第一話 平凡な人生にさようなら
俺の名前は佐藤藍人。
ありふれたごく普通の高校生だと自負している。
苗字は一般的。むしろ有名過ぎる苗字である。別に容姿が整っているわけでもなく、モテていたという記憶は一切ない。運動・成績は共に平均的。
これから俺の日常のことを少し話させてもらうが、しっかり聞いたとしても学べることはないので別に聞き流してもらっても構わない。
しかし、俺の心が悲鳴を上げていることは察してほしいものだ。
まず平日。学校に行き、ボーっとしながら授業を受ける。
学校で先生に課題を出されることも多々あるのだが、それを嫌そうに受け取る。
嫌そうにしていても、課題はしっかり提出していく真面目スタイルな俺である。でも、当然のようにギリギリまで取り組まずに耐える。この精神力を褒めてほしいぐらいだ。
「期日の朝までに終わればいっかー」みたいなノリで軽く徹夜する。
オールはしないけどね。
退屈な学校生活を乗り切り、そして休日。
休日なら二度寝はマストで、昼まで寝ていることが多い。二度寝後は目覚めがいいのだ。
そのあとは趣味のラノベを読み漁る。異世界転生系や王道ラブコメだ。
転生して最強になったり、幼馴染と恋愛関係に発展したり...
一度は夢見たことだが、現実にそんなことあるはずもない。俺はいるかもわからない神様を妬んだ。
それでは、自分語りは終了させていただきます。
もうおわかりいだだけましたね。
俺はこのような普通の生活を送っていたのです。強いて言えば異世界や恋愛シチュエーションについての情報を履修済みなことかな。
生きるうえで役には立ちません。
俺の生活について学んでもらったので、ここで俺の超能力を発揮させていただこう。皆様の思考を完璧に読ませていただく。
「こいつ自堕落な生活送ってんなぁ」
ですよね?違ったら無視して。
実際俺もそう思ってるよ?
でも直せないんだな。これが。
俺はこの何の変哲もないありふれた日々が好きだった。
こんな日々がずっと続くと思っていた。
あの日になるまでは。
7月某日、俺は寝坊した。
この時間だと走れば学校に間に合うくらいだと思う。
朝ごはんは毎日欠かさず食べる習慣なので、急いでいるのにもかかわらず何かしら食べるものを探した。キッチンに入って一番近い場所にあった食材を手に取る。
食パンだ。
秒速で身支度をして食パンをくわえた俺は、家を飛び出した。
そのとき、あることに気がついた。
「これってラブコメ展開じゃね?」と。
遅刻しそうになった生徒が食パンをくわえて走っていると、曲り角で運命の人とぶつかり、そこから恋愛に発展していく。そんな夢物語を期待してしまった。
学校まであと少し。見えた。運命の曲り角だ。
美少女来いっ、美少女来いっ!
そこでぶつかったのは...
ただのおっさん。
「なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!俺のラブコメ展開がぁぁぁぁぁぁ!可愛い運命の女の子来いよぉ。ぐすん。彼女がっ、欲しいよぉぉぉぉぉぉ!」
大声で嘆き叫ぶ俺は、ふと現実に帰ってくる。
あ、ここ学校の前だ。
そして校門へと向かう生徒が大勢いる。なぜみんながいるかというと、俺の脚力は意外と衰えていなかったようで、学校に余裕で着くペースとなってしまったからだ。
周りの生徒からの視線が痛い。
なんかヒソヒソ話してる声がする。
もう前を向けない。
顔を上げられない。
この冷たい空気に押しつぶされてしまいそうだ。
もう無理。生きていけない。
この日、俺は社会的に死を迎えた。
死んでしまいたいほどの羞恥とその他諸々の感情により、俺の心肺機能は停止した。
あれ?なんかあったかい。あとなんだここ。その後、思考停止。
そして、思考が戻るまで5分。
普通ここは物凄い処理速度で理解するはずなのだが、その時の俺は視界も思考もすべて真っ白に。やっと夢の世界から現実に帰ってきた。
あ、俺って死んだの?死に方ダサすぎだろ。まだ恥ずかしいよ。
そして俺は今どこにいるんだ?
辺りを見回せば、一面真っ白な世界が広がっている。
そこに、神聖な雰囲気を醸し出している一つの建物がある。
あれは神殿なのだろうか。とりあえずあそこに向かってみるしかないか。
恐る恐る神殿に足を踏み入れる。
その中には小さめのテーブルとティーカップが置かれていた。
あれ?普通に人がいる。
白いカーテンのような服を着た金髪の美人の人だ。
きれいな人だなぁ。
「あら、ありがとうございます。嬉しいですねぇ」
「ふぇ?」
なんのことかさっぱりわからず、情けない声が出てしまった。うぅ、恥ずかしい。
「改めまして、こんにちは。佐藤藍斗さん」
「こ、こんにちは⋯?」
なぜ俺の名前を?
「私は何でも知っていますからね」
再び俺の思考はストップ。
やめて、脳の処理速度を超えて進まないで。
心読まれた?そして誰?どこよここ。
ほぇ?(思考放棄に至る)
5秒フリーズ。そして解除。
「あ、あなたは何者なんですか?」
「そうですね⋯。一人の女神とだけ言っておきましょうか」
め、めがみ⋯?
あれ?ただの美人なお姉さんだったのに、段々と神々しく感じてきた。
「じゃ、じゃあ、次の質問なんですけど、ここはどこですか?」
「うーん、言い表しにくいですが、ここは『天界』と呼ぶべきでしょうか」
「そうですか⋯。は?」
て、てんかい?今『てんかい』って言ったよな。
そっかそっか、数学でやった式を分配法則使って計算するやつですね。
だって俺なんかが神様たちが暮らしてるような世界に居るわけがないもんな。
でも数学のやつなわけない。だとしたら、ただの聞き間違いか?
俺って聴力検査に引っかかったこと無いはずなのに。突発性難聴とか?
いや、そんなことはほぼありえないだろう。
っていうことはまさか本当に天界なのか?
もし天界だとしたらなんで俺は天界なんかにいるんだ!?
「なぜ俺はこのような場所にいるのでしょうか?」
「あなたは命を落としましたね?それもしょうもない理由で。」
「まぁ、否定できませんね。ははっ⋯」
「あなたはまだ人生の途中です。もう前の世界での暮らしには戻れませんけれど、新しい人生を始めてみたいとは思いませんか?」
「ほんとですか!?俺、まだ生きていたいたいです!もっと遊びたいし、彼女もできたことない!可愛い彼女が欲しい!」
俺は生きたい。生きててもいいって言ってくれる人がここにいるんだ。
「女神様、新しく生まれ変わって1から人生を歩めるってことですよね?」
「簡単に言えばそうです。時間も限られていますので、最終確認をするとしましょうか。では、質問です。『あなたは生まれ変わって新しい人生を歩みたいですか?』」
「答えはもちろん、Yesです!」
「わかりました。これからのあなたの幸運を願っています」
「あ、あの。自分勝手で申し訳ないのですが、可愛い彼女とかって⋯」
「え?」
「すみません。なんでもないです」
「可愛い彼女という夢は、私ではどうにもできませんので、自分自身の力で頑張ってくださいね⋯」
「はい」
申し訳ありません。
「それでは、新しい生活を楽しんでください」
「本当にありがとうございます、女神様。貴方に頂いた人生を楽しんできます!」
「これからの生活を人生と言っていいのかよくわかりませんけどね⋯(小声)」
「さようなら!あなたのこと現世で妬んでてごめんなさい」
「妬んでた...?」
「いえ、なんでもありません」
「それなら大丈夫です。もうお別れの時間ですね。それでは藍斗さん、また会いましょう」
また会いましょう?
なんか含みがありそうな物言いだが、まぁいいか。気のせいにしておこう。
次の瞬間、俺の体は光に包まれた。
うっ、眩しい。目を開けると、そこには一人の少女がいた。
周りを見回すと、ここはどこかの部屋の中らしいことがわかった。
「私、レイ。よろしくね、私のAIさん。あなたの名前はなんていうの?」
AI?これって俺に向かって喋ってるよな?
近くにあった鏡で見ると、そこには少し大きなサイズのスマホのようなものが浮かんでいる。そこにはゆるーい顔のイラスト。
もしかして、転生先ってこれなんですか?
こうして、俺の異世界生活は幕を開けた。
こんにちは、新井じにです。転生AI第一話をお読みくださり、誠にありがとうございます。
この時代はAI(人工知能)がよく活用されてますよね。
私も日頃からAI様にはお世話になっております。
べ、別に物語作りをAIに手伝ってもらってるわけでは決してないですよ?これは本当です。もし違っていたとしたら、腹を切って詫びる覚悟は出来ておりますので。
さて、この物語の主人公は転生してこれからAIとして生活を始めていく訳ですが、どういうことなんでしょうね。だって、AIじゃないもん。人間だもん。
これからの展開に乞うご期待ですね。
私も期待しています。
新井じにさん、頑張ってください!




