第7話 初クエスト
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翌日の日暮れ前。いにしえの神殿にたどり着いた。
道中、採取に夢中になって、小麦やら、キノコやらを集めまくったのと、お腹がすいて、りんごを丸かじりしながらりんご狩り楽しんだせいで、時間がかかってしまった。
でも日が暮れる前に、なんとか辿り着けて良かった。
だって、【いにしえの神殿】と言えば聞こえはいいけれど、実態は廃墟と化したボロボロ神殿。
夜になったら、おばけがでそうな風貌だ。
その見た目から、いかにもお宝が眠っていそうだと期待してしまうけれど、実はたいしたアイテムはない。
本命は地下。
神殿の隅にある、隠し階段を使って地下に下ると、秘密の隠れ部屋がある。
この中に、これからの冒険に必須な、お助けアイテムがあるはずだ。
キィ
「うわぁ!」
古びた扉を開けると、どこか別の場所に迷い込んだんじゃないかと勘違いしてしまう程、豪華な部屋がそこにはあった。
部屋は地上と違い、驚くほど綺麗だ。埃ひとつないんじゃないかな。
赤い絨毯。
綺麗に本が並べられた書棚。
フカフカのベッド。
それらに吸い寄せれるように、部屋の中に一歩踏み入れた。
その瞬間
『だれ?』
「キャッ」
今、頭に直接話しかけるように、声が聞こえた気がする。
慌てて周囲を見渡すけれど、誰もいない。
『大丈夫かい?驚かせてごめんね。僕はシュティ。君の名前は?』
キョロキョロする私に、またあの声が語りかけてきた。優しい声色、穏やかな口調の男性だ。
そこで気がつく。そうか、そういえば、こういうシーンがゲームでもあったな。
確かこの男性は、ゲーム初心者にこれからすべきことを教える、いわばナビゲーター的な存在だったはず。
そうであれば、怪しい人ではないはずなので、素直に答えることにした。
「クラリスです」
『クラリス、いい所に来てくれた。ちょっとお願いがあるんだけど、こっちにきて、この水晶玉に触れてくれないか』
「うん」
こっちがどこかは分からないけれど、部屋に1つしかない水晶玉に振れる。
すると、ズズズと水晶玉が乗った台が動き、代わりに別の台が地下から現れた。
よく見ると、台の上には木箱が乗っているようだ。
そして、ズズズという振動が止まったとき、木箱の蓋がパカリと開き、アイテムが現れた。
ふふふ。どうやらゲーム通りの展開みたいだね。
木箱の中から、機械を取り出しながら、ほくそ笑む。
この機械、実は見た目はスマホそっくりな代物。そして、スマホ同様、様々な便利な機能がついているのだ。
『やっぱりね。水晶玉が反応したということは、君は神に遣わされた、この世界の救世主くんだね』
「そうかも」
ゲームのコマンドっぽく答えてみる。
『実は僕、昔は勇者だったんだ。でも、魔王を倒す前に、病で力尽きてしまって······。そのせいで、魔王が今もなお、この国を穢している。お願いだクラリス、僕の代わりに魔王を倒してくれないか』
「分かった」
『ありがとう。恩に着るよ。じゃあまずは、そうだな。道中で己を鍛えながら、東に生息する魔王の手下、アクアドラゴンを討伐してきてほしい。アクアドラゴンは、防御力と魔法防御力が高い魔物だ。でも大丈夫。攻撃力はそれほど高くないから、回復しながらじっくり立ち回れば、倒せない相手ではないから、君なら楽勝さ』
すると、今手にしたばかりのスマホが振動した。きっと、クエスト発生の合図だろう。
このスマホは、クエスト受注の必須アイテムで、クエストを受注したり、達成したりすると、こうやってバイブレーションで教えてくれる。
「分かった」
とりあえず了解の返事はしたけれど、このクエストは後回しになるね。アクアドラゴンは魔王が復活と同時に復活するから、まだこの世界には居ないもの。
すると、またスマホがブーブーとなった。
「ん?」
また何かクエストが発生したのかな?
と思っていたら、突然シュティが大声をあげた。
『······な〜にぃ!?アクアドラゴンはもう既に倒しただと!?ありがとう、ありがとう!さすがは、救世主君。行動が早いな!そんな君へのお礼に、これを』
シュティがそう言うと、なんと目の前に、金色の宝箱がドロップ。そして、金色の光を放ちながら、ゆっくりと蓋が開いた。
どういうこと?
恐る恐る中を覗くと、中に布があるのが見えた。手にとってみると、なんとも仕立ての良い水色のローブだった。レア度高そう。いや、じゃなくて。
「ローブ?なんで?」
『なんでって、僕のお願いを叶えてくれたお礼だよ』
「お礼って、もしかして」
慌ててスマホのメッセージを開くと、先程のと合わせて2通を受信していた。
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【クエスト∶魔王の手下を倒せ①】が発生しました。
依頼主∶勇者シュティ
内容∶アクアドラゴンを倒す
報酬∶水竜のローブ
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【クエスト∶魔王の手下を倒せ①】を達成しました。依頼主に報告しましょう。
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「え?私が倒したわけじゃないのに、貰えるんですか?」