隠れてスマホでゲームをやる 佐藤良平の場合
難易度 2.0/10
列が残り4~6人のときにやるとよい
昇〇拳ッ
波動
波…
ぴろりろりろーん
店員が、機械のように「ラッシャイマセー」という。もはや外国人の挨拶の様になってしまった。
いや、それでも外国人たちは本気で誠意を持って挨拶をしている、はずだ。
そしてこの日本人店員たちはもうロボット化したような動きを繰り返している、はずだ。
ゴールデンウィーク最終日の午前10時、コンビニには長蛇の列ができている。
佐藤良平は、スマホでブロック崩しをやっていた。
「しゃあ! クリアできたぞー!」
誰でもクリアとなるとこみあげてくるものがある。
New Gameを押そうとして、手が止まる。
佐藤は前方の列をにらむ。後5人――
ブロック崩しは1ゲームに6人ほどかかってしまう。
佐藤はアプリを某動画配信アプリに変更する。
イヤフォンに接続しASMRを聞き始める。
*
「はい、次の方、次の方ー……?」
私は店員だ。胸の谷間にある名刺に「おおおか」と印刷されてある。私の苗字だとぱっと見た時にわかりにくい。漢字にしてくれないかな。
そんなことをぼやきながら、今日も仕事をしていた、のだが。
ああ、たまにいるんだよなあ、こういう客。
今日も来たぞ。ついぼやいてしまう。
イヤフォンを耳に挟み、財布片手にスマホをいじっている。
一瞬、いやな考えが脳裏に浮かぶ。
――まて! このご時世、さすがに、そんな暴力的なことはやめたほうがいい。
慌てて自分を制御した。
だが、こいつをどうすればよいだろう?
後ろの客がそれに気づき、とんとんと背中を押すが、客は気づく素振りすら見せない。
「もういいですよ。抜かしていいですって」
というふうに私は手招きした。後ろの客もイライラしていて、よほどのお人よしでもなかったらしく、スマホを触る客の位置を横取りする形となった。
さて、スマホを触っていた客が気づいたとき、彼は列の横に追い出され、横に長蛇の列ができていた。
彼は再び並びなおすはめになるのだった。