで来ると、座るね、と言って隣に座った。


「見えるんだ」

「えっ……」

「僕の後ろにいたもの、見えたんですよね」

「あー、ええ、まぁ」


 青年はなにか風でも纏っているかのような、というか仕草が軽いのか?なんと表現するべきなのだろうか。僕の横でロボットに向かって指を差した。


「あれ、ロボットなんですよ。あれが見えるんなら、操縦もできます」

「はぁ」

「あれは守り神みたいなものですから、この土地を守ってくれたらありがたいなぁって、僕は思うんです」


 なんと、突拍子も無い話。ありえない話。僕が操縦ときた。


「えっと、色々説明して欲しいんですけど」

「何から話そうかな」


 青年が額に手をあて、考える素振りを見せる。


「これから宇宙人が来るんだけど、中には手荒なやつもいてさ。これはそんな奴に一発お仕置を入れるロボットだよ」

「へ、へぇ。そうなんですか」


 果たして合っているのか分からない反応をしてしまう。目を閉じた瞬間から世界が変わったかのような、異世界に飛ばされたかのようなそんな気分だった。ところが気持ちとしてはザワつくこともなく、ただ、そのロボットが守り神らしきこと、宇宙人が来ること、そのことを頭に入れることができた。


「お名前伺っても?」


 とりあえず訳の分からない青年に名前を聞いてみる。


「無量。僕の名前は無量って言うんだ」

「無量さん。僕は光って言います」

「良い名前だね。さぁ、早速来たよ」


 青年が空を指差す。すると空の空間が歪み、その歪みから巨大なものが出てきた。見た目はナイフの形をベースに、持ち手のところに顔と思しき点が存在している。

 そのナイフ型の巨大な、ロボットだろうか、が刃をこちらに向けると、一直線に飛んできた。


「うわ!」


 意味の無い行為だと分かっているが、思わず目を閉じて両手で防御してしまう。

 少しして目を開けると、坂の下から覗いていたロボットが手を伸ばし、ナイフ型のロボットの攻撃を受けていた。ここでロボットが人型であるとわかった。細身に銀色の装甲を纏った鎧武者のような見た目であった。


「これを使って」


 青年から石を渡される。


「これはあの守り神の操縦桿みたいなものさ。これに念じて、動かす。簡単でしょ?」


 僕は言われた通り念じてみる。ロボットは立ち上がり、ナイフ型ロボットの歯をつまむ。更に山に投げ捨てるようにイメージすると、その通りに投げ捨てた。

 なんだ、この力。


「これが守り神の力、ジンバの力だよ」

「ジンバ……ですか」

「おや、向こうも話がしたいみたいだ」


 ナイフ型ロボットは体勢を立て直すと、僕らのいる公園の中心に細い光線を放った。その光線の中から人の形をした生物、というか人間か、が現れた。見た目は180cmくらいの強面の青白い肌が特徴的で、軍服らしきものを着ていた。


「辺境の星だからって、舐めたね」

「舐めてなどいない。我では通じんと判断している」


 青年が声をかけると軍服人間は答えた。そして、目をこちらに向ける。


「しかしまぁ、ジンバは既に継承されたということか」

「はい。光へ」

「なら用は済んだ。その光とやらに今後を伝えておけ」

「当然です」


 軍服人間と青年は会話を終わらせると、それぞれが元いた場所に戻っていった。軍服人間は光線を使ってナイフ型ロボットへ。青年は公園の中心へ。


「じゃあね光君。また、近いうちに会えるよ」

「え」


 何もかも分からないまま話が終わった。

 24℃くらいの涼しい風が通り抜けていった。

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