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地球から一番遠い教室で  作者: 草川斜辺


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20/30

顔合わせ

放課後。

浅井は学食エリアに入るとあたりを見回す。昼食の時に使ったテーブルにはすでに中山が来ている。向かいに誰か一人いる。Bチームのメンバーだろう。


「お待たせ」

「おう」

と中山。

「こいつはバスケ部の2年、柚子山(ゆずやま)

すでに来ている生徒を(あご)で示す中山。


「ども。バスケ部といっても幽霊部員だけどね」

そういうと右手で髪をかきあげる。低重力のここでは、かきあげた髪が長い時間その位置を保つ。

柚子山はナルシスト風な雰囲気と顔つきで、女子にはもてそうな感じだ。


「こいつは俺と同じクラスで、今学期地球から転校してきた浅井。中学の時にはバスケ部、高校はバレー部」

浅井は自己紹介しようとしたが、中山に先を越される。

「よろしく」

浅井も椅子に座りながら挨拶する。


「こっち!」

中山が入り口に向かって手を振る。ほかのメンバーが来たようだ。

中山の向い側に座っていた浅井は振り返り入口のほうを見る。二人こっちに向かって来る。一人はアジア系ではないな。ここの人口構成とバスケということからするとアメリカ人かなと浅井は想像する。


「Hi! Kei」

”ケイ”ってのは中山のことか。フルネームは「中山恵一郎」だったなと浅井は思い出す。


「紹介するわ。こいつは同じクラスの浅井、地球から転校してきたばかりでバスケとバレーの経験者。で、こいつは知ってるよな、2年の柚子山」

「よろしく」

と二人。

「で、こいつが永江(ながえ)でこっちがクレイグ。こいつらは俺と同じくバスケ部」

中山が浅井に二人を紹介する。


「ニール・クレイグ。よろしく」

手を出してきたので握手する浅井。

「どうも。永江透哉(ながえとうや)、幽霊部員だけどね」

こいつも幽霊部員か。まあ、現役バスケ部員は誘いにくいだろうし無理もないな、と思う浅井。


「俺も練習ほとんど出てないから半分幽霊。それはそうと、莉奈(りな)ちゃんは?」

あたりを見回すクレイグ。本條莉奈(ほんじょうりな)を探しているようだが、あいにく来ていない。


「早速だが、今後の活動方針だ」

クレイグの質問を無視して話をすすめる中山。

「え? 5人だけ?」

これは永江。

確かに。浅井も気になる。交代要員がいないのはさすがにきつい。


「毎日筋トレ。5人のチームは体力勝負だからな」

5人が前提のようだ。

「あと何人かいたほうがいいんじゃないかな」

と浅井も意見してみる。

「5人は無理だよ。予選からでしょ?」

これは永江。

中山は肩をすくめる。

「まあ探してはみるけど、5人そろったんで練習は開始する」


「学校の体育館は夕方6時半以降一般に貸し出される。で、これが抑えたスケジュールだ」

中山がタブレットをテーブルに置く。今月は毎週月曜と火曜に6時半から8時、来月以降は曜日がバラバラで週に3日か4日、8時開始の日も何日かある。


「で、市民体育館、大学の体育館の分も入れるとこれ」

平日は週に3日か4日、1時間半とれているようだ。土日はまとめて3時間とれている日が月に数回ある感じか。時間は短いが、週に4、5回っていうのはまあ悪くはない。


「平日は1時間半か」

これはクレイグ。

「まあな。大会に向けて利用するチームも多いから」

それはそうだろうなと思う浅井。

「予約取れない日は休み?」

柚子山が質問する。

「スーパーボウルでランニングとか筋トレ」

体育の授業は毎日あるけど、それだけじゃあ足りないよな。


「大会は1月だよね」

浅井は確認のために質問する。

「ああ。俺らが突破する予選ラウンドは、去年は各4チーム、6グループの計24チーム。各グループ1位6チームと、2位の内、勝ち点、得失点差で上位2チームの計8チームが本選のグループリーグ進出。予選参加チーム数は毎回違うが、だいたい24くらいだ」

「グループ1位か。なかなか厳しそうだな」

浅井はそういうと腕を組み椅子の背もたれにもたれかかる。


「ムーンバスケットボールは、その名の通りここでしかできないスポーツだ」

中山が浅井の方を見る。

「街はここしかないし、人口は9万程度。競技人口はせいぜい3000人だ。人口のわりには多いがな」

そういうと中山は肩をすくめる。

「そんなもんなんだ」

浅井はちょっと驚くが、この街でないとできない競技だしそのくらいかもしれない。


「ああ。で、正直、バスケのレベルだが、大したことはない」

周りのやつらもうなずいている。

まあ、それはいえるかもな。浅井も納得する。


「まあ、そのおかげで高校生のぼくらでもそこそこ通用する」

柚子山はそういうと肩をすくめる。


「で、さらに予選は弱小チームが多い。メンバーの入れ替わりも多いしな。元々バスケのレベルは低い大会だが、そこから更にレベルの低いのを落とすのが予選だ。地球からこの大会のために来るチームもある」

中山がタブレットから目を離すことなくこたえる。

確か、ここに住んでる人の平均滞在期間は5年くらいじゃなかったかな。凄いやつが抜けるとチーム力は落ちる。

「まあ、地球人の脚力は侮れないけどな」

永江が指摘する。


「やつらは脚力を持て余すから問題ない」

と中山。

「確かに」

クレイグ、柚子山がうなずく。

「どういうこと?」

何のことかわからない浅井が質問する。


「地球人は確かに脚力があるからジャンプ力はすごい。ただし、全力でジャンプするやつが多いんだ」

中山がこたえる。

「まあ楽しいからね。ここでないとできないし。ただ、高く飛べばいいってもんじゃないんだな」

柚子山が楽しそうに話す。

「そう。滞空時間が長いと隙ができる」

中山が説明を加える。

「なるほど」

確かに滞空している間は方向を変えることはできない。慣れてる彼らはこの隙をついたり、そもそも隙を作らない技術にたけているということか。このあたりを練習しないとな、と浅井は考える。


「どれだけの力で飛べば滞空時間がどのくらいになるとかの感覚をつかむには、慣れが必要だから」

「後、落下速度がおそいから、地球の感覚でパスすると通らない」

「そう。予選は月に来て日が浅いチームが相手になることが多いし、そいつらはとっさの判断が地球基準になる」

「それと、摩擦力の低さも地球人には結構やっかい」

「そうそう」

「なるほど、そういうことか」

まあそれは無理もないよな。体育館の床では滑りにくいバスケシューズを履いていても油断すると滑ってしまうことを浅井は思い出す。


「とはいえ、なめてるとやられる」

これはクレイグ。

「確か、何年か前には予選から参加した地球のチームがベスト8に進出してるよね」

永江が指摘する。

「ちょっと前までここに住んでたやつらが主力だったんじゃなかったかな、それ」

柚子山がコメント。

「まあそういうのは例外だ。それはそうと練習試合も2試合決まった。大会までに5試合はやるからな」

中山はそういうと集まった4人の方を見る。

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