第三話 初めての依頼
この世界には、冒険者ギルドというものがある。
冒険者ギルドでは、依頼を受けたり、収集したアイテムを売ったりすることができるようだ。
異世界系のラノベと同じシステムのようで安心している。
初めてこの知識が役に立った…
レイは冒険者になるため、すでに冒険者ギルドでの登録を済ませているらしい。
もう日も落ちかけているので、取り敢えず今日は冒険に出るための準備の日にして明日出発する予定だとレイは言っていた。
冒険といえば、先程していた質問には一つ続きがあった。
「レイは冒険者になってなにかしたいこととかあるの?」
「んー、冒険者になりたいって思ったのはそんな大層な理由じゃないけどね。一番は楽しみながら冒険したいってことかな。それと、冒険の途中で困ってる人とかを助けてあげられたらいいなーって思ってる」
「そっか。いい理由だと思うよ。応援する」
「ありがとう!」
あ、なんだこれ。心から溢れ出るこの感情は…
ちょっと語彙力が足りなくて言葉に出来ないです。
しかし、レイはなんて理想的ないい子なんだろうか。
「冒険者ギルドには困っている人からの依頼もたくさん集まるから、いっぱい依頼受けていっぱい人助けしようね、アイト!」
「うん、もちろんだよ」
レイはまっすぐで心の優しい子なのだと実感した。
性格◎ 容姿◎って最強すぎる…
明日からレイと冒険に出るのかぁ。
これからの日々に心が踊っている。
遠足の前の日に眠れなくなる子供のようになってしまったのはいつぶりだろうか。
でも、これほどのワクワクは味わったこと無いかも。
明日は冒険に出るんだし、早く寝てしっかり休んでおかないといけないんだけど、目をつぶっても寝られないとは。
ほんとに小学生かよ。ほぼ大人の高校生なのにぃ⋯
でも何かの前日って寝づらいよね。
うん、そうだよね(自己暗示で落ち着かせる高等テクニック)。
しょうがない、羊でも数えるか。
羊が一匹、羊が二匹、羊が⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
この日のアイト牧場の羊の頭数は310匹だった。
苗字が佐藤なだけにね。うぅ、寒。
※寝ている藍斗は周りから画面が暗くなって見えています
おはようございます。アイトです。
寝れるか不安だったけど思ったより寝れました。
一応俺は電子機器なのでご飯は食べれる訳がないのだが、睡眠をとるという概念があってよかった。
俺は寝ることが趣味の一つだからな。
しかし、美味しいご飯が食べられないのは辛い。
さようなら、美味しいご飯…
今日は冒険に出る日です。
レイと一緒に朝食を食べたあと(俺はレイがパンを美味しそうに頬張っているのを見つめていただけ)俺達はソロニア村を出発した。
村を出るときには、レイを見送りに来る人がたくさん集まっていた。
故郷の村を離れるのは誰であれ寂しいものだが、レイは笑顔を絶やさない。
「どうしてレイは笑顔でいられるの?」
「悲しい顔してると周りのみんなも悲しい気持ちになっちゃうでしょ?みんなに笑顔でいて欲しいから、私も笑顔でいたいの」
なるほど。この回答に評価をつけさせていただくと100点満点中120点ですね。
惚れちゃう。
ソロニア村をあとにした俺たちは、隣街の冒険者ギルドに向かっている途中だ。
レイが昨日話していたように、人助けをしながら楽しく冒険することが俺達が掲げる目標である。
ちょっと失礼。
隣街に到着する前にレイがお腹をすかせてしまったようなので、これから昼ご飯の時間にしようと思う。
今日は何が良いかな⋯。
「これからご飯にしよう」
昼食にすると言った途端、隣でレイが目を輝かせ始めた。可愛いけどちょっとやりづらい⋯
「レイ。どういうのが食べたい?」
「え、美味しい料理とかわかんない」
そりゃそうだよな。住んでた世界が違うんだし。
日本食ならこの世界のものよりなんでも美味しいだろうから(偏見)、俺の好きだったものにしよう。久しぶりにラーメンとか食べたいな。
ちょっと待って、俺ってご飯食べれないんだ…
やべぇ、涙出そう。
美味しいご飯は正義だ。ご飯が食べたい!
すみません、女神様。俺、人間に戻りたいです。
悲しみに浸りながら生成したラーメンをレイは美味しそうに食べている。
可愛い女の子が美味しそうに食べる姿を見つめるというご褒美をいただけたので、この恨みは許してやることにした。
昼食を取ったあと、少し歩くと街が見えてきた。
結構賑わいのある街だな。
その街の中央には、他のものとは違った少し大きな建物があった。
これが冒険者ギルドか。
冒険者ギルドの入口の横には掲示板のようなものがあり、依頼が書かれたものがいくつか張り出されていた。
「まずは簡単な依頼から始めようよ。私、この依頼受けたい」
レイが選んだのは飼い猫の捜索願いだ。
茶色の毛並みの猫が2日前に逃げ出してしまったそうだ。
俺も猫を飼っていたけれど、居なくなったときは見つかるまですごく不安だったんだよな。
できれば一刻も早く見つけてあげたい。
「じゃあ、その依頼を受けることにしよう」
「うん。そしたら、今から探知魔法使うからちょっと静かにしててね」
探知魔法!?かっこいい!
この世界にはやっぱり魔法が存在するのか。
俺も魔法使いたいな。
炎出したり雷落としたりとかさ。だってかっこいいもん。
「あっ、いた!」
どうやら猫を見つけたのか突然レイが走り出した。俺はそれに必死でついていく。
浮いてるから疲れるって概念がないのが嬉しいところだ。
体育の授業で何キロも走らされたのは流石に地獄だったなぁ。懐かしい。
そんな事を考えているうちに、レイが猫を見つけた。
路地裏を抜けた先にその猫はいた。
レイが抱きかかえても大人しくしている。飼い猫なだけあって人馴れしているみたいだ。
「かわいいね」
「そうだね。ほんとかわいい」
やっぱ猫って可愛いよな。
俺は生粋の猫派ってわけでもないけど、どちらかといえば猫のほうが好きだ。どっち派か聞かれたら猫派に手を上げるかな。
犬派のみんな、ごめん。
あれ?よく見ると尻尾の先に何かついている。
淡く黄色い光を放つ丸い石みたいなものだ。なんだろう、これ。
考えてもわかんないし、いっか。後で検索しよっと。
その後、レイが優しく抱きかかえて、依頼人のところまで猫を連れて行った。
こうして今回の依頼は無事完了。
依頼主の人はとてもレイに感謝しているようだったよ。
それにつられてレイも嬉しくなったみたい。
明日はどんな依頼を受けようかな。
俺達は、人助けがお互いに喜びを与えることを知った。
依頼を終えたあと、俺はこの世界の動物について調べてみた。
実は、この世界に動物はいないらしい。
元をたどると、人類などの特定の種族以外のすべての生き物は魔物に分類されるというのだ。
魔物にも種類があって、人を襲ったりするエネミーと、人と交友関係を結ぶフレンズに分かれる。
今回見た猫はフレンズの一種で、名前を『ネコロン』と言うそうだ。名前まで可愛い。
尻尾についていた宝石のようなものは魔石の一種で、感情が現れるそうだ。
レイが抱いていたときの魔石の色は黄色。
黄色は、安心や幸せの感情なんだって。レイってやっぱすごいや。




