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書簡二

――某月某日


拝啓


先だっては、私のたわごとに付き合い、あの稚拙な写し絵から石について調べてくれたとのこと、まことに有り難く思います。


タルタリアの地にて見つかったという■■■■(判別不能だが恐らく石の固有名詞)とされる石に似ているとの由、その博識ぶりには、今回も驚かされました。

博物の書を繙いても名に至らぬものがあるという事実は、知の広がりを思わせ、同時に少なからぬ不安も覚えさせます。


さて、その石のことですが、一つ、不思議ともつかぬ出来事がございました。

面白い話と言えば面白いのですが、自分でもどう受け取ってよいものか、いまだ定まりません。


確かに私は、あの石を納戸にしまったと記憶しております。

戸を閉め、他の品と離して置いた、その手順まで、曖昧ながら覚えております。


ところが翌朝、目を覚ましてみると、石は座敷の畳の上に転がっておりました。


無論、誰かが触れた形跡はなく、夜のうちに人が立ち入った様子もありません。

とはいえ、これは私の記憶違いでありましょう。

人の覚えほど頼りにならぬものはなく、まして私は、近ごろ夜更けまで書を読む癖もついております。


ただ――

持ち込まれた折の相談と、まったく同じ話を、同じ調子で聞いたことを思い出し、

そのときばかりは、背にわずかばかり冷たいものが走りました。


石が動いたのか。

それとも、私が見誤ったのか。

あるいは、置いたと思い込んでいた記憶そのものが、後から作られたものなのか。


確かなことは、ただ位置が異なっていたからと言って、それが動いた証拠にはならないという点です。


ところで、あなたの言うその■■■■は、果たして動くものなのでしょうか。

もし似た話があれば、冗談半分で構いませんので、お聞かせください。


草々不一


敬具

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