隠れてスマホでゲームをやる 橋本拓郎の場合
今回の事例に関してはかなり特殊で、ちゃんとした魔法を用いています。ご留意ください。
「ハライカムシア・ハライシア(竜王のトルネード!)」
アッサラーム・アライクムぐらい容易くその男はいった。
ぽっ。
掌に紫色の玉が浮かぶ。一見すると某アクションゲームのク◯ボーみたいな玉に見えるがこれ結構万能だ。
「うふふふふ」
男は笑った。
男の名前は橋本拓郎。
不審者のように、全身姿を黒で包んでいた。
けれど拓郎は不審者なわけではない。フリーターである。
三蔵法師 玄奘が仏像などを求め、旅歩いたように拓郎もまたコンビニおにぎりを求め歩いていた。
ゴールデンウィーク、一番人気の場所。
それはズバリ、我が家だ。(調べたわけではないが、そう拓郎は思う)
そしていい飯食おうぜと案の定ファミレスは満席、コンビニおにぎりは拓郎の同志が買い占めていた。
そうして放浪すること、実に4店舗目。
ようやくありつけた。
「ありがてえありがてえ」
スマホを開き、拓郎は思う。
「あっ」
これ、同居している兄に取られるパターンじゃね?
兄は小説家だ。安定した収入はない。主に投稿サイトで低浮上を送る日々。つまりフリーターだ。
しかし兄は大喰らいである。
兄に取られた体験ならいくらでもある。
しかしイートインで食べると余分なお金がかかる。
道路で食べると不審者呼ばわりされる。特にこの格好だし。
どうすればいいんだ、ああ。
頭を抱える拓郎、いいことを思いつく。
買って帰った後、手に取ったのは先ほどの紫色のボール。
ここに入ると一分だけ異世界にいることが可能。
こうして拓郎は異世界でコンビニおにぎりを食べて帰ったわけ、なのだが——。
「拓郎、どこ行ってた?」
「え、いや……」
また面倒になりそうだ。拓郎はぼんやりそう思った。
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