第72話 天使族の今後と、一人の父親としての決断
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――天使族side――
すっかり怯え切って帰ってきた使者の天使たちに、私は言葉を無くした。
天使国の長たる私が、魔王の事を理解していれば防げる事ではあったのだ。
「では魔王は……獣人達を引き渡さないと……それどころか、獣人の為なら戦争を仕掛けてくると言ったのか!!」
「は、はいいい!!」
「我が……天使族を属国にすると……。ぜぜぜ、絶対回避すべきです!! 相手が悪すぎます!!」
部下が怯えるのも仕方ない。
当時最強と称えられた天使族長であったピアニシア様が魔族に戦争を仕掛け、負けたのだ。
敗北したピアニシア様は捕まり、魔王の子を産むと同時にお亡くなりになったのは天使族の間で間は有名な話で、魔王軍と天使族はその時から敵対してはならぬと、最も強い天使族の決まりとして伝わってきた。
それなのに――魔王を怒らせたのだ。
此れ以上の怒りをかえば、間違いなく英雄を引き連れ天使国に攻め入ってくるだろう。
――そうなった時、天使族の女子供を守る術は我々にはない……。
もし、戦争になったら……そう思った時に脳裏に浮かんだのは、亡き妻の面影を残すまだ年若い娘の姿だ。
もし魔族軍に敗北して捕まりでもしたら……。
「長、直ぐにご決断を!!」
「戦争の回避を!! 長!!」
「獣なんて魔族に押し付けておけばいいんですよ!!」
「「長!!!!」」
そう周囲の部下たちに泣きつかれ、脳裏にはチラチラと亡き妻と、娘の顔がちらつき。しかし獣人族は我が天使族の属国であって――。
「長……魔王キヌには」
「なんだ!」
「む……息子がいるようで」
「!?」
「敗北した場合、魔王キヌの息子に……捧げられるのは……貴方様の娘しか、」
「ならん!! 何を馬鹿な事を! 娘に死ねと言うのか!?」
「それが嫌なら是非、是非戦争の回避をお願いします!!」
「むぐぐ……」
滝のように汗を掻き、暫く目を閉じて自分が落ち着くのを待った。
待って、待って……出てきた結論は……。情けにないことに、一人の父親としての己であった……。愛しい妻の忘れ形見を、どんな顔をして「死んで来い」等と言えようか。
「魔族との、魔王との戦争は回避する……。獣人族等、所詮獣だ。獣が好きな魔王にくれてやる」
そう言えばホッとした同胞たちの姿があり、私もまた、娘を失わずに済んだという気持ちで足が震えていた。
そうだとも、最も優先せねばならぬことは、獣人達の事ではない。
魔族と戦争をしてはならぬという大昔からの決まりを、今後も守っていかねばならぬという事だ。
冷静になれ、魔族と戦っても勝ち目など最初からない。
「……我ら天使族は今後も魔族とは、魔王とは距離を置く。そして、獣人族を魔王に全て託すという書簡を持って行って貰いたい」
「はっ!」
こうして、魔法で書き上げたその書簡を先ほど魔族領に行ってきた部隊に手渡し、早速で悪いが飛び立って貰った。
何があっても、決まりは決まりなのだ。
魔族と戦えば天使族は死に絶える。
女子供など、どうなってしまうか分からない。
男たちは負けるだろうし、最悪目の前で妻が、娘が……と言う事態に陥る可能性もある。
魔族とは恐ろしいのだ。逆らってはならぬ!!
「皆のお陰で最もたる、忘れてはならぬ決まりを思い出せた。礼を言う」
「長……よう御座いました!!」
「よくよく考えてみなくとも、魔王に英雄、その二人が揃っているのに戦争を仕掛けるなど、負け戦確定でしかないではないか」
「その通りです!!」
「考えるだけでも恐ろしい……」
そう震える天使族を見渡し、私は椅子に座りホッと安堵の息を吐いた。
良かった、此れで戦争を止める事が出来た。
もう悩む必要はないのだ。
今まで通り、平和なままで――。
「しかし、【英雄召喚】したのに出てきたのが【魔王の夫】と言うのがまた……」
「魔王の夫は亡くなっていたのだな。最初骨だけが出て来た時はどうしたものかと思ったが」
「そこで【生き返りのポーション】で生き返らせたら、また老いた爺で驚きましたな」
「だが、流石魔王の夫だ。常時若返りスキルなんて持っているのだから」
「しかもとても強い。獣人族の牙城を落とすにはタケオ様がいらっしゃらないと絶対無理だったな」
「だが魔王城に行ってしまった以上、此れ以上タケオ様の事で彼是我々が言うべきではない。いつ英雄と魔王の怒りを買い、天使族が窮地に陥るか分からないのだから」
そもそも、人間族が全魔王を不意打ちで殺したりするから、人間の王国は魔王によって滅ぼされたも同然。
あそこからの復興は……何十年単位どころか、百年単位で必要になるだろう。それだけの事をしたのだから致し方ないのだが……。
もし、今の魔王ではなく前の魔王なら人間国もこうならずに済んだであろう。
魔王キヌとは、異世界人でありながら恐ろしい知識と頭脳、技能を持っている。
敵対していい存在ではない。
そして、その夫である英雄タケオも。
人間王国の二の舞を踏むなど、絶対に願い下げだ。
私は道を踏み外さなかった。
長として、父親として、守るべき道筋を外さず天使族のこの先の道を示した。
それだけで……たったそれだけの事が、何よりも大事な事なのだ。
「魔王め、そんなに獣が大事ならくれてやる」
――くれてやるから、天使族に戦争を引き起こすのだけは止めて欲しい。
それが今一番脳裏を埋めている、一番の懸念すべき問題だった。
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